表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レンダとティティの宿  作者: 大石次郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/49

迷宮内支援建造物

『迷宮内支援建造物』ていうのがある。制圧エリアに、どーん! 建てられる仮設聖堂何かがわかり易いね。

アレが建つと広範囲に魔族やアンデッドは手出しし難くなるし、クピドや僧侶系職のパワーも上がる。

活動中のダンジョンには『復元し続ける』『成長し続ける』『階層相応の眷属が発生し続ける』『階層相応の魔族が闊歩する』という基本的な性質があるんだけど、これをほぼ無効化できるんだ。

まぁそれも『中層』までで、『深層』まで潜ると精々1~3ヶ所建てられたら成功、って感じらしい。


他には『迷宮内版の魔除けの野営地』『魔除けで固めた大型エレベーター』『行き先固定型の近距離転送門』『その他諸々の補助設備』が段階的に造られてゆく。


結果的に何十年も長く存続したダンジョン何かは浅層域が観光地化したりするケースもあったりもする。

『最終的には主の願いを叶え、魔族にも利する』大規模ダンジョンの本質的な魔法からすると危うい話何だけど・・


「ティティ、ここはもういいだろう。次に行こう」


「あ、そう? ちょっと待ってね」


僕は布面の有る折り畳み椅子の上で今居る2層の資料の束を斜め読みしてたんだけど、『それ錨でしょ?』ていうサイズの『ツルハシ』を担いだ作業用兜を被ったゼルアンに言われて、伝声器の回線を合わせて話し掛けた。


「ミィルス、ゼルアンがここは引き上げるって! 作業用ゴーレム引っ込めていいよ~」


「ほ~い」


通信が終わった側からゴーレム達は土木道具を片付け、『工事用形態』に変形していた物は人型に変形し直し、全員せっせと各所に置かれた魔法道具『収納金属箱』に中に自分から飛び込んで吸い込まれていった。

十人程こっちに来てるゼルアンの組のドワーフの大工達もゼルアンに呼び掛けられると、引き上げの準備に入る。

収納金属箱は遠くから『上半身は操縦席の中型ゴーレム』に乗ったミィルスが来て、ワンドを振るって念力を展開し『収納金属箱を収納する収納金属箱』に納め、それを警備用の中型ゴーレムが背負った。

何組かここで休憩していた(元は魔除けの野営地だから)冒険者達は一連の『ゴーレム達の撤収の手際』に度肝を抜かれてたみたいだね。


僕、ゼルアン、組の大工達、ミィルスとゴーレム達は、2層の聖堂建設予定地の内、探索上の重要度の割に整備の甘い所の基礎的な工事を請け負って来ていた。


まぁ宿の仕事ではないしゼルアンやミィルス達だけで事足りるんだけど、浅層の階層守護者が全て討たれ中層攻略が徐々に始まるタイミングで、主の1人である僕も1度状況を見ておこうというワケ何だ。

観測所にもちょっと寄って確認したい事もあったし、そろそろ工事を始める事になる森の端から観測所までのルートの現状の再確認や、新王が勝手に進めてる南ルート予定地も見ておきたかったし。それに、


『事務の仕事ばっかしで、数字ばかり見てキーキー言ってると、よくないぞ? ちっとダンジョンで冒険してこい』


と兄さんに送り出されちゃったしね。キーキーって・・

うーん。冒険、って言われてもね。今の所、視察してるだけ何だけど。


「4ヵ所契約だが、後2ヶ所、どうする?」


「うーん」


「パリカリさん達が通した正規ルートの脇くらいでいいよ。どうせいきなり端っこの開発とかしないんでしょ? 私、高地育ちだから、風が通らないとこ苦手!」


ミィルスは穴蔵活動はお気に召さないみたい。

2層は苔と石ばかりで、空気が湿っぽかったり塵が多かったりって感じだしね。


「・・正規ルートの脇でいいと思う。ただあんまり楽なのばかりだとイグエル様はともかく、観測所の文官の人達がうるさいから4ヵ所目はここの、一番奥の予定地の工事をしよう」


最後の作業地は階層守護者の間に近い、2層の最深部にする事になった。



正規ルートはあちこち通り易く整備済みで、トラップも封鎖され、一定間隔で魔除けの杭が討たれたりマナ灯が設置されてて通り易い。

サクッと3ヶ所目の予定地まで来て、休んでた冒険者やクピドの2人組に「何何?」と驚かれつつ、基礎工事をガーッと済ませ、最後に魔法式の要になっている所にイグエル様に清めてもらった『霊槍(れいそう)』をゼルアンに突き刺してもらって魔除けを強化して、一先ず作業完了。


「お疲れ、ゼルアン」


「ああ、この分だと今日中に地上に戻れそうだね」


鎖戦鎚(フレイル)なの? というくらいゴツい懐中時計で時間を確認しているゼルアン。一連の森の宿の活動で鍛えられてますます身体が仕上がり、マナも満ちて、『古代の英雄の石像』みたいになってきてるっ。


「タツノジさんのサンドウィッチを食べてから最後の予定地に行こう。休憩中にお邪魔した冒険者の人達やクピドの2人にもお裾分けしよう。ヘヴンペロペロキャンディーも持ってきてるし!」


「いいんじゃないかい?」


「ここ終わりだよね? ちょっとゴーレム整備するわ。半分くらい腕捥げそう何だっ」


3ヶ所目の工事も何事もなく済み、僕らは今日最後の4ヵ所目の聖堂予定地に向かった。



正規ルート脇とはいえ、最も深い4ヵ所目の予定地はさすがに荒れてた。


一応、魔除けの野営地を『拡大していい感じに聖堂建て易いようにしよう』と手を付けた後はあったけど、

人手も時間も物資もノウハウも足りなかったみたいで、無理矢理拡大された魔除けの陣は端の方にあちこち綻びが生じていて、2層でよく見掛けるモンスター、レビテーションロックやファニーモスビースト何かがちょこちょこ入り込んでたした。


ここで休憩する冒険者やクピドは見当たらなかった・・


「コレは一手間掛かるね」


「ゴーレム整備しといて良かったよ~」


「取り敢えず、中に入ってきちゃってるのをどうにかしよう! 僕も手伝うよ? カッパ! ユニコーン! おいでっ!」


僕は幻獣カッパとユニコーンを召喚してちょっと久し振りに臨戦態勢を取った。やるぞ~っ。


というワケで入り込んだモンスター達をコテンパンにして、このダンジョンの固有の節理でどうにも上手く全滅できないファニーモスビーストは追い払い、綻び部分は簡単に魔除けの障壁を張り直して僕らは作業に取り掛かった。

といっても僕はユニコーンに乗って皆に回復魔法掛けさせたり、カッパにあれこれ指図して作業手伝ってもらうくらい何だけどさ。


作業が7割くらい済んだので一旦休憩する事にした。タツノジさんやヨムエルさんの用意したお弁当はもう全部食べちゃったから、棒状糧食と塩豆以外にお茶だけはいいのを容れて上げようとドワーフの職人数人に手伝ってもらって準備を始めた。


「・・いい手際でございますね」


作業用兜を深く被ったままの、前髪の長いドワーフの職人がお茶の支度をしながら話し掛けてきた。こんな人、居たっけな?


「森に来てから工事多かったから。まぁ僕はあれこれ口出ししてるだけだよ」


「そんな事ぁありませんよ。『旦那様』は立派な御方でございます。労いたいですよ、ケフケフケフッ」


何かグイグイ近付いてくるな、この人。残念だけど最近本格的に稼働しだした宿の地下の蘇生所とよく似た臭い。

死臭を香で無理に打ち消したような・・


「っ? 何だ?」


異変に気付いて休んでたゼルアンが特大ツルハシを手に取り、棒状糧食を噛ってたミィルスもこちらを見た。

ここから兜を目深に被ったドワーフの動きは迅速だった。


「こちらを御覧下さいませ、この宝珠、とってもお似合いで」


兜のドワーフは僕の目の前に妖しい宝珠を差し出してきた。それは僕の脳を痺れさせ、魂を掠め盗るような・・


「ティティ!」


「ちょっとっ?」


2人がツルハシとゴーレムで阻止に入ろうとし、ユニコーンとカッパもこちら飛び付こうとする。

僕は宝珠の闇マナに覆われ、兜のドワーフはケフケフ笑いながら牙を生やし、薄れかける意識の中、


(コイツ、魔族だ)


と認識できた。次の瞬間!


轟音と共に閃光と電撃が走って宝珠を砕き、兜のドワーフも弾き飛ばした。


「ケッフゥーーッッッ??!!!」


僕の身体から光の精霊ラカと雷の精霊シュガールが浮き上がった。


「ラカ、シュガール、ありがとう」


「ち、畜生! 精霊を取り憑かせてやがったかっっ」


魔族の本性を表す兜のドワーフだった者! 魔族の兵『デーモンウォリア』だっ。


「準備も無く敵のお腹の中に入らないよ? ユニコーン! カッパ!」


ユニコーンはカッパに神聖属性を与える魔法『エンチャントホーリー』を掛け、カッパは連続拳打技『暴爆拳(ぼうばくけん)』を放った!


「カ~パパパパパっっっ!!!!!」


「ケフケフケフケフッ、けぶふぅ??!!!」


吹っ飛ばされた所をミィルスのゴーレム達の『破壊光線』で焼かれ、トドメに聖水を振り掛けたゼルアンの特大ツルハシで叩き潰され、デーモンウォリアは真っ二つにされて塵と消えだした・・


「ブ・・浅層じゃ、闇のマナが、足りない。宿の主の、片割れぇっ・・ゲッ?!」


悪魔は消滅した。


「ふぅ・・ティティ、無事かい?」


「うん。多分綻びから入ってずっと潜んでたんだね」


「すいませんっ、ついさっきまで『何も不自然に感じなくて』」


一緒にお茶の準備していた他のドワーフも惑わされていたみたい。


「改めて、ここでの作業は気を付けよう」


「ああ」


「ビックリしたぁ、私、あんな喋ったり化けたりする魔族初めて見たよ!」


僕らは戦々恐々としつつ、ラカに全体に守りを掛けてもらい、シュガールを側に僕の常に置いて、最後の作業地の仕事を終えた。


帰りの魔除けの利いた1階から地上へのエレベーターで上昇しながら思った。


来て良かった。

僕らはやっぱりただの宿屋じゃない。『敵』と、戦ってるんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ