宿の灯り
「昨日、合流してから進みは早いです。明日の昼には宿まで道を開通できやす」
朝一で水晶通信で林道補修をしてる連中と合流したドワーフ郷の大工の組のメンバーとゼルアンが連絡を取っていた。
眠いが、まだ寝巻きのオイラとティティも呼ばれてる。オイラの頭の上には眠ってるマリユッカが乗っていた。
「わかった、ご苦労さん。後で差し入れをミィルスのゴーレムに運ばせよう」
「料理人が凄いのが仲間になったから期待していいぞ?!」
「食べられそうな供物の余りも結構あったしね・・」
「ああ、ども。そりゃあ、ありがたいこって。交代してないらしいワードック達から糧食が単調だって不満が出てきたんで、良かったです」
水晶通信はスケジュールと差し入れの確認を経て切られた。
さて、オイラ達も朝の支度が済んだら仕事だ! さすがに慣れたぞ?
ゼルアンと初孫ミィルスとヒポグリフのサスケは道路補修組と大工達、合わせて40名くらいが取り敢えず滞在できるように朝から宿前の仮設の野営地の拡大作業をしてもらい、
オイラとティティとホネホネと「残ってるのはわりとヤンチャや」と付いてきたマリユッカは昨日の内に何とか追加で集め終えた素材で『難度の高い供物』を作ってそれを求める残り約3割の幻獣達に、
どどーんっ!
と、食わせて契約を済ませた。
蛸だか蛇だかよくわからんスキュラとか甲羅を持つ蜘蛛ウシオニだとか、どーやって宿に入ってたんだよ? ていう大型のヤツ等が多かったぜ。
まぁ『不定形な状態で停滞してた』って感じ何だろうけど・・
「はぁい、お疲れ様でぇす。ではワタクシはお昼の支度を始めます」
「おう、ホネホネ任せた! ティティとオイラは野営地拡大を手伝うぞっ?」
「宿を目の前に野営地を造り続ける、というのも変な感じだけどね」
「修理、こっからやで?」
「あちらと合流するなら昨日の内に焼いておいた塩クッキーと、今朝水筒に淹れておいた紅発酵茶を持っていってあげて下さぁい。サスケちゃんには森蜜柑を」
「おっ! ホネホネ気が利く~」
というワケで、塩気のある茶菓子と蜂蜜と入りだった茶と果物を手土産に野営地組と合流し、軽いお茶タイム後に作業に入った。
せっせとスライム式トイレを増やし、東屋と衝立を増やし、給水樽は持参してるだろうけど、調理場はそこそこなのを造って、
安全に暖を取れる炉も増やし、湯浴みや洗濯用の排水路とスライム式浄化槽も造り、簡単な獣舎も建て、
後は一応水と燃料を確保する為に、この環境だとすぐ見付かる素材を集めてアクアジェムとファイアジェムをある程度量産。
薪も大量に集めてマリユッカに魔法で乾かしてもらった。
「完成だ! 我ながら『30人力』で、いい仕事したね。ふんっ」
「『ゴーレム軍団』パワーだよ!」
「オイラの『高速細かい作業』っっ」
「え~と、僕はまぁ普通に手伝っただけだけど・・」
「ティティ、他の連中がオカシイだけであんたはノーマルやで? やればできる子や」
「はぁまぁ」
「お昼、できましたよ~~」
というワケで午前中で野営地の拡大を済ませたオイラ達はホネホネ料理長の、野外らしからぬ豪華ランチにありついた。
ホネホネ、『料理人雇うのは早過ぎかもしれん』と思ったりもしたけど、めちゃ有能だな。
よし、ホネホネからタツノジに呼び方出世してやろう! ゼルアンは何かあだ名付けるタイミング無かったし、こっから呼び直すのややこしいからもうゼルアンでいいや。『大工マッチョ』とか言ったら素で怒られそうだし・・
主の証明、トーテム、供物、野営地の拡大と一通り済んだオイラ達は、食休み後の午後、いよいよ精霊も幻獣も去ったボロボロの森の宿の中を見分する事になった。
「「せーの」」
オイラとティティはベスドーアの鍵で宿の正面口の鍵を開けた。
中は暗く、埃っぽい
「ライトボール」
マリユッカが照明魔法を使って周囲だけは照らしてくれた。
入るとそれなりにボロボロでやっぱ散らかり放題。でもって、
「うっ、何だこの『スパイシーな臭い』?」
「甘辛い感じだねっ。わっ? 何かブヨっとしたの踏んだ? スライム??」
ティティが何か『ボヨボヨした物』を踏んだ!
「幻獣のウンチや。停滞して、時の精霊もおったけど、それなりに落ちとるで?」
「「ええーーっっ??」」
「でも幻獣のウンチは種類ごとに良質な魔方素材になるんだよ?」
「だったらミィルスは『幻獣のウンチ拾い係』な」
「っ?! 嫌ぁーーっっ!!!」
「ミィルス、ゴーレム使ったらすぐ終わるよ」
「後でゴーレム整備しなきゃじゃん??」
「それは、まぁ・・」
「仕事だろ? もっと本気でウンチと向き合えよ?」
「レンダっ!」
「はいはい、フロント行くで~。宿に明かり灯さなあかんし」
オイラ達は魔法の光の玉を従えたマリユッカに続く。宿の中は『外から見た以上に広い』柱や、よくわからないガラクタもあちこち落ちていて、ここ自体がダンジョンみたいだ。
「ここや。・・ほら」
広大な部屋の中心辺りにあったフロントのカウンターを差すマリユッカ。
埃まみれのフェザーフット族用のタイバーで留めて重しにしてあるメモがあった。先代のロンダとゴゥラスの連名だ。
オイラとティティは吸い寄せられるように手に取り、読み上げた。
──────
ようこそ! 次の主。
ここは1つの市であり、郷であり、兵舎であり、教会であり、人々が集い、別れ、また集い、それぞれの物語を紡ぐ場所。
ここはベスドーアの森の宿。亡き谷の死を食い止める砦。
君と君の仲間達の健闘を祈る。
光有れ!
──────
言葉に反応し、宿の古びたマナ灯が、蝋燭の燭台が、入り込んでまだ枯れてなかった光る苔や茸が、その他正体不明の全ての照明具が光りだした!!
「素敵・・」
「懐かしいな」
「また、始まるのですね」
「レンダ、ティティ、よう来た。ここが森の宿や!」
マリユッカにそう微笑み掛けられて、オイラ達の宿の主として活動はいよいよ始まったんだ。




