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メサイアマジック <あの時の君へ胸張れる転生を>  作者: 桜の宿
第二・五章 浅層の監獄 ~脱獄編~
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二・五章六話 「始まりの始まり」



 「あ”~~・・・!!今日は最悪な日だ!!」



 広い部屋で、恰幅の良い男がソファに座り込む。



 「クンノ様。お体に障りますので、本日のお遊びはほどほどになさってください。」



 化粧屋でも大勢いた付き添いの服装をした男が、怪我を心配し忠告する。それを聞いたクンノ・ツメイルローは、あからさまに不機嫌となった。



 「チッ。融通の利かん奴らだ。・・・じゃあ一人!!一人だけ連れて来い!!」



 募った苛立ちが態度として現れ、待ち時間の間頬杖をつく。



 しばらくして一人、手足が縛られ自由の利かない女性が部屋へ投げられた。



 「やあァっと来たか・・・!!」



 「ひっ・・・!」



 恐怖で顔が青ざめていく。状況によっては自分を殺すかもしれない、超危険人物。一目見ただけでも手に取るようにわかる。



 そしてそれは、勘違いではない。



 「おい。刃物が足りないぞ。さっさと持ってこいッ!!!」



 怒号が鳴り響く。ただでさえ危険人物であるのに、最高に不機嫌と来た。女性は命の終わりは確実だと悟る。



 一人の男がクンノの元へ近づき、耳打ちをする。



 「・・・・あァ!?例のガキが釈放されたぁ!?」



 不機嫌が加速していく。



 興が冷めただの畜生だの、ぶつぶつ言いながら何かを探っている。



 片手に収まる物を男に手渡し、クンノはこう告げる。



 「いいか。万が一にも奴らが復讐してくる可能性がある。僕は別のところで遊んでくるから、奴らがここへ来たらそのボタンで閉じ込めろ!その後は・・・わかってるな?」



 女性は自分のことではないのに、背筋が凍る。復讐かなにか知らないが、自分を助けてくれるかもしれない者が、ここで殺されてしまう。




 「・・・承知しました。」



 男はボタンを受け取る。



 苛立ちのままクンノは、女性の髪を引っ張り部屋を後にしようとする。痛みのあまり悲鳴が出る。



 クンノは誰にも知られることなくその行方を・・・




 ガシャン!!!ガシャン!!ガシャン!!




 重い音を立ててシャッターが落ちて来た。部屋が外界から遮断される。




 「オい何している!!?ちゃんと話聞いてたか!?奴らが来たらボタンを押せっつったんだよ!!なんで今押してんだよ!!?」



 簡単には開きそうもない部屋の中、下手をやらかした男に向けてクンノは怒鳴りかかる。相手は怒り狂う貴族家計。




 「何言ってるんですか。言われた通りちゃんと押しましたよ。」



 「だからァ!!!」



 理解力が乏しすぎると口にする寸前で、男は顔につけた衣装を脱ぎ始めた。



 「"奴ら"がわざわざここに来たのですから、命令を実行したまでですよ。クンノ・ツメイルロー様?」



 「き、さま・・・!なぜ・・!?」



 目の前に立つのは、決して命令に忠実ないつもの者たちではない。クンノを殴り飛ばし、あまつさえ釈放された男。



 「暑。」



 化粧屋での求婚を断った女。



 「よいしょ!」



 この青いのは・・・誰だ。





 ミウの魔法により、女性を縛り上げている紐を斬りほどく。今がチャンスだという直感に従い、護ってもらおうと背後まで走る。



 「な、なにをしに来た!?復讐か?復讐だろ?!そんなことしたッて何にもならない!!話し合いで、いや金で解決しよう!!?いくらだ!!いくらで見逃してくれる!?」



 隔離された空間の中、助けは来ないと悟ったのか見逃してもらうためにあれこれと説得を続けている。



 「あの時、僕はお前を捕まえルつもりはなかったんだ!!あいつらが勝手に・・・!!いただろう!お前を押さえつけた奴らが!!あいつらが勝手に捕まえたんだ!!僕のせいじゃないッ!!」



 はっきり命令していた記憶がなくなったのか、それでも自分は悪くないと言い張るのか。



 「たのむ助け、て・・・!?」



 すがりつく野郎の胸ぐらを掴み上げる。



 「確かにな。俺らがお前に受けた被害は、言うほど大きくはないかもしれない。実際、俺は釈放されたし。」



 「そ、それじゃ・・・!」



 わかりやすく顔が晴れる。人の話を最後まで聞けっての。




 「だから、お前に復讐するのは俺じゃない。」



 「・・・え?」



 メイラが重いシャッターを力づくで上げる。外には人相が悪い大人が大勢、何かを待っている。




 「お前、随分とやらかしたようだなぁ。手を出しちゃいけない女にまで手を出したらしいじゃん。」



 「や、や・・!」



 「てわけで、まぁ、俺はあの時一発殴ったからな。・・・少女の拳一発で、後はあいつらに渡すか。」




 結局俺は、理不尽に誰かを傷つけるような奴を黙って見逃せるほど・・・




 「ぎゃあああああアああアああぁァぁぁ!!!?」




 出来た人間ではないらしい。




 メイラに殴り飛ばされた野郎は壁に思いきり激突。うずきながら涙目で、こちらを睨みつける。



 「ふざ・・・!け、ヤがってェ・・・!!ぜッたいに殺して、やる!!お前らを・・権力でねじ伏せてやる・・・!!名前・・・言いやがれぇ・・・!!」



 危害を加えられたことにより逆に態度が戻った。復讐心が燃えあがったのか。よし。ここはバッチリ決めてやるよ。




 「俺の名は、"ウチョマル"!!」



 「"ベニシカゴ"!!」



 「・・・・"メケメケ"!!」



 各々が名前を決めて放つ。普通偽名使うよね変に関わられても怖いもん。




 「オ、ぼえたからなぁ・・・!!ウチョマル!!ベニシカゴ!!メケメケ!!・・・精々首洗って待ってやがれぇ・・!!」







━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━







 ボコボコに顔の腫れたクンノは、板に縛り付けられて"クズ反省中"の紙を貼り付けられ、街中を徘徊させられている。



 「じゃあ、後は好きにしていいんだな?」



 「・・・普通は騎士に任せるもんだけどな。」



 人相の悪い大人と話をつけてきた。この人たちは本当にヤバい奴ら、というわけではなく、ただの冒険者だ。



 騎士に任せっきりでも、貴族ブーストで刑が軽くなる可能性がある。軽くするには被害が大きすぎるので、ここから数日は好きにボコる日を作るという話で片が付いた。シュガードとも話をして、まぁ、とにかく色々あった。



 「本当ならあんなクズ野郎、一生をかけてボコしつくすのが道理なんだがな。」



 「約束守れよ?じゃないとシュガードが行くからな。」



 「やめてくれよ・・・。畜生。」



 筋骨隆々なギルド長。見た目通り皆から恐れられている。



 人相の悪い大人は、離れていく貼り付けクンノを追って行った。





 「スッキリした?」



 「ちょっとだけ。」



 メイラは使った右手を、手持ちのハンカチでふきふきしている。触り心地最悪だったのかな。



 「そんなことより!・・・ミウ。今日は私とアメル、どっちのが楽しかった?」



 「!そうじゃねぇか!!勝負中だった!!」



 「う・・・!?」



 唐突に思い出した勝負。審査員のハークンとメクが不在だが、こんな事件があったので不正がどうだの話はなし。



 「ミウ!私と一緒にいたいよね~!」



 「考えてみろ!一緒にいたいだけなら冒険者じゃなくてもいい!!ミウにとって、もうメイラは大事な友達だもんな!メイラが安全なのは、一体どっちだ!?」



 「アメルずるい!!」



 「ずるくないですぅ~!重要な判断材料を教えてあげただけですぅ~!」



 もはや勝負の趣旨はどうでもいい。メイラをパーティとして迎えるか否かの話になっているため、当然ミウは困惑状態。




 勝ちは・・・・



 ・・・・・・・




 ・・・・・・・・・・・・・






 「・・・・メイラ。」



 「よしっ!!!」



 負けた・・・。決断してくれただけでも偉いけど。




 「それじゃ改めて。・・・私は"メイラ"。頭の角でわかる通り魔人で、後は・・・力には自信がある。夢は一つだけじゃないけど、その中でも一番の夢は、世界中のどこかにある"世界三大珍味を食べること"!!」




 丁寧に自己紹介を始め、最後には握りこぶしを前に掲げた。




 「ボクは"ミウ"!スライムだよ!魔法が得意!夢は、"世界中の色んなモノを見て回ること"!!」




 ミウまで自己紹介に乗っかり、前に出した拳をこつんと重ねた。



 「・・・・。」



 二人がワクワクした顔で見てくる。これはもう、乗らなきゃいけない。




 「俺は"アメル"!!見てわかる・・・かはわかんないけど、人間だ。魔法は薄く広くで基本は身体強化魔法、強いて言うなら器用貧乏ってとこか。・・・俺の手の届く範囲を徐々に広げて、最終的な夢は、"すべての悪を倒すこと"!!」




 三人の拳が優しくぶつかり合う。よろしくの合図とともに、掲げた拳は解散した。






 「いいなぁ。青春じゃなぁ・・・。」



 「なに見てんだジジイ!!」



 一連の流れを見られた。奇跡的に、見える範囲には人がいなかったため気を抜いていたが、まさか見落としがあったとは。



 振り返ってみると、途中までおぶってきた老人がいた。老人一人とはいえ、今の啖呵を聞かれるのは恥ずかしい。



 「なんでついて来たの?結構遠くに置いてったはずだけど!?」



 「お前たち冒険者じゃろう。頼みごとがあっての。」



 「ギルド行け!」



 冒険者にものを頼むときはギルドを仲介する。この世界では、そこら辺の子どもでもわかることだ。



 「じゃあ、ちょっちギルドで話聞いてくれんか。」



 冒険者ギルドの制度として、名指しの依頼が可能だ。それゆえに人当たりが良い冒険者は指名依頼が多く、さらにお人好しな冒険者は全部請け負って奔走したりする。



 |D級(知名度なし)なのもあって、ウチは指名依頼などほとんど受けたことがない。



 それが今、唐突に。そしてこれが、




 「お前たちに、探して欲しいものがあるのじゃよ。」




 あのような大事につながるとは、




 「探して欲しいのはな、」




 この時、思いもしなかった。




 「"キンタマ"じゃ。」









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