計画❶
朝になり、初めに連れてこられた部屋に行くと、長椅子に椅子が五個、長机にホワイトボードが設置されていた、ハハ用意のいいこと。
龍博が座ると、他のメンバーもそれぞれの椅子に座った。この感じは久しぶりだ。が、事態はかなり難しい。
「昨晩の話で、だいたいの状況はつかめたと思うが、何かあるかな」
幸雄が手を上げた。
「彼らの戦力、もうちょっと聞きたいね」
隼人が例によって突っ込む。
「なあ、昨日から思っていたんだが、お前軍事オタクでもあるのか」
「だってさ、興味あるじゃん」
美里が割り込む。
「多分、あれ以上の情報でないわよ」
「何故さ」と幸雄。
「ばかね、敵に教えるわけない」
隼人が言った。
「少なくとも俺が居る限り、敵だな」
「そうかあ」とがっかりした幸雄、こいつ本当に軍事オタクなのか
「では、幸雄君に聞く、あの戦力で、あの作戦は可能か」
幸雄は少し黙った。おや珍しいな、こいつに思慮というものが、あったのか。
「爆弾の規模が問題だね、どれくらい警察を分散させることができるかだね。もし永田町界隈の警備が手薄になったら、もしかしたらできるかもしれない」
龍博が聞いた。
「やはり陽動がないと永田町は突破できないか?」
「うーん陽動に変わる方法かあ」
やはり爆弾か、問題は。
「爆弾の規模が大きければ大きいほど。作戦は有効ね。でも、そうなったらちょっとした戦争だわね」と美里。
「自衛隊の治安出動ね。そうなったら大きな犠牲者がでる。それを阻止できる方法って」と由紀子が髪をぼりぼり掻く。龍博は、おい俺のまねは止めろと思った。
「隼人君はどう考える」と龍博は聞いた。
「テロは許されない。絶対阻止だ」
「どう阻止する」
「今のところ、分からん」
「君の携帯で警察にリークすればいいじゃないか」
皆、驚いた顔になった。由紀子は唖然としている。
「今、何も起きてないし、彼らの武器も見たわけじゃない」
「では話を疑っている?」
「そうだ、これだけの計画、今まで隠し通したことが異常だ。公安はそれほど馬鹿ではない、とも言える」
「何か他にあるのか」
「あれだけ警察官の俺にべらべら喋って、携帯も取り上げない。俺に偽情報を流させる、とも考えられる」
やはり気が付いていたか。
「だから俺が警察に連絡したら、その時点でテロは起きる、警官にスパイが居るかもしれない」
まあだいたい、俺の考えた通りだな。龍博は隼人が警官バカでなかったことにほっとしていた。
「では、前提として、テロ計画はあると考えよう」
全員異論は無かった。
「今日、結論を出すことは無いだろうから、何でも好きなことを言ってくれ」
隼人が手を上げた。
「計画を中止させて、武器を持って警察に自首させる。今なら軽犯罪だ」
幸雄がハハと笑った。
「何が可笑しい」
「だってさ、今更自首なんて、するわけないじゃん。ここまで僕らにぶっちゃけたんだから、もう後には戻らないよ」
「そうね、私も、そう思う」と由紀子。
美里は何も言わなかった。つまり言うまでもないということだろう。
すると由紀子が、
「こういうの、かなり残酷だけど、私らの作戦は、爆弾に変わる作戦は無いか考えることと思う」
この由紀子の提案は驚いた。永田町突入は受け入れるということか。
「由紀子さん、かなり思い切ったね」と幸雄。
龍博はうーんと唸った。先に言われたか。自分はなかなかに言えなかったことだ。
「一般人を巻き込まない。ねらいは政治家だけに絞らせるか」と美里。
「うーん、殺人は殺人だが」と隼人。
由紀子がきっぱり言った。
「この際、政治家と一般人を天秤にかけましょう」
「そうだね、公務員は奉仕者なんだからしょうがないね」と幸雄。
こいつら鬼だ、公務員だって生きる権利はあるんだぞ。
「でも異なる作戦って何?」と美里。
「まずは警察の目を引き付けることだね。例えば警察無線を無力化できればどう隼人さん」
「そいつは、かなり強力だな。それができれば都内は大混乱だぞ、爆弾の方がましかもな」
「なら通信施設を爆破すればいいのでは。限定的にやるなら、その方が良い」と由紀子。
「多分、その辺は彼らも考えているだろうな」
人的犠牲の伴わない軍事作戦というのは、そもそも成立するのか。
「日本がね、もっとデジタル化が進んだ国なら、もっと話が早いんだけどね」と幸雄。この言に龍博が、そうかと言った。
「そうか、日本の役所はネットやデジタル資料が進んでないんだ。地方ではフロッピーディスクをまだ使っているくらいだからね」
幸雄の得意分野はいかせないか。ではどうやって。
「彼らは爆弾を持っているのよね、それで立てこもりをやろうと思っているのよね」と美里がゆっくり言った。
「そうだが何?」と龍博。
「だから、永田町の民自党本部、孤立すればいいってことにならない?」
「そうか、いろんな場所を破壊するのでなく、逆に周りの交通網を爆弾で破壊して孤立させるか」
「そう、何も殺すのが目的じゃないのだから。立てこもりよ、これなら交渉にもなる」
隼人が聞いた。
「それだと、選挙結果が決まったときに、破壊班と籠城班が同時に行動する必要があるな」
なんとなく見えてきたな。彼らは爆弾を持っている。その用途を少し変えればいいわけだ。
「待って、そんなに早く決めなくていい。午前はここまでにしない」と美里が提案した。
二日目の午前はこうやって終わった。




