花
花。そう名付けたのは母だった。母は花の好きな人で、
理由は多分それだけだった。
黒くて大きな犬だった。周りからは怖がられたけど、花は絶対噛まなかった。
優しい目がいつもつやつや光っていて、湿った鼻も真っ黒だった。
4歳からうちに来て、一人っ子だから姉妹代わり。背中に乗ってみたり、寝てる時に鼻に指を入れたりしてた。
私が歳を重ねると、距離も離れていった。
忙しかったの。心も体も忙しかった。
冷たくしてごめんね。
写真のあなたは昔よりも小さく見える。
さみしいから悪戯をするのに、叱るだけでさみしさを放っておいた。それどころじゃなかったって、そんなひどいことなぜ言えるのかなって、あなたは思うでしょう。
あなたを懐かしい思い出にして、今そばに居る真っ白なこの子を愛する私を責めるかな
きちんと愛するってとても難しいことだと、今更知る大人の私。子どもだったことを私は免罪符にしているね
辛い思いをさせたんじゃないかと思うの。
でも楽しいことがあったならいいな。川に飛び込んでいくあなたみたいに。自由な時間があったならよかった。あったと思いたい。綺麗にしていく記憶を恨んでもいいよ
いつかまた会えたら沢山ボール遊びして、沢山キスをあげる