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森の道、宿の跡

翌日、オイラ達は再びベスドーアの森の上空まで来ていた。


「木で隠れてるが、あそこだよ!」


自分のヒポグリフを駆るゼルアンが伝声器で伝えてくる。


オイラ達4人が居るのは森の宿の跡があるはずのこんもり小山のわりと近い辺りだ。


示された所に降下すると、


「ほぉ~」


「あ、獣人の人達も雇ってるんだ」


ドワーフ達と犬人(ワードッグ)族達が、馬車が2台通れるくらいの林道の補修工事を行っていた。

こんもり小山の方に向けて工事してる。


犬人(ワードッグ)族はこの森で1番人口多いんだよ?」


「曾祖父さんの手記や資料にもちょいちょい出てきてな」


しかし降りてみると森の木々のサイズが半端なかった。地のマナ強いかんな。


「皆っ、お疲れ! 噂の『小さい雇い主』を連れてきたぞっ?!」


工事していたドワーフとワードッグ達の注目が一斉に集まった。ドワーフ達は昨日とは違う顔ぶれ。

道の工事は単純だから大工の組ではなく、郷で動ける働き手の持ち回りらしい。


「打ち合わせ通りにっ」


耳打ちしてくるティティ。


「お、オイラ達が新しい森の宿の主! レンダとティティだっ。・・ロンダの曾孫な。あっちはゴゥラスの孫のミィルス! え~っ、その、アレだ。『ビールと柑橘ミントジュースとポテトミートパイとアップルパイをしこたま差し入れに持ってきた』! よろしくなぁっ!」


「「「うぉーーいっっ!!!」」」


よしっ、作業は普通に止まったが、取り敢えず盛り上がったっ。ドワーフやパワー系獣人のこういうとこ楽。


「ゴゥラスの孫のミィルスね」


冷や汗を拭ってると、ゴーレム付き飛行絨毯を近付けて初孫が言ってきた。便乗っ。


ボック・オーの店で作ってもらった差し入れは量が多いから、ドワーフ郷で借りた交易用の『大容量木箱』の中に詰め、それを収納ポーチに納めて持ってきてる。


結局工事は中断して夕方まで宴会する事になった。まだ午前中何だけどさ・・


「騎士団が来てから1月程度だろ? よく郷からここまで広い道を補修できたな」


オイラ達は4人は柑橘ミントジュースとパイを付き合い程度に摘まんでいた。

ヒポグリフ達には生の林檎をいくつかやって休ませてる。絨毯ゴーレムは道に置かれたまま沈黙・・


「道自体は大昔から造り込まれてるし、最低限度はワードッグ達が管理してきたんだよ。魔除けの林道は安全地帯だからさ」


なるほど、宿は無くなってもこれはこれで森のインフラだったんだな。


「夕方には支度を整えたあたしの組の連中の馬車と合流するだろうし、数日後には森の宿跡まで開通できるよ?」


「レンダ。最初の宿の補修は凄く人手がいるからワードッグの人達にもそのまま手伝ってもらわない?」


「えー? ティティ、ちっと計算してくれ」


結構な人数だぞ?


「わかったよ。最初に来るはずの、役人さんとも交渉しなきゃだけど・・」


ティティは予算資料とフェザーフット式の算盤を手に素早く計算しだした。


「レン坊、ワードッグ達は素朴な連中だが、あまり放っておくと勝手に色々行動してしまう。森の中に13も部族があるしな。今回に限らず定期的に仕事を回してコミュニケーションを取った方がいいぞ?」


「おお」


ワードッグか。フラ草原じゃ傭兵や広域農場以外じゃほぼ見なくて、関わる機会がなかった。毛皮があって身体が頑丈だからドワーフ以上に簡素な格好をしている。

ここじゃ最大多数派だ。

機会を保って調整する、ってのも覚えなきゃならないんだな・・


「わかった。やってみるぜ」


「よし、いい子だね。胡桃入りキャラメルを1つやるよ」


「いらねぇっ」


「ふふ、私、ヤーケン山羊の練乳持ってるけど、ホットミルク作ってあげよっか?」


「オイっ、初孫! 調子に乗んなよっ」


軽く絡まれたが、ティティが頭から湯気が出そうな勢いで計算し終わると、オイラ達は宴会を抜け、一足早くこんもり小山の森の宿跡に向かう事にした。



・・

・・・

・・・・ん? こら、来たな。この魂の気配、あいつ等の子孫やな。懐かしいのも1人おる。


亡き谷のダンジョンに呼応して、この『宿』がこの世に戻ってきても、次の主達が来るまでは特にする事が無いから眠りを継続してたわ。


「ふぁ~・・っ。んん!」


大あくび、からの上半身の筋を伸ばし、寝るのに邪魔やから消してた4枚の羽根を背から出す。

ウチの寝所まで森の植物何かが侵食しとる。結構酷い事になっとったわ。


取り敢えず指先をスッと引いて、姿見に掛かっとった蔓やら何やらを払って、ズレてた冠を直す。


それから姿見を操って、2体のヒポグリフと人形付きのけったいな飛行絨毯でここに向かって来とる4人の姿を映した。


「また、忙しくなりそや」


ウチは肩をコキコキ鳴らして羽根でふわっと浮き上がった。



その宿のシルエットは概ね円柱形だった。大きさから要塞みたいだったけど紛れもなく、手記何かの資料で見た森の宿だ。


ドワーフ郷の城壁と同じく強いマナの木で造られていて、この小山の強いマナを受けて建物自体がうっすら発光していた。


ただ巨木の森から侵食してきた根と蔓に覆われ、外壁や窓や屋根をあちこち破られていた。デカいキノコが生えてる所もある。


植物の精霊ドリアードが多数居て、所々に土の精霊ブラウニーも棲み付いててる。こちらを見てる小妖精ピクシー達もいた。


他にも強い魔除けの力を抜けられる邪気の無い幻獣(げんじゅう)達がこの廃棄された宿で暮らしているようだった。


「兄さん、これって」


「ああ。まずは『立ち退き、引き渡し交渉』が必要だな、こりゃ」


サクッと補修とはいかないか。というか曾祖父さんとゴゥラス爺さんは最初に宿やる時大変だったろうな。『元になる建物』はあったワケだし。

取り敢えず、一枚光画撮っとこ・・

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