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レンダとティティの宿  作者: 大石次郎


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20/49

再びの岩宿

雇ってすぐに来れる連中の対応と、亡き谷の荒野へ続く林道の補修工事の開始はティティとゼルアン達に任せ、オイラとミィルスはノームの岩宿へと向かっていた。

初期工事用のゴーレムは既に製造済みで、雇った人員の中に組上がったゴーレムで簡単な土木工事をやるくらいはできるヤツも何人かいた。


マリユッカもこっちに来たがったが、アイツ森から出られない縛りがあるみたいで残念がってたな・・


オイラはいつものヒポグリフのサスケではなく、宿で買った飛竜の1頭を練習を兼ねて駆っていた。

ミィルスは改良型らしい操縦ゴーレムを付けた飛行絨毯に乗ってる。


飛竜の速さと大気の障壁の維持の難度、さらに妙に気流が荒れて、近くの雲から流れてきた靄と、それに時折混ざってる『雲クラゲ』ていう氷属性のモンスターが飛来してくるから、避けるのにちょっと手こずってた。

ミィルスの方はほぼ自動操縦だから平然としてる。何か操縦ゴーレムが目から熱線出してクラゲを墜としてるし・・


「高度上げる?」


伝声器で聞いてくるミィルス。


「いや飛竜が疲れるから、それにこれくらいどって事ないぞっ?」


「ふーん。・・後はお爺ちゃんに転送門技師、紹介してもらうだけだよね?」


「おう! できれば蘇生魔法使えるヤツと、宿のフロント対応できるヤツと、それから商店と工房が今んとこドワーフばっかしで内容もちょっと片寄ってるから、その辺も紹介してほしいんだよなぁ」


「お爺ちゃん、そんな1から10まで面倒見てくれるタイプじゃないと思うけど」


「それな~、おわっとっ?!」


2回避けた先にもう2体、引っ掛け問題みたに雲クラゲがふわっと冷気を纏って漂ってきたから、慌てて回避し、興奮した飛竜の首を撫でて宥める。


「どうどうっ」


飛竜はヒポグリフより断然速いが、好戦的! 野生だと雲クラゲ何て『捕食対象』だし。


「レンダ、大丈夫?」


「うん。・・ま、向こうに着いたら何とかなるぜ?」


やがて靄空域を抜け切ると、雲の上のノームの岩宿が見えてきた。



孫と顔を合わせるワケだからちょっとは甘い顔をするかと思ったら、素っ気無いもんだった。


「フロントは暫くはお前達兄弟と、時にミィルスがやればいい」


「私も?!」


「ゴゥラスが手伝いに来てくれたりはしないのかぁ?」


「あの宿での私達の物語は終わったのだ。・・転送門技師に関しては手配済みだ。後で里長の所にゆけ、商店と工房はもう少し宿の活動が本格化すれば行ってもよい、という者はいくらかいた」


「そっかぁ。蘇生できるヤツは?」


「ちょっ、私もフロントするの?? 目的別のゴーレムの製造スケジュール、カツカツ何だけどっ?」


「引退した霊術師を1人紹介できる。助手に若い僧侶を何人か付ければ、あの環境ならばすぐ育つ。それはノームだけで固めない方がいい。蘇生施設はデリケートだ」


「ああ、まぁ・・」


「お爺ちゃん? 蘇生所(そせいじょ)も大事だけどっ」


「ミィルス、サマークラウン兄弟だけでは心許ない時もある。寝込んだりな。あの宿は『主の権限』が曖昧になると、事故が起き易い。前回の時も我々の先代の宿の主の子孫を1人、手伝いに来てもらっていたのだ」


「そうだっけ? どの人??」


「ん~、何か曾祖父さんの手記にそんなの有った気がするような、しないような?」


誰がいつ、何したか、って出入りもあるし、ゴチャゴチャしてわかり難いんだけどさ。手記自体歯抜けになってるし。


「転送門の設置優先順位は国から来た者と最低限度は擦り合わせしろ、あれは存外揉める・・宿に関してはそれくらいだ。それから、私は明日にも王都に旅立つ。もう、直接は援助できないからそのつもりでな」


ん? 爺さんが?


「王都?」


「お爺ちゃんが何しに??」


「前回は比較的穏便だったが、今回の国の対応は少々奇妙な所がある。昔の仲間と協力して、暫く調べてみる。詳しくはまた知らせよう」


確かに、別動隊が南ルートで突貫とかおかしな事にはなってたが・・


「無理はしないでね」


「目ぇ付けられないようにな」


「わかっている。レンダ」


爺さんはノームの帽子を取ってオイラに向き直った。


「ミィルスや森の仲間達をよろしく頼む」


「お爺ちゃん・・」


「おう、任せとけ!」


根拠は無いが、いける気がする!


その後、里長や宿に来る予定の連中やミィルスの両親や友達と顔合わせたり、ミィルスの親に岩魚とキノコとチーズのパイを御馳走になったり、ミィルスの私物を持ってきたり、買い物も少しして、

オイラ達とゴーレムの付いてない飛行絨毯に乗った転送門技師3人は、ミィルスの両親と友達達に見送られてベスドーアの森へと飛び立った。


ゴゥラスの爺さんは今回も見送りに来ないかと思ったけど、岩宿の発着場の近くの崖の見晴らし台の所に来てた。使役しているらしい独特の形に進化した火の精霊サラマンダーを従えてる。


かっちょいいな、光画撮っとこ。パシャ!


「お爺ちゃーんっ! 行ってきまーーすっ!!」


爺さんはただ見てるだけだったけど、ミィルスは見えなくなるまで手を振っていた。



森の宿に戻るとさっそく転送技師に宿の地下にある転送門制御器を見てもらい、ティティ達に報告したり進捗を聞いたりしてから、もうナガとツチタが付いて見てるトーテムの様子を確認し、

猫管理監のサラ・ドラゴリリーや自称クピド筆頭のヨムエルとも協議し、最初に転送門を繋げるのは、


『亡き谷の観測所』と『緑の門の野営地』に決まった。


緑の門の野営地はフラ草原に近いベスドーアの森の東端にある大きな野営地跡。ハーフエルフ郷の手前の拠点で、現在治安悪化中らしい・・


「ほな、門を通す魔法陣展開すんで~?」


「トーテムからのマナ供給は万全だどっ」


「ばっちりダヨ!」


「緑の門の運営に関するクレームが凄い事になってるにゃっ! 要改善っっ」


「観測所にっ、イグエル様の元に物資をっ!」


「大丈夫なのかいコレは?」


「終わった後、『マジックポーション粥』を用意してありますっ」


「え? 転送門の開通ってこんな感じだっけ?」


オイラとティティはあれこれ対価素材を置いた転送門の起動させる方式が描かれた地下室の床に座って構えている。

転送門技師達はマナが供給され、マリユッカが同調しだした制御器を見ていた。


「よし来いっ!」


「・・何でちょっと『人柱(ひとばしら)感』あるんだろね??」


「ほな、行くで~・・テレポルテレポル、ルーララ、バダーン・デ、イシノナカ、マジカンベン、う~っ、行ってまぇーーーっっっ!!!!」


魔法陣展開っ!! 荒ぶる制御器っ!! 陣に組み込まれたオイラ達にもマナがぶっ込まれるっ!!!


「あばばばばばっっっ??!!!!」


「うううっっ、絶対もっと合理的なやり方あると思うぅぅーーーっっ??!!!」


オイラ達、サマークラウン兄弟は昏倒したが、無事、記念すべき最初の、2ヶ所の転送門は開通した。


やりきったぜ・・

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