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レンダとティティの宿  作者: 大石次郎


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ティティの部屋

よ~し、一階を改めて見るとサイズ感は外観からブレるけど、基本的には円形。


「今居るフロントの向かって右手に大きな上階への階段や。その奥に前はドワーフ式のエレベーターが3機あったはずやけど、今はちょおゴチャ付いようわからんな~」


「補修以前に代替わりに合わせて内部構造は変わるらしい。まぁ途中でも建物自体が『変化、成長』したりするけど」


確かめるように側の柱に触れるゼルアン。


「あやふやなもんだな・・」


「魔法の産物だしね」


「お爺ちゃんは最初は宿を魔法道具として研究する為にこの森まで来たらしいよ?」


「初期のゴゥラス様は宿の運営にはうんざりしてましたねぇ」


「へぇ?」


真面目そうだけど、まぁあの爺さんも『ちょっとは若かった』て事か?


「フロントの奥、一階中心部分は従業員フロアや。宿の主の仮眠室もあったでロンダが散らかすから2人の喧嘩の原因第1位ったな」


「曾祖父さん・・」


「御先祖様・・」


ここまで『いいエピソード』ないぞ?


「左手は食堂。広過ぎて配膳が間に合わんから飛行系種族を給仕に雇ってたわ」


「宿泊最大100人て聞いてたけど、ここは数百人は入れそうだね」


「泊まり以外も出入りがあったんだろな」


柱は多かったが、ロビーとの仕切りになる壁は少なく開放的だ。現状テーブルも椅子も転がり荒れ放題になってるが。


「右のエレベーターの先の壁にアーチがあるやろ? そっち行くで?」


「厨房に行きましょうよ? 厨房だけはワタクシが綺麗に維持してきたんですから!」


「タツノジ、そこは『現状』がハッキリしとるやん? 後や後っ!」


「そんなぁ・・」


料理長がヘコみつつ、オイラ達はボロボロのアーチを潜った。


「あら? おかしいなぁ?? ここ変わるかぁ?」


アーチの先は荒れしても、何もない広間が続いていた。


「フロントの右手って、資料では確か『商店と工房のフロア』だったよね?」


「そや、ティティ。換気し易い外側が工房。内側が商店。時期によるけど十店ずつくらい並んどってんやけど・・」


「他の場所にズレたんじゃ、おっ?!」


オイラが持ってたベスドーアの鍵が突然浮き上がって手を離れ、ティティの手に収まった。


「え? わっ! ちょっとっ?!」


ティティの手に収まった鍵はそのままグンっとティティを引っ張って、藻抜けの殻になった広間の外側の壁の中心に誘う。オイラ達もティティに続いた。


行った先で壁が光って扉が現れた!


「マリユッカ。これって?」


「『(あるじ)の部屋』やな。代替わりすると新しい主に合わせて新しい部屋が現れるねん。これは『ティティの部屋』や」


「僕の部屋・・でも外側の壁だよね? 開けたら外に落ちちゃうんじゃ?」


「ここは森の宿やで~?」


「開けてみようぜっ、ティティ!」


「先代2人の部屋は冒険者達を大いに助けた。大丈夫だよ」


「お爺ちゃんじゃないけど、こういう構造物の魔法、興味有るっ!」


「じゃあ・・」


ティティはベスドーアの鍵を鍵穴に入れ、解錠し、扉を開けた。その先は、


「これはっ」


商店街と工房街! ついさっきまで人が居たような、無人の専門街がそれをすっぽり納める建物に覆われていた。


商店も工房も、軽く50店は越えてるだろう。この規模は大きな都市にゆかないとそうない。


「こら驚いた、既存設備の拡大パターンかぁ。また気前良く拡げたな~」


「念願の調理器具専門店も出店されそうです?!」


「凄い、けど、これだけの店舗を埋めるだけ商人と職人を集めるのも大変そうだね」


「おお~、でもその手前の広間の何かで埋めないとな?」


「だったら私とゼルアンで半分こして、アトリエとガレージにしようよ?」


「まぁ作業はし易くなるね」


「オイラはいいと思うが、まずは建物全部見てみようぜ? どっかに『ウンチ拾い係の部屋』が生えてるかもしれないしなっ」


「レンダっ!」


「兄さん・・」


「へへへ」


「それもええけど、『レンダの部屋』ももう有るなら見付けとかんとな」


「無い事もあんのか?」


「ウンチ係の部屋は見付けなくていいよ!」


「主の部屋は時期が来ないと現れへんのも珍しくないねん」


「ふぅん?」


時期、かぁ。



それからオイラ達は1階2階3階4階に屋根裏部屋、地下も見て回ったが、結局オイラの部屋は現れなかった。ちぇっ。


「・・総員構え!『幻獣ウンチ回収』ゴーレム隊、出撃!!」


ゴーグルとマスクをしたミィルスがウンチ吸引器を装備した小型ゴーレム軍団と共に宿に再突入する中、残りのオイラ達は塀とウッドデッキを付けた1番上等な宿の外の東屋に集まってた。


見分は思ったより早く済んだからまだ午後3時過ぎだ。

タツノジが事前に作ってたマフィンをだいぶ立派になった窯で温め直してくれたのを摘まみながら、お茶も飲みミーティングをする。リッチだな、と。


「ゼルアン、修理の塩梅はどうなりそうだ?」


「散らかり放題であちこち穴も空いてるが、崩落の危険がありそうな所は少ないね。むしろエレベーターやボイラーとか、魔法工学製品の修理が厄介そうだ」


「そこはミィルスがやってくれるよ。確か、『ゴーレムを修理するゴーレム』も造ってるみたいだから応用できるんじゃないかな?」


「そこはかとなく人類の未来が不安になるテクノロジーを使ってるな、アイツ・・」


「まぁ当面は掃除と修理や。滞在人数増えるから、水と食材の確保、忘れんときや。あむんっ!」


掌サイズのくせにマフィン1個完食するマリユッカ! 今、一口で一気に減ったが、『概念的に食ってる』??


まぁ、いい。初期対応は見えてきた。取り敢えず、もう時間無い。夕飯までに余裕を持って50人分くらいの食料を10日分は揃えないと!

供物の残り、どれくらい人が食べても大丈夫なヤツだっけな・・

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