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レンダとティティの宿  作者: 大石次郎


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レイドミッション2

話はいくらか前後する。


マディド達南部ルート開拓団からゾリアーデが率いた非ワードッグの開拓者達が去った頃、ダンジョン地下4層の攻略は大詰めを迎えていた。


あちこちに緑色の陰火(いんか)の燈台の設置された冷たい湿地が続く4層。

その階層守護者『オルメーシ』の間までの順路の攻略は完了済みであった。


騎士団とクピドと冒険者の混成大部隊は、レイドを実行する為に守護者の間に最も近い魔除けの野営地を即席で拡大させ、一先ず駐留している。


「・・ポポエルのヤツ、大丈夫かな?」


鋼の盾等を手入れしていたカジオはふと、クピドだけで固まってるグループの方を見た。

もう作戦直前である為、盾役隊、前衛攻撃隊、各種後衛部隊、そしてクピド隊に別れて備えていた。

カジオとヤッチは前衛攻撃隊である。


ポポエルはヘヴンチョコレートを取り上げる等して、イジメてきた他のクピドの顔面に『ニッコリ微笑んでから』正拳突きを打ち込んで撃退していた。


「最初の頃に比べれば随分落ち着いたが、『変な絡まれ方』をすればああなるな。拳の運命(さだめ)だろう・・」


相変わらず武器を持たない為、スクワットをして身体を温めているヤッチ。


「上手い事言うなよ」


「ふふん」


一方、ノイレミアとアーママは後衛の『複合魔法支援隊』に居た。名称通り、魔法により攻撃も妨害も支援も回復も一通りする部隊。

アーママは、防衛線を抜けた階層守護者の眷属や戦闘中の致死的な大きな破片の飛来等に対処する護衛役を担っていた。


「う~、寒っ。ジメジメしますし、ようやくこの階層ともおさらばですわ」


炉の設置に限度がある為、焚火を占有できずよく知らない他の冒険者と共有せざるを得ないので気まずそうなノイレミアが焚火の前でボヤいた。


「え? 階層守護者倒したら、この階の残照物探索するんじゃないの?」


アーママは他人の接近にさほど関心無い様子で棒状糧食を噛っていた。


「何で残照物限定ですのっ?」


「換金効率一番いいじゃん。つーか、結構お金貯まったし、一回森の宿に戻って豪遊しない? 観測所の食堂のクオリティ、どうかと思ってんだ、あたし」


「・・戻るのはいいですけど、残照物はやめましょうよ。私、魔法を使うから『アレ』の感覚苦手何ですの。ゾワゾワしますわっ」


「下手に使わなきゃどって事ないって~」


「・・・」


気楽なアーママに眉をひそめるノイレミアだった。



クピド達によって、4層守護者オルメーシの間の扉は開かれた。


そこは冷え冷えとした底無しの沼。完成した大規模ダンジョン特有の『試練の成立』の縛りで点在する氷の足場は維持されている。


沼の底から霜を被るようにして、泥と氷の身体を持つ、のたうつ塔のごとき大蛇の魔獣が姿が表す。その首にはプレートが提げられ魔族の言葉でその名が記されていた。


オルメーシ、古代スエリア語で『尻尾の弟』の意。


「ザァアアァァーーーッッッ!!!!」


血も凍る声でオルメーシが吠えると、沼の中から無数の眷属達が溢れ出した。


「眷属一陣を掃討っ! 前衛前進!!」


騎士団の指揮官の号令で交戦は始まった。


クピドと魔法使いや射手達の遠距離攻撃で最初の眷属達の大半が足場と共に吹き飛ばされ、即座に足場の氷が再生成される。


「氷の再生に巻き込まれるな! 救助してられんぞっ?!」


「来るっ、盾役!!」


支援魔法を後衛から掛けられた最前列の盾役隊に向け、オルメーシは残存し突撃しつつある眷属に構わず『メガフリーズブレス』を吐きだした。


猛烈な吹雪が前衛部隊を襲う。巻き込まれた眷属は氷耐性のある個体も凍えて、或いはより強い冷気のマナに取り込まれて砕け散ってゆく。


盾役達は両手で持った大盾にマナを込めた。


技量の足りない者、盾の性能が足りない者、不運にも吹雪に時折混じる樽のような大きさの氷塊の直撃を受けた者、先んじて突進してきた眷属に組み付かれ構えが崩れた者はマナ障壁を破られ、吹雪に晒された。


昏倒、凍死、酷い者は凍って砕け散っていった。


しかし『全体としては』圧倒的な氷のブレスは防がれた。


「押せぇええーーーーっっ!!!!」


やはり支援魔法を受けたカジオ達、前衛攻撃隊が盾役隊を押し退けるようにして突進してゆく、一陣程では無いが沼から眷属達が再出現する。

眷属との距離が近過ぎる為、クピドと後衛部隊の遠距離攻撃はオルメーシ本体への牽制に振られる。


前衛攻撃隊は眷属第2陣と氷上でまずカチ合う事となった。


「ヤッチ、バラけるなよっ? コンビで動くだけで生存率上がるっ!」


魚人モンスター『サハギン』を斬り捨てながら、カジオが叫ぶ。


「了解っ! うぉおおーっ!!」


ヤッチは拳に炎のマナを乗せて打ち込む『猛火拳(もうかけん)』の技で、氷属性の『ホワイトスライム』数体を粉砕しながら答えた。


後衛隊のノイレミアの班は氷の『下』を泳いで迫って来たらしい一陣の残存モンスターの襲撃を受けていた。

アーママ達護衛役が撃退に掛かる。


「うわわわっ? 階層守護者戦って、こんな規模何ですの?? こんなの『塔と戦ってるみたい』ですわっ!!」


「泣き言はいいから、ちゃんと援護しなつて! カジオとヤッチがプチっと、潰されちまう!!」


アーママは、見た目は愛らしいその名の通りのモンスター『首狩りペンギン』の凶悪な鉤爪を掻い潜って、逆にそのふっくらとした首を跳ね飛ばしながらノイレミアに檄を飛ばした。


「・・? 誰か、残照物を持って、る??」


クピド隊の中で神聖系遠距離攻撃で援護しているポポエルはカジオ隊でそこそこの頻度で回収する機会のあった残照物の気配を感じた。

種類や詳細な位置までは特定できないが、おそらく4層級のそれなりの物だ。

探知の得意なクピド達から知らされている、4層残照物の想定リストを思い浮かべようとしたが、直後にオルメーシが暴れだしたので思考を遮られた。


「サァアアァァッッ!!!」


後衛からの遠距離攻撃や妨害魔法の連打を振り切り、オルメーシは遂に沼の中から尻尾を持ち上げ、第2陣眷属を粗方片付けようとして前衛攻撃隊に打ち下ろした。


単純な攻撃で緩慢にさえ見えたが、質量がタダごとでは無い。

前衛攻撃隊が目を剥く中、ブレスのダメージから立て直した盾役隊が雪崩れ込んできて大盾を構えた。


「足場が持たんっ、『パリィ』だ! 右っ! 右っ!!」


打ち下ろされた絶望的な大きさの尻尾を一斉に『右へ』弾く盾役達。

これにオルメーシも体勢を崩したが、反動で氷の足場も大きく弾かれ、別の氷の足場に激突し、砕かれだした。


「だぁあああーーーっっっ??!!!!」


半数以上が残った眷属モンスター共々水中に落ち、大混乱となった。


水中に適応した種ばかりの眷属モンスターの即座の奇襲で致命傷を負わされる者、やや遅れて起こる足場の再氷結に巻き込まれる、生きたまま氷漬けにされる者。


カジオも再氷結に巻き込まれそうになったが、氷を蹴り盾を捨ててどうにか水中に逃れた。


そこで先で襲ってきたサハギン2体にはノイレミアから教わったライトボールの魔法の閃光で目潰しをするカジオ。

1体は喉を撫で斬りし、もう1体はやみくもに振り回す銛を泳いで回り込んで避け、側面から脇から剣を突き込んで仕止めた。


(ヤッチを探す暇は無いなっ。再氷結は収まったか? 息が持たん)


とにかく、水面に上がろうとした時、


(!)


残照物の気配を感じた。近付いている。この作戦で残照物の使用は聞いていない。むしろ禁止されていた。


困惑していると、それは引き千切れた誰かの片腕が握り締めた『歪な櫛』だった。


凄まじい負のマナ。残照物に違いなかった。吸い寄せられるように誰かの片腕に手を伸ばすと、まるで譲り渡すように櫛はカジオの手に収まった。


途端に、全身を焼く炎による激痛と憤怒と嘆きのイメージが脳裏に浮かび、カジオは溜めていた息を吐き出し、悶絶した。

だがそのイメージはより深く、やがて小雨の庭園を見詰める『座った少女』が髪を櫛で梳かれている。

その櫛は歪ではなく、古風な物だった。


『この魔法を解かなくてはならない』


直感的にカジオは思った。


意識が現実に戻り、水を飲んでいたカジオは残照物の櫛を手に慌てて水面を目指した、その時、


水中に『その全身を沈めていた』オルメーシと目が合った。こちらを見ている。


(これは、さすがにっ。だろ?!)


オルメーシは大口を開け、その巨体でこちらに突進する構えを見せた。

カジオはもはや後先を考えず、効果も知らない歪な櫛にマナを込め、その力を発動させた。櫛が砕ける。


沼の水を無視し、白く燃える髪の奔流出現してオルメーシを捕え締め上げた。


オルメーシは踠いて水面へと飛び出していった。

待ち構えていた攻略隊が一斉に追い打ちを仕掛ける。そんな中、


「・・ぶはっ」


カジオはオルメーシの起こした激流に流されながらも氷の足場の1つの縁にどうにかたどり着いて上半身を出ししがみ付いた。


見れば白い炎の髪は早々に燃え尽きたが、オルメーシは激しく損耗し、泥と氷の身体は崩れ掛けていた。

そこへ容赦の無い攻撃が続く。


「ゴホゴホッ・・いけそうだな。まぁ、残照物使用は観測所には黙っとくか。はぁはぁ、上がる、か」


消耗したカジオは縁に足を掛けて上がろうしたが、


ズッ、と衝撃が首の後ろ当たりから喉まで突き抜けた。痛みと共に首から下の感覚が消えた。


「??」


サハギンであった。銛でカジオの背後の水中から奇襲していた。さらに2体のサハギンが力を失うカジオに銛で水中から襲い掛かる。


「カジオっ!」


ヤッチが猛然と泳いで助けに向かっていたが、既にカジオの意識は無かった。



・・・ぼんやりと視界の焦点があった。何やら辛気臭い香の臭いと、加工された木の匂い、森の匂い、やや強過ぎるマナ、覗き込む、子供のような2人と、丸顔の娘、気難しそうな老婆、子供の1人の頭の上には、ピクシー?


「成功さ。ふん」


「よかったね」


「おおっ、カジオ! 死んでしまうとは情けないんだぞ?」


「灰にはなってへんかったけど、穴だらけで帰ってきたな~、じぶーん」


「観測所の処置が粗かったから、私が成形錬成したよ?」


ティティ、レンダ、マリユッカ、ミィルス、それから確か蘇生所の老婆だったとカジオは合点がいった。


「・・そりゃ、どうも」


「カジオーっ!」


「もうっ、心配しましたわっ」


「オルメーシはあの後討伐されたかんな?」


「神の加護で回収できてよかったです」


仲間達も無事な事にカジオは一先ず安心し、そして蘇生したばかりである事を差し引いても酷く疲労を感じた。

彼はここ森の宿でしばらくパーティーで休息を取る事を提案すると心に決めていた。

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