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レンダとティティの宿  作者: 大石次郎


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カジオ隊の奮闘

森の宿が急激に忙しくなった。王都のトーナメントの下位選抜が纏めて来だしたのと、観測所や道の補修作業員の中から過労や怪我の度合いの酷い者達が静養や治療に来てるからだ!


「うへ~っ、ティティ! 病院や湯治場じゃないのにっ、治療素材と薬草風呂用の素材が足りないぞ?! 買ってくるか?」


「いや、もう早々にカツカツになってきてるから、森で集めてきてっ」


「え? 売却用のは」


「それとは別に! 素材収集係の人達に確認してね。場所が被ると良くないから」


「わかった。オイラ1人かぁ~」


「っ? いやっ、兄さんそれは危ないから! ミィルスのゴーレムとか幻獣を何体か連れてきなよ?」


「お、了解了解」


オイラは事務員が増えて手狭になってきた主の仮眠室を出たが、従業員通路の向こうから飛んできたヨムエルとすぐ出くわした。コック服が制服みたいになってんな。


「おう、ヨムエル。ミィルス見なかったかぁ? 採集用のゴーレム借りたいんだよ」


「マリユッカと道の補修作業の方に行った。『フォレストジャイアント』が作業の邪魔をしてくるから『ボコしてくる』ってさ」


「何だぁ・・じゃあナガに精霊借りよっかなぁ」


当てが外れたけど、ハーディの婆さんが夜に新人の研修をするのに付き合う約束だから、ちゃっちゃと済まそうと急ごうとしたんだが、


「レンダ。アイツらは、一層で詰まってるみたいだが」


「アイツら?」


どいつら?


「カジオ達だ。あれだけ鍛えてやったのに」


「あ~」


何だ、カジオ達か。


「まぁいいんじゃないか。どうせ毎回深層までたどり着くのは攻略組のごく一部何だろ? あんなヤツらも居て、別にいいんだぞ? 最後まで全滅しなけりゃ御の字さぁ。ヨムエルは天使だから不満だろうけどさ」


「別にそこまで関心は無いがユンシエルに昨日、水晶通信で煽られてなっ。『育成が下手』とか!」


何だそんな話かぁ。


「気にすんな、オイラはアイツらは意外といいとこ行くような気がしてるし。じゃな!」


「森胡椒とバッチの実も採ってきてくれっ、不足している! あとティティはケチ過ぎるっ、宿の食堂のクォリティの意義をわかっていない!」


「了解了解っ」


皆、色々言ってくるな~。通り過ぎ様に隠し窓になってる食堂の鏡を通路側から見ると、まだ満杯じゃないが今いるスタッフの人数に対してギリギリなくらいの客が入ってる!

オイラは、今日中にやる事を頭の中で整理しながら足早に通路を歩いてゆく。と、


「あっ」


従業員通路の低い位置に落書き発見!


『カジオ隊参上!』


『ドS宿でしたわっ』


『あたしまでブラウニータワーやらされたのホント意味わからなかった』


『俺は拳王になる!!!』


「アイツら~」


でもちょっと笑っちゃったぞ?



・・・俺達カジオ隊は廃墟と複雑な通路で構成された、亡き谷のダンジョン地下一層を全力疾走していた。

このエリアは灯りが無いからノイレミアの『ライトボール』の魔法が頼りだ。そして、

後ろからスケルトン、ゴースト、スライム、ブルーバット、歩き草、ケムシーノ(モヒカン毛のデフォルメされた芋虫みたいなヤツ!)の大群が追ってきてるっっ。


「うぉおおおーーっっ!!!」


「わっ、わたっ、私もう無理ですわっ!」


「ヤッチ、ノイレミアを確保しな」


「拳お~ううっっ、レスキューっっ!!!」


ノイレミアを担いで走るヤッチ。


「だぁっ?! 汗っっ、何でノースリーブなの?! 凄い嫌っ!!」


「オイっ、言い過ぎだぞっ?! 俺の拳が泣いているっ!」


「知りませんわっ!」


「そんなんで拳泣くのかよ・・」


「皆っ!『トラップ部屋』だ! ノイレミアっ、アーママにヒール! 頼むぞアーママ!!」


「もうっ、『ヒールレイン』!」


癒しの水を走るアーママにぶっかけるノイレミア。


「ぶっはっ? 何で今、水浸しにすんのっ? 転ぶわっ! ここはヒールライトだろっ?!」


「負担を軽く、水分も補給してあげようと・・」


「もういいわ! やるからっ」


俺達は『何度か使ってる』トラップ部屋に飛び込んだ!


部屋の『床トラップ』の作動ブロックは暗記してるっ。俺達は結果的に踊るような奇妙な格好でそれらを回避し、壁際の一点の『安全地帯』まで移動っ!


直後に雪崩れ込んできたモンスター群は床トラップをことごとく踏んで、『飛び出す槍や毒矢』『2層のモンスター部屋への落とし穴』『熱した油噴射』『混乱効果のグローブパンチトラップ』を喰らい、大損害を受けて押し留められた。


「往生しな!」


回復はしているアーママが手裏剣を正確に投げ付け、『彫像の不正解スイッチ』を押し、天井の『魔方陣トラップ』が発動し、天井から損耗したモンスター群にトドメの電撃が降り注ぎ、全滅させた。

かに見えたが、ケムシーノ達だけはいくらかやや不自然に生き残って、他のモンスターの死骸を押し退けて慌ててトラップ部屋から遁走していった。


『可愛いモンスターは中々倒しきれない』


このダンジョンの不可解なルールだった。


「・・助かった、な」


俺とアーママとヤッチの上のノイレミアは脱力した。



近場の魔除けの野営地たどり着いた。よくある楕円形の物だ。


「正規の攻略ルートじゃないから、あんまり状態よくないな。ノイレミア、ここの魔除けは大丈夫か?」


「うーん・・ちょっと補修すればいけますわ。霊木(れいぼく)の灰は、っと」


「あっ! トイレ、ヤバいかも! 管理甘いから下のスライム死んでるわっ、臭いと思った~」


「給水樽のアクアジェムも切れ掛かってるな。俺の拳が渇いてしまうぞ?」


「拳が乾くくらいで済んだらいいけどな、取り敢えずトイレの修理と樽のジェムを充填させよう。ノイレミアはそのまま魔除けの補修。俺は、衝立直すか・・」


「え? 何かあたしがトイレ直す係になってない? ちょっとさぁ~」


誰が何を担当するかで軽く揉めたが、小一時間で最低限度、滞在できる状態まで野営地を直せた。


「またハーブ茶と棒状糧食と塩豆(しおまめ)か・・」


「森の宿、毒入ってない御飯はホント美味しかったですわ・・」


「何なら毒入ってるのも美味しくはあったよね・・」


「俺の拳も懐かしがっているさ・・」


しばし炉の前で黄昏ていたが、食事を終えたらミーティングだ。

俺は今回一層で獲得したやや悪趣味な装飾の口紅を安物の収納ポーチから取り出してみせた。


「ハプニングはあったが、クエストにあった『悲鳴のルージュ』は回収できた。あとはここの近距離転送門を使って、こっからエレベーターで地上階の安全確保エリアまで直通で行こう」


「・・疲れたから『脱出の鏡(だっしゅつのかがみ)』使いません? 浅層仕様の物ですし、赤字にはなりませんわ」


「でもほとんどトントンになるじゃん? 野営地補修とかエリア情報提供ボーナスも一層じゃたかが知れてるよ? もうとっくに階層守護者も倒されてるし」


「俺の拳にはさほど必要ないが、お前達はいい加減、レンダ達にもらった装備のまま、というのもな」


「ヤッチに正論言われたよ」


「ノースリーブの人にね」


「ノイレミアっ、ノースリーブは関係無い!」


「まぁまぁ、実際一番乗りのわりに俺達早速出遅れだしてるし、ぶっちゃけ森の宿で鍛えられなかったら、観察所の訓練所預かりで暫くあそこで雑用してるレベルだったと思う。装備も整えたいが、きっちり『行って帰ってくる』実力もほしい。勿論、ヤバくなったら躊躇なくアイテムは使うけど、なるべく鍛えてこうぜ?」


地上までショートカットせずに帰ってみる事になった。

弱小パーティーなりに積み上げてゆかないとな? 次に森の宿に戻った時、ガッカリされたくはない!

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