エルフィンフルート
上空からハーフエルフ郷を見てみると思ったより広かった。郷ってレベルじゃない。
「結構発達してるじゃん?」
ここは竪穴式じゃないけど、簡素な家を魔法や魔法素材で強化した物が並び郷内に木や草花を多く植えていた。
「元々、フラ草原側から森の珍しい素材やドワーフの造った製品を買う窓口はここしかないからね。僕も森の宿がなかったらここで一度は商売をしてみたかったんだ」
「お、ティティにしては珍しく野心的!」
「ふふん。野心というか、サマークラウンの家の者だからね。ベスドーアの森には来てみたかったんだ」
「へぇ、オイラは『海見てぇなぁ』くらいしか考えてなかったぞ?」
「?? 何で? 脈絡無いよね?」
「そうかぁ? 草原暮らしだと草ばっかし飽きたんだぜ?」
「ああ、そういう事」
「海はウチも見たいで?」
「「へぇ~?」」
話しながら、ライトボールの魔法で誘導されてオイラ達は郷の中々整った広い発着場へと降下していった。
降りてみると、結構人で混み合ってる! しかもハーフエルフより断然他の種族が多い。構成もバラバラ。ロングフットにフェザーフット、明らかに森の外から来たドワーフ達。岩宿のような伝統装束は着てない旅装のノーム。ワードックに関しては森の住人らしいが、それ以外にも様々な獣人や爬虫類系種族も居た。
「森の宿どころかワードックの北部郷すら無許可じゃ行けないはずだが、どさくさで儲けようってのがもう集まってるのかね?」
森の民のゼルアンも戸惑ってた。
「ちょっと視線が痛いのでフード被っときますね?」
タツノジはコソコソしだした。荒っぽそうなのも多い気配だ。そりゃな。
「これ、最初に里長の所に行った方が良くない?」
傭兵風の下品なのに口笛吹かれたりしたから、工具を手に持って臨戦モードのミィルス。
「そうだな。連絡は昨日もしたけど、ここはいきなりバラけずまず里長のとこに行こう!」
オイラ達はまず里長のとこに行く事にした。すると・・
「私ども参ってるのです、新しいスエリアの国王は少々乱暴な所があるようで、騎士団や森の宿や谷の観測所を利用する権限のある、教会に選ばれた冒険者だけでなく、『私兵』や私兵に雇われた素性の知れない者達までダンジョンに向かわせる気のようで」
案外若い(見た目は!)ハーフエルフの里長。
「何だそりゃ?」
「あ~、あかんパターンやな。余計、相手の『手駒』のアンデッドが増えてまうわ~。魔族悦ぶし・・」
「森を宿を介した道以外はないのでは?」
「実は『旧道』という、3代程前の亡き谷のダンジョン主を軍事力のゴリ押しで倒そうとした時代の痕跡が森の南東にあるんです」
「元々、谷のダンジョンの攻略で恩恵を受け難い南部のワードック達を買収して今、突貫工事をしているようです。旧道の状態は良くありませんが、人海戦術ですぐに谷まで通ってしまいそうで、お陰ですっかりここはならず者とそれを目当てにしたり、便乗した人々で溢れてしまって」
「谷までの荒野やダンジョンに着くまでの谷自体、昼間でもヤバいモンスターの巣窟だぜ?」
「まぁ人海戦術なので」
「・・・」
「兄さん、僕らも完璧じゃなくても開業を急ごう。正規のこちらがしっかり進行すれば無駄な事は控えるようになるよ。コストも倍々に掛かるだろうし」
「・・だな。今の王様が妙に焦ってるっぽい? のはちょっと気になるけど」
オイラ達は手短に必要な人材の話を改めて確認した。
「フロントと転送門と蘇生担当以外は紹介できます」
「幻獣の飼育担当と司祭も?」
「飼育程度なら元々我々ハーフエルフは下位の幻獣を飼い慣らしているので。司祭も蘇生術に拘らなければ、この状況なので旅の僧侶の内、信用度の高い者の調べをついています」
「マジで? よっしゃっ!」
「やったねっ、兄さん!」
フロントはまぁ当面オイラとティティで何とかなる。転送門はちとマズいけど、蘇生術が本格的に必要になるのはもう少し先だろう。コスト高だか、基本的な蘇生アイテムも『造れる』し。
「ですが」
里長は旧に微妙な、ちょっと卑屈なような探るような顔をしてきた。ん?
「1つ、頼み事を聞いて頂けないでしょうか?」
ん~~、そうきたか。
──────
そういうワケでオイラ達はハーフエルフ郷の近くの『風鳴りの祠』の前に来ていた。
「『郷の空気が荒んで繊細なハーフエルフ達がストレスで不調を訴えてるから、それを慰める為に、祠から伝説の凄い楽器を取ってきてくれ』つー事で来たが・・」
「ハーエルフも長命だから、凄腕だったお爺ちゃんとロンダのイメージでそのまま言ってるんじゃない? この風鳴りの祠はダンジョンって程でもないみたいだし、人を雇うか、2日くらいあれば私が探索用のゴーレム量産してもいいけど?」
「僕は足手まといな気が・・」
2秒思案したが、
「よしっ、『オイラ達も凄腕』と認知させる! 行くぞっ、森の宿隊進撃だぁっ!」
「よっしゃあ!」
「こういうとこ、久し振りです」
「必要な魔法楽器なら郷でしっかり管理しておけばいいのにね」
「・・ちょっと、あの、皆、躊躇無さ過ぎじゃないかな? ここ、魔除けが壊れてモンスターだらけだよ、絶対っ?!」
オイラ達は、ハーエルフの秘宝『エルフィンフルート』を求め、遺跡みたいになってる祠へと入っていった。
そして、
「うははっ、喰らえ『速駆けからのファイアジェム爆弾』っ!」
オイラは高速で駆け回りながら街で買ったらメチャ高いけど、この森だと素材がすぐ拾える爆薬を祠に棲み着いたモンスター達に投げまくった!
「マナアローやっ!」
数十の魔力の矢を放つマリユッカ!
「よいしょ」
両手に持った『ミスリルハンマー』で軽々叩き潰してゆくゼルアン。さすがハーエルフ郷のゴロツキ達がスッと目を逸らして足早に立ち去る筋肉!
「はいは~い!」
大魚を切る為の長い包丁でスパスパとモンスターを捌いてゆくタツノジ! さすがよくわらん進化を遂げた元上級アンデッド! いや今もアンデッドか??
「よし、1号はティティ援護! 2号と3号は『ロケットパンチ』!」
3体調整が間に合ったゴーレムを操りモンスター群を粉砕しつつ、ティティも守らせるミィルス!
「ヒールライト、いつでもイケるよ? 僕、ヒールライト、スタンバイ済み!」
回復魔法を使う構えだが、皆快調過ぎて、中々使う隙が無いティティ。ドンマイ!
1番奥にいた『巨大化ロックスパイダー』も全員で速攻でフルボッコし、戦闘後にティティにヒールしてもらいリフレッシュし、オイラ達は祠の最深部の宝箱に封じられていたエルフィンフルートを回収した。
「身も蓋も無いって感じだったが、依頼のお宝、ゲットだぜ!」
うむ、いい仕事した。
──────
ハーフエルフの郷に戻ると、早速郷の講堂にハーフエルフ達が集まり、楽士達によって演奏が始まった。
エルフィンフルートの力で魔法のそよ風が吹く中、涼やかな音色が響き渡り、聴覚が敏感なハーフエルフ達はうっとりとしていた。
「ありがとうございました。あのフルートは所有権をめぐって郷内で争いがあって、外部の方に任すしかなかったのです」
「まぁ、いいってことよ。久し振りに動き回れたし、修行になったし」
「この音色、ロンダとゴゥラスにも聴かせてあげたかったですね・・」
「そうだな・・」
里長と2人で遠い目・・
「いやお爺ちゃんまだ生きてるからっ!」
ミィルスがツッコミを入れつつ、取り敢えず、予定していた3ヵ所の郷巡りのスカウト行脚は無事終わった。
残りの開業準備は転送門だけだぞっ?




