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レンダとティティの宿  作者: 大石次郎


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主の願い

二番館に霊体で戻ってきた御先祖ロンダは中々の鬼教官だったぞ!


鍵の管理者とハーディ婆さんと礼拝堂詰めの僧侶達も全員、マリユッカ達の屋根裏部屋に集められているっ。

ここは精霊界と繋がっていて耐久性があり、マナか強いからロンダが姿を保ち易いらしいが・・


「ティティ! 全属性の基礎魔法連打は魔法使いの基礎中の基礎っ」


「僕、魔法使いでしたっけ??」


ティティは結晶化して『魔法吸収形態』になったツチタに延々初歩的な魔法を連打する特訓を受けさせられてる。


「ヌヌヌッッ、つちた、シンドイッッ」


「オラも、今日は宿泊客と、ブラウニータワーのイベントさあったど・・」


受けるツチタと、変化をサポートしてるナガもだいぶ詰められてんな~。


「ゼルアンっ、『体重10倍ベルト』装備で大工の組選抜と木造小屋の建造と解体100連発! 制限時間あと2時間ちょいだっ!」


「大工仕事か戦闘訓練、せめてどちらかにしてくれ・・目が回るよ」


早くもヨレヨレになってる組選抜と作業しながら珍しく弱音を吐くゼルアン。まぁな。10倍て。


「ミィルス、『障壁付き簡易転送門型ゴーレム』に搭乗の上、魔法障壁を維持しつつ近距離テレポート1000本っ! 転送術と、器物の使役する力っ、両方もっと高めないと深層で二番館運用何て無理だぁっ!」


「いやいや、というか吐きそうっ、むしろ吐くっ、無理!」


中空で障壁張ったままテレポートしまくり、青い顔のミィルス。


「猫! 爺さん!『体重2倍ベルト』装着で取り敢えず辺りを無限走り込み、適当に流しても身にならないぜっ?」


「はぁはぁっ、私は! 戦闘員ではないにゃっっ」


「歳なので、せめて防具を脱がせてほしいのだが・・」


何か雑に走らされてるサラ猫とお付きの爺さん騎士セバスチャン。爺さん大丈夫か?


「タツノジとヨムエルは厨房の選抜メンバーとポーション+1、マジックポーション、解毒薬、聖水のひたすら量産っ、遅い! 口に入るの魔法素材精製力を意識的に高めんだっ」


「製造訓練なら料理の修行がいいのですが・・」


「というか厨房ほっといていいのか?」


即席錬金工房(れんきんこうぼう)で猛烈に基本的なダンジョン消費アイテムを造りまくるタツノジとヨムエル達。


「ハーディは俺が冥界から連れてきた『ダンス好きのリッチ』と踊りまくって霊術を極めろっ」


「誰だよコイツはっ?! もっと他に鍛練法があるだろうにっっ、蘇生所も弟子達だけに任せてられないんだよ!」


妙に派手な扮装をしてる上級アンデッド、リッチと延々踊らされるハーディ婆さんっ。


「礼拝堂の司祭役? 神父役? の僧侶達っ、それも俺が冥界から持ってきた『死の東洋人形』の呪いの解除! とっととしないと呪い殺されるぞっ? 深層対応するようになったらお悩み相談所と軽くお祓いくらいじゃ通用しないぜ?」


「もう、死にそうです・・」


禍々しい東洋人形を浄めようとして、逆に呪われまくって伸びた髪に絡め取られてる僧侶達っ。


「マリユッカ達は『体重7倍から2倍ベルト』装備で『フェアリーアタックボール』30連戦っ! まだ20戦は残ってるぞっ。気の乗った時にしか手伝わなくても、状況の進行に付いてけないとタダの足手まといだっ。しっかりしろよ~う」


「7倍ベルトっ、ウチだけやん・・」


マリユッカと手下のピクシー達は2軍に別れてマナの球を打ち合う、妖精の球技、フェアリーアタックボールを延々やらされていた。

ピクシー達がシゴかれてる事自体、珍しい。


「レンダは『ティティと猫の分の事務仕事ノーミス完遂』、しっかりなぁ? この環境にやたら適応しているようだが、業務をしっかり把握すれば主としての『格』も上がり、その格は宿の力に反映される! 通常業務っ、大事だぜ?!」


「・・オイラだけ、普通の事してるんだぞ」


ボヤきつつ取り組むんだけど、ちょっと間違うとすぐ「違うっ! やり直しっ」と修正されるっ。膨大だしっっ。


「う~っ、大体御先祖、そんなちゃんとした人だったかぁ?? 晩年とかトラブルまみれだったはずだぞっ」


「死んでからどれだけ経ったと思ってんだ?『反省』したんだよぉ! それに、今回のダンジョン攻略はやたら進行が速いし、宿の成長も早い。俺達の時は3年掛けて深層攻略が始まった。俺が二番館に『招かれた』のも偶然なワケない、やれる事は全部やっとくぜっ。はい帳簿やり直し~!」


「あーもうっ、こういうの苦手何だぞ~っ!!」


全員シゴかれてるピクシーの屋根裏部屋に、オイラの悲鳴が虚しく響いた・・



業務に少なからず支障が出ながらも、レンダ達の特訓が実行された夜。

ロンダの霊は人気の無いファンシーな装飾の二番館の通信室の1つで、水晶通信をいくつか経由しゴゥラスと距離やベスドーアの森の環境から乱れがちな映像付きで通話を繋いでいた。


「おぉう! ゴゥラスっ。指名手配中らしいな。ひひひ」


ゴゥラスは岩のような顔で暫く沈黙したが、やがて口を開いた。


「当たり前に現世に戻ってきおって」


「当たり前でもないんだけどよぉ。ゴゥラス、まぁ国に事情ともかく今回のダンジョン、どうも様子が違うぜ? 宿も反応している」


「・・うむ。資料を遡れる限りでは初、スエリアの直系王族がダンジョン主となった。建国の不可解さからして、特別な結果が生じても不思議無い。ところでどうだ? 当代の宿の主達は」


「お前の孫は忙し過ぎて思った程、ゴーレムをダンジョンに投入できてないようだが、対応した二番館の転送効率はかなりいい。俺達の時代の二番館は、『8層』までしか行けなかったし、ダンジョン以外だとせいぜいフラ草原か、岩宿程度までだったが、アレはより深く、遠くに飛べるんじゃないかぁ?」


「・・お主の子孫達は?」


「それなりだ。『感覚型』の方は面白い『部屋』発現させそう。やたら光画撮りたがる。『理性型』の方は実務に対応してる。商工街の部屋も急速な状況変化への予防線だな。雇用が足りてない気がするが、まぁバランスはいい。仲間達もそこそこだ。タツノジはまだわかるが、悪態ついてたハーディが『また』蘇生所で働いてるのが面白い。ひひ」


「アイツは岩宿で孤独にしていたからちょうどよい。こちらは何とか片付ける。現世から消える前に会ってやろう。覚悟しておけ」


「怖っ。俺、怒られる感じ?」


「バカ者が。マリユッカは、酷にならんよう『去り方』今度こそ間違うでないぞ?」


「任せとけ! お前もしょーもない権力闘争だか何だかで死ぬなよ? ・・二番館も任せとけ。今度は守ってやんよ」


ゴゥラスは粗い映像の向こうで溜め息をつた。


「うむ。ではな、ロンダ」


「おう」


通信は切られた。


「さーてと! 安請け合いしちまったし、今の二番館の仕様、確認しとくかぁ。ドリアード、『同調』してみてくれ」


ミィルスが特訓で寝込んでしまった為に無人の二番館で、ロンダは独特な形に進化しているドリアードを呼び出し、2人で壁をすり抜けて確認作業を始めた。



その数日後、『砂漠の環境』の亡き谷のダンジョン8層の岩場で、カジオ隊は擬人化したヌイグルミ達に保護されていた。


「入って」


虎、犬、鶏、蛇、イルカのヌイグルミ達の案内でカジオ達は魔除けの障壁を越え、岩場の内部に入っていた。

そこはマナが濃く、発光現象を起こす粒子が見られた。

さらに進むと大きな空洞になっており、ヌイグルミ達隠れ家となっていた。


「凄いな・・」


昏倒したポポエルはヤッチに担がれたままだったが、カジオ達は目を見張った。ちょっとしたサロンのようでもある。


「8層は『姫様』の所以外、何にも無いから、浅層の君達の拠点から拝借してるんだ。僕ら人間の家具の方が『しっくりくる』し」


「あたし達はダンジョン内行き来自由なのさ!」


「クピドや魔族や、あとはまだ『解放』されてない兄弟達に見付かるとヤバいけどな」


「ダンジョン自体からは出られないのも憂鬱だぁ。海で泳いでみたいのにさぁ」


「ヌイグルミなのに?」


「「「あははは!!!」」」


ヌイグルミ達は笑ったが、カジオ達は困惑するばかり。


「貴方達は一体何なのですの?」


「1層から5層までの階層守護者を模してるように見えるね」


ノイレミアとアーママの問いに、ヌイグルミ達は顔を見合わせた。


「僕は虎のメディシ。彼は犬のロカイ。彼女は鶏のクック。彼は蛇のオルメーシ。彼女はイルカのヨプー」


紹介を進む程、カジオ達の警戒と戸惑いは強まっていった。


「そう、僕らは一度『打ち倒される事で呪いを解いて』迷宮の摂理の力、いや『姫様の力』を借りて甦った元階層守護者だよ」


「やっぱ、そうだよな。まんまだし・・」


予期したとはいえ衝撃を受けたカジオ達だった。



それから数週間が過ぎ、5層で失踪したカジオ隊の生還が観測所で絶望視されるようになった、雨季の最中。


5層が半ば水没し、続いて大量に増えた6層の氷とそこに巣くう魔物達の力が、冷気で衰えた7層の火炎の環境の『損失』上回り、これまでダンジョンに捧げられた全ての対価が満ち、現在の最下層、8層のダンジョン主は更なる覚醒を迎えようとしていた。


いつしか8層に築かれた闇の神殿の最奥で、朽ちたドレスを着た骨の女は女の子のヌイグルミを抱き締めながら負の炎に焼かれながら、ダンジョンと呼応し、圧倒的な負のマナを高めていた。


その様子を強壮な魔族達が見ている。


闇の神殿が鳴動し、それは8層全体に広がった。


「来るぞ! こんなにも早くっ。9層の出現だっ!! ハハハッッ」


アークデビルに出世した事態の初期から暗躍する魔族は嗤った。


闇の神殿の『底』が抜け、新たに出現する階層へ落下を始めた。


さらなる最下層、9層の出現であった。


「いいぞダンジョンマスター! これはいい『世界の傷』となるっ。我ら魔族の戦勝の足掛かりよっ! お前のささやかな、『報復の願い』も叶えるといいっ。ハハハッ」


魔族達はヌイグルミを抱く焼かれ続ける骨の女を嘲笑した。


だがその女は、その『魂の本質』を、魔族達がただの未練だと思い込む、


「・・・」


抱いたヌイグルミに封じていた。


(深く、深く・・もっと深く。誰にも悟られない程に、もっと深く・・・)


焼かれたヌイグルミの女の子は全ての痛みと穢れから離れ、魂の奥深くへと潜っていった。


その道行きは、ダンジョンの影響でか? 浮遊する迷宮の破片の中を落下するようであった。


魔族達は知らない。彼女の『真のダンジョン最下層』は、ここに顕現しようとしていた。


彼女は己が滅びる前に暮らした館の環境で平穏を取り戻そうとだが、干渉があり、全く別の場所にたどり着いた。


そこは瓦礫と青草の目立つ廃墟の広大な遺跡だった。夕陽が差していた。邪悪な気配は無かった。清い風が吹いている。


ヌイグルミの女の子は不思議と懐かしさを感じた。


「そうだね、ここはスエリアの王都だよ? 過去も、現在もね」


声に振り返ると、粗末な衣服の下に汚れた包帯を全身に巻いた人物がいた。


「・・アナタは、だあれ?」


ヌイグルミの女の子は聞いた。同時に自分は誰だったろう? とも思った。

女の子は苦痛と穢れと共に、自分も置いてきてしまっていた。


「私はスエリア・マゥナイ。最初のダンジョン主であり、最初のスエリア王でもある」


女の子は瓦礫の平原を見渡した。


「アナタは、王様になりたかったの?」


「ああ、そうだ。最後の君。途方もない事だが、私は、その願いを叶えてしまった」


スエリア・マゥナイは女の子と同じ景色を見渡し、


「私は退けたよ、全ての挑戦者達を」


夕陽に吹く風の中、硬く乾いた声で、そう呟いた。

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