スカウト開始
出たり入ったりバタバタしてて、今日もこれから足りない人材のスカウトに行くんだが、ちょっと出る前に猫と爺さんが担当になった温室を見に行くことにした。
ティティは巻き毛が配属された厨房に様子見に行った。
森の宿の2階に発生した温室は曾祖父さん達の時は3階にあったらしい。
2階の約4割はミーティングフロアで隊用の小部屋や団用の大部屋、キッチン付きのグループルームになってる。
残り6割中約2割はまだ無人だが喫茶付きのサロン。で、最後の約4割が温室だ。
4割温室と言っても、ガラスで覆われてるのは4割中1割程度で、後は屋内で解放されてる。大中小に長い短い普通くらいの鉢植え群で複雑に構成されてて、植物園風。よくわからん鉢植えも少なくない。
マリユッカ曰く「前回は冒険者同士がよお揉めやって、特にクラン同士の対立で何度か全体が自滅しかけたんや」との事で、
今回公園的な物が2階に配置されたのは『宿が配慮した』という説が有力だった・・
「どうだよ? 収穫できそうかぁ?」
オイラは温室で作業してるここの専任になった大人しそうなワードックとドワーフ数名に聞いてみた。
「オーナー。荒れ放題だったけど、成長が早くて、この人数じゃ大変だ」
「ピクシー達の指導が気紛れなのよ」
そこらを飛び回ってるピクシー達は作物の世話をしたりしなかったりといった感じ。
「まぁなぁ。猫と爺さんは?」
「温室」
温室、ガラス張りの方か。今、作業してる所は何て呼んでんだろな? ま、とにかくガラス張りの方の温室に向かった。
ムッと、暑いが、中では南国な感じの有益な魔法植物がガンガン育ってた。
「人手増やさないとパンクすんな・・」
若干引いて見回し歩いていると、
「にゃーっ??!!!」
猫管理監の絶叫っ!
「ドラゴリリー卿ぉっっ!!」
これは爺さん騎士。
「んだよ??」
駆け寄ってみると、南瓜型の食用魔法植物。『南方種ファームパンプキンヘッド』に猫管理監が上半身を噛られてた。爺さん騎士が必死でファームパンプキンヘッドの『口』を抉じ開けようとしてる。
「・・はぁ」
オイラは収納ポーチから粉レッドペッパーの瓶を取り出して、カボチャの口にたっぷり振り掛けた。
「ばふぅーっ??!!」
「ニャースっっ?!!」
「ドラゴリリー卿ーっ?!」
吐き出されるが、レッドペッパーでむせまくる猫管理監。
「何やってんだよ? ファームパンプキンヘッドは『口側』から寄るな、って言ったろ?」
「にゃほっ、にゃほっ、違う! 側面から行ったらこっちを向いてきたにゃっ!!」
「ああ、『可動域が200度』くらいあるかんな」
「先に言うにゃーーーっっ!!!」
「いや、オイラもピクシーとか詳しいヤツらの受け売りだし・・」
これは一刻も早く専門家が必要だな!
ま、そんなこんなで? スカウトに出発だ。
オイラ、ティティ、ミィルス、ゼルアン、タツノジ、マリユッカでヒポグリフと飛行絨毯に乗り込む。
「ヨムエルさん、後は仕上げるだけ何で、食堂の昼御飯と夕飯。頼みましたよぉ?」
「フッ、問題無い。クピド筆頭たるこの」
「じゃ~な~っ!」
見送りに出てきてた、巻き毛とピクシー達と何人か手の空いてる連中にオイラ達は合図して上昇を始めた。
「それじゃ」
「腕利きを引っ張ってくるよ!」
「色々仕入れもしてくるからねっ」
「シャバの様子を見てくるでー」
まずは道が繋がったばかりのドワーフ郷だ!
で、しばらく飛んでいるんだが、
「久し振りやわ~、ホンマ~、この世でこんだけの高度で飛ぶんも久し振りやわ~、ホンマ~」
マリユッカが壊れたドワーフ式蓄音機みたいになってる・・
小さ過ぎるから伝声器は付けてないが、羽根を消して小さい安全帯をオイラのベルトに掛けて座っていた。
「マリユッカ。この世とか、あの世てよく言うけど消えてる間の宿は冥府に有るのか?」
「ちゃうちゃう、『精霊界』や~。まぁ言うても幻獣や精霊やウチら妖精は普通、死んだら1回精霊界に還るから、冥府言うたら冥府やけど」
「へぇ」
そんな感じ何だ。
「精霊界ってどんなとこなのかな?」
スカウトリストを見てたティティも興味あるらしい。
「何や~、ふぁ~っとメルヘンな感じやな~、タツノジみたいに意志がハッキリしてへんと色々ボヤけるし、うっかりすると宿と関係無しにこの世に転生してまうからな~」
「「ほぉ~・・」」
わかったようなわからんようなとこだ。
程無く、大して経ってないはずだがもう懐かしい感じのドワーフ郷に着き、4班に分かれてスカウトを始める事にした。
「この後、ワードックの北部郷とハーフエルフの郷にも順に行くから、そんな無理くり口説かなくていいかんな? ・・じゃ、一旦解散っ!」
オイラはマリユッカと組んだ。『トーテム管理者』『幻獣飼育係』『獣舎係』『魔法素材扱えそうなヤツ』を探す担当だ。
出掛けに温室に寄ったけど、そっちはゼルアンが当てが有るとか。
スカウトを始めて、獣舎係2名と魔法素材を扱えそうなヤツ3名はわりとすぐ見付かったが、トーテム管理者と幻獣飼育係は特殊過ぎて苦戦っ!
時間を食ったのとマリユッカが飽きてきた事もあって、方針を変えて『幻獣か精霊と関わりのある者』を探す事にした。
結果、郷の外れで暮らす林業の組で働く『ナガ』というドワーフの男が、土の精霊ブラウニーを連れてるらしい!
オイラ達は早速、樵のナガの家に向かった。
ドワーフ郷の中でも童話に出てきそうな特に古風な土壁の小屋の前で、そんなに? というくらい眉毛の濃い若いドワーフが、ちょっと人っぽい格好をした土器の仮面を付けた人形の姿のブラウニーと薪割りをしていた。
「レンダ、訓練してない素の精霊憑きやで? レア~」
「茶化すなよ? ・・こんちは~。森の宿の者何だが!」
オイラが初手からセールストークに入ろうとしたら、
「あら~、こげなとこに郷で噂のまっこと有名人が来たば、オラ、おったまげ~っ!!」
「オッタマゲ~」
訛り強めのたぶんナガと、自我強そうなブラウニー! これは、濃いぞ・・




