工事と役人
ドワーフ郷から森の宿まで道が通った。
最短かどうかはともかく、フラ草原から森の入り口近いハーフエルフの郷まで、ハーフエルフの郷からワードッグの北部郷、ワードッグの北部郷からドワーフ郷、ドワーフ郷から森の宿と、道が繋がる。
国の統治が有効で冒険者達が普段活動しているのは概ねフラ草原までだが、これで飛行獣やテレポート系の魔法に頼らず連中が宿まで来れるようになった。
まぁまだ亡き谷までの道は開通してないし、王都でダンジョンに挑む冒険者の選考が行われてる最中みたいだけど・・
そうして、
「大工の組はゼルアンと崩落対策と穴の補修! 他のドワーフは無理せず郷に一旦帰ってくれ。またよろしくなぁ。ワードッグで宿の掃除やってもいいってのはマリユッカのピクシー達の指示に従ってくれ。ドワーフもワードッグも帰るなら土産と魔除けの聖水を受け取ってくれよっ?」
「支払いや他の雑務バイトの申し込み何かの確認は僕の所まで!」
「ミィルスは魔法工学製品の修理の、優先は、え~と」
「エレベーターねっ」
「そう! それよろしくぅっ」
「お土産とランチは期待して下さいね~」
「掃除の手配は手下に任しとるからウチには聞かんときや~」
約一名サボる宣言しつつ、森の宿の本格補修工事は始まった!!
3日後。
掃除、崩落対策、穴塞ぎ、水回り、照明関連、宿舎スペースの補修、やたら華美なマリユッカを初めとしたピクシー族の館内スペースの調整! 正規の獣舎の確保、各魔法工学製品の修理、当面の食材と水の確保、諸素材類の備蓄、契約した幻獣と精霊の細かいリストの作成、外に作った野営地の整理、作業後も宿に残る従業員の確保・・等々が最低限度は済んだ!
お疲れ宴会後、大工以外は大半それぞれの郷に帰ってゆき、道の補修から働き通しのゼルアンの組の大工達も一先ず宿舎スペースで休んでもらった。
「はぁい、そこお願いしますね~」
タツノジの采配で、雑用で雇った10名程のドワーフとワードッグ達が宴会を片付けをし、マリユッカ以外のピクシー達が引き続き飲み会を続ける中、オイラ達は今後の打ち合わせを始めた。
「補修としては細かい所はキリがないが、やはり大浴場と屋根と基礎かな? まぁ全体を直したから宿の変化がまた発生するかもしれない、様子を見ながらになるね」
「大浴場の給湯回りと蒸し風呂は大丈夫だと思うけど、薬湯何かのハーブが足りないかも? あとデータが取れたから、未開通の亡き谷への道の補修は私のゴーレム主体でも大丈夫だよ!」
「助かるけどよ、ドワーフはともかく、ワードッグに仕事を作りたいからあんま量産し過ぎないでくれよ?」
「りょうかーい」
「風呂のハーブくらいやったら手下達に集めさすわ。それより他の作業で忙しなる前にドリアードばっかしになっとる精霊のトーテムを他のも増やしてバランス取った方がええで? 森の宿のパワーも上がるし、パワーないとまず『転送門』の設置に手間取るしな」
「そっちは兄さんに任そっかな? 僕は色々お金の調整をしたいし、明日にはもう国の役人が来ちゃうし、『亡き谷の観測所』にも明後日行くんだよね? 準備しないと!」
「おう。でも役人も宿が幻獣のウンチまみれの時から来て手伝えってんだよな。金出してるからってさ!」
「ウンチ片したのは私と私のゴーレムだけど?」
「うっ・・」
ミィルスの圧が強ぇっ。
「とにかく! 一休みしたら、明日の役人が来てごちゃごちゃ言われないよう、今日中にできる事をやっとこうぜ?」
オイラ達は取り敢えずの方針は固めた。
翌日、小型の乗用飛竜を駆る全員背の高いロングフット族の王都騎士団数名に連れられ、猫系獣人のハーフらしい国の役人『西部辺境特別管理監サラ・ドラゴリリー』がやってきた。
でもって、
「オェエエ~~~っっっ!!!!」
宿の敷地に降りて速攻で『飛竜酔い』で吐いて、這いつくばった。
「管理監殿っ?! ですから、途中の郷を経由しましょうとあれ程・・」
心配する騎士。さては飛竜の『高速飛行』に物を言わせて平原の軍の拠点から直通で来たな。オイラでも具合悪くなるヤツだ。
「オイッ、あちこち綺麗にしたのにいきなり汚すなよ?」
「う、うるさいっ。商人の小人めっ! 森の宿の使用権限が厳格でなければっ、お前達ごときに膨大な国費を!! うっ、うっぷっ」
下から睨んでくる猫役人サラ。
「口と態度が悪いなぁ、マリユッカ、ミィルス。しばらく回復魔法使ってやらなくていいかんな?」
「兄さん、大人げないよ? 回復しますね、ヒールライト!」
魔法で回復させるティティ! 何っ?
「ティティ、いつの間に魔法を??」
「ふふん、魔力が上がったから昨日、マリユッカに教えてもらったんだ」
「ティティはやればできる子やさかいな」
「・・オイラだって覚えられるしっ」
「おっ? 焼きもち? はぁ~っ、子孫まで誘惑してまう何て、ウチも罪な女やで~」
「違うっ!」
「お前達、戯れ言はそこまでだ」
ハンカチで口を拭いながら、いきなり高圧ムーヴかましてくる猫役人。
「『ゲロ猫』何だよ?」
「ゲロ猫ではないにゃっ!」
激昂してニャー語尾になる猫役人。
「・・まぁ、いい。小人の『まともな方』、ヒールは大儀であった」
「はぁどうも」
「では、この森の宿の管理者であるお前達兄弟が、軍の統治の基づき」
「それはどうでしょうか? 我々ティティ・サマークラウン、レンダ・サマークラウン兄弟は、あくまで氏族の使命と、広くは亡き谷の災いが及ぶこの地域の民全体の義務として、この役目に就いています。そもそもベスドーアの森は国の管理下にはありません。もっと言ったらこの宿は半分くらいこの世の物ではないようです。何でしょうか? 王の支配は支配されない地域やあの世にまで及ぶ物なのでしょうか? だとしたらまさに当代王はまさしく『超越的神聖王』ですね。僕らの『ヘンテコ宿』何て必要無いんじゃないですか?」
「まともな方の小人が長文で返してきたっ??!!」
このあと小一時間、この場でムキになった猫役人とティティはディベート合戦になったが、最後は言い負けて激昂した猫役人にティティが引っ掻かれ、名誉の負傷を負いながらも宿の自主管理権はどうにかキープできたのだった。
ナイスファイト! ナイス減らず口! やればできる弟だぞ、ティティ!!




