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未成年売春

 キャバ嬢で一か月何千万稼ぐものもいるのがキャバ嬢市場である。なみのサラリーマンとはわけが違う。だがまったく売れない嬢はせいぜい生活費をやっとの者もいる。もちろん何千万は勝ち組であり生活費は負け組である。勝ち組のキャバ嬢を発掘したスカウトマンはその嬢が稼ぐ限り、彼女の売り上げの何パーセントかをもらえるから、皆必死になって売れる女を見つけようとする(ただし容貌が良い女性が良い女とは限らない)。これが歌舞伎町の市場原理の一つである。

「それで、どんな女なんだ」

 どうでもいい質問だったが、鳥頭は「ごにょごにょ」と意味不明な発言をした。こういうのを見逃したら、警察官失格だ。

「何だ、何かありそうだな」

「……」

「なんだ不法滞在の女か、いや違うな。その程度ではお前ら、喧嘩しないだろ」


 こいつが何かあるのは確かだ。何だ? 周りを見た隼人。

 周りにいる女性、まあ、普通に歩く女性。ん! あれは間違いなく高校生だな、あっちにいるのは、もしかして中学生か! 隼人はここにきた理由を思い出し、閃いた。


結構な数の女性が明らかに未成年だ。

「お前ら、もしかして未成年を」と言った瞬間、鳥頭は猛ダッシュを図った、が、一瞬早く、鳥頭の右手をつかんだ隼人は地を蹴った。空中で両足を鳥頭の右腕に絡ませ、ジャンプの勢いで鳥頭の身体を前方回転させて、そのまま十字固めを決めた。

「公務執行妨害、現行犯逮捕」

 一瞬腕を折ってやろうかと思ったが、やっぱりやめよう、なので言った。

「おい、腕折ってやろうか?」

「ひえー勘弁してくださいよ」

「なら、俺が聞くこと全部答えろ」

「ええ!」

 腕の関節を従来より逆方向に向ける。すると、このまま続ければ腕の骨が折れる。

「おい、折れるぞ」

「ひえー 分かりました、だから折らないでください」


 まあ逃げられなくするには折った方が良いだろうが、そこまでする必要なかろう。なので隼人は鳥頭の右腕を極めている手を緩めてやった。が、放さない。そして周りを見ると結構な人数がこっちを見ている。人は自分が安全な場所から他人の喧嘩を見るのが好きなのである。特に男は。これが興行的に格闘技が存在する所以である。

「じゃ未成年が関わったことは認めるんだな」

「……」

「よーし折るぞ!」

「分かったあ! 認めます。認めるから離してください」


 よし心を折った。が、これは明らかにやりすぎである。ばれたら懲戒ものである。だいたい隼人は刑事部にも居ないのである。だが、刑事ではないから刑事のしないことをやるという理屈も成り立つわけである


 そして隼人は鳥頭をモルフォに強制連行したわけである。なぜモルフォか、「あなた霊能者ね」というジェーンの言葉が何となく腑に落ちたのである。なので、

「あ、ママさん、看板にぬらりひょんくっついていたよ」と隼人に、

「ああ、昨日は一つ目小僧だったよ」というジェーンとの絶妙? な会話になって、隼人は何となく嬉しいのである。だが、今はTⅩ横未成年問題である。

「お前ら見ていて、おかしいと思ったことがある」と隼人が問うと、

「なんすか?」と鳥頭が言った。

「て、いうか、お前ら、むきになりすぎてないか」

「はー」

「未成年、ハイリスクだろ」

「はい?」

「んー(面倒だな今の若者は変な造語作るのに、一般的な語彙が足らん)つまり危ないだろ、そんな手段」

「はーそうすね」

「だから何でそんな危ないことするんだ」

「うー」

「お前はうーとかはーとしか言えないのか」

「はー」


 困ったな。一応言っとくが鬼塚は日本人であるはずだが、だんだん疑わしくなった。すると、

「つまり、この子たちも、かなり激しく競争を強いられてんのよ」と見事な解説のジェーン。

「ねえ、あんた先月の売り上げは一番いい時の何分の一?」とジェーンは鬼塚に聞いた。

「半分っす」


 ジェーンが隼人に顔を向けた。

「つまり、こういうこと。こんな話、歌舞伎町だけではない。多分、日本中がこうなっているのよ。格差の拡大」

 なるほどな。公務員で売り上げなるものにまったく関係のない警察官は、こういう点が弱い。犯罪は貧乏の結果が多いのだが。

「それで、未成年は相場より高いわけだ、どのくらい高い?」

「三、四倍」

 こいつは驚いた。ジェーンもため息を吐いた。

「こりゃ日本滅ぶわね」

「三、四倍というと一晩では?」と一応、隼人が聞く、

「時間にもよりますが十万から十五万っす」


 この答えには、驚きより笑うしかない。一か月十二万で暮らすシングルマザーが居る一方、一晩で、その金額を消費する人間。いったい日本大丈夫か?

「だが、そんな金額払う人間って何もんか?」と問う隼人に、

「分からんのですわ、そういう客をまとめているっつうか、中に入る人居て、客は、絶対私らの前には出てきません」と鬼塚。

 ふうん、ブローカーというわけか、するとその顧客は、相当身分の高いエロオヤジか。企業家、高級公務員、タレント、名が出たら世間が騒ぐ、エロおやじ、とはかぎりないか、若い起業家も居ればタレントも、十八ひとからげで勝ち組か、ちっ! 反吐が出る。


 鬼塚がボソっと言った。

「結局、TXの子供らも居場所が無いんですよ、家にも学校にも」

 なるほどな、だが歌舞伎町は危ないだろ。

「まあ、自分らも同じですけど」と鬼塚は付け加えた。

 ジェーンさんは笑いながら、

「そういう人が集まる歌舞伎町ってなんなんでしょうねえ」

 まったくだ。

 新宿の夜は更けていった。


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