二・五章四話 「叩き起こし」
アメルが投獄された時間、4人は近くの公園で集まっていた。
「助けに行く!!!通せ!!!」
怒り狂うミウの進行方向には、禍々しい色をした魔法が立ちふさがる。出所はメクだ。メイラとともに何もないところで立ち尽くし、押し黙る。ただ、二人が立ち尽くす理由はそれぞれ違う。
突然の出来事や緊張から、ハークンはその場にどかっと座り込んだ。
「畜生。俺はなんで黙ってたんだ・・・。あんなやつなんかより、こっちのが何倍も・・・!」
ぶつぶつと後悔と自己嫌悪を口にする。
「ハ、ハークンさん・・・?」
「・・・ッ!!あ、違・・・。おいらは、その・・・!」
いつもと違う雰囲気に違和感を抱き、正気を保っているかどうかの確認のつもりで名前を呼んだが、わかりやすく動揺している。
動揺の意味を考えるより先に、ミウの抵抗がエスカレートしてきた。無理やり突破を図る寸前でさまよっている。こちらへの被害を考えたうえで自ら力を制御しているが、限界が近そうだ。
「と、とにかく、なにか助ける方法を。せめて減刑できるか聞きに行くだけでも・・・。」
そんなことに意味はないとわかっている。それでも何か行動ができないか、必死に頭を悩ます。
「あ、あの・・・!!」
前方から、振り絞るような声が聞こえた。
そこには、今にも崩れそうなほど怯えた子どもが一人。
「あの人の・・・友達ですか・・・?」
恐怖に染められた声。それは、暴れ狂うミウに対して抱いた感情ではない。
「お、俺!実はその・・・。おれ・・・!!」
出すべき言葉が浮かんでこない。
もたもたしている間に、一人の女性が大慌てで駆けよって来た。
「タロくん!!勝手に先生から離れないでって言ったでしょ!?」
子どもは体で抵抗するも、まだ大人の力には及ばず、無理やり引き離されていく。聞こえる距離にいる内に、タロは言葉を絞った。
「あの人を、助けて!!!俺の・・・!!俺の英雄なんだよ!!!泣きそうな俺に、勇気くれたんだ!!!だから・・・!だから、お願い!!あの人を・・・!」
自分たちが来た方向へ、戻されていく。たまたま近くで遊んでいたゆえに、アメルが捕まる瞬間を遠目で見えたのか。
静けさが訪れる。
未だ暴れ狂うミウを除いて。
ミウの体を、がっしりと捕まえる。
捕まえたのは、ずっと押し黙っていたメイラだ。
「行くよ。助けに。」
「おー!!!」
丸いスライム状態に戻ったミウは、片手にフィットしている。
「ちょ、ちょっと待ってください!!助けにってどうするんですか!?下手したら犯罪者ですよ!?それに、時間が経てば戻ってくるんです。わざわざ無茶するなんて、アメルさんも望んでいることですか・・・?」
友を思っての制止。
助けてとは言われたが、殺されるわけではない。彼には犯罪者のレッテルはついてしまうが、いつも通りの友として、釈放後に支えればいい話だ。
しかし・・・
「行く。たとえその結果、犯罪者になったとしても。」
もう、心は戻れない場所まで来ている。
「やっぱり、私のリーダーはアメルしかいないから!」
ここを逃せば、全てが遅くなる気がして・・・
それでもメクは納得できるはずがない。何とかして彼女らを止める手段を考えるが、
「おいらに、任せろ・・・!!」
座り込んだ腰を持ち上げ、声を上げる。その顔には未だ不安はぬぐいないが、それでも勇気を。
「王にわがままを通す!!おいらが絶対に、お前らを犯罪者になんかさせやしない!!だから・・・」
「・・・ん。任せた!」
声が少しずつ濁りはしたが、メイラは迷わず任せた。そしてミウを握りしめ、監獄へ走る。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「ハークンが王に直接頼む!?・・・そういや、繋がりあるとかなんとか聞いたことあるような・・・・?」
たった一度だけ聞いたような情報。本当かどうかは知らないが、つまりは解決するということ?
「ん!だから・・・・逃げよ。」
「ますたー!!!!」
ミウが胸に飛び込んでくる。人型にはなったが、こう見るといつもと同じ、可愛いミウのままだ。
「なんだ・・・。せっかくここまで来たってのにお預けか?」
監獄方面からだ。ふと声のした方へ向くと、先ほどまで敵対していた騎士が中央に道を作るように整列している。
奥から人が二人。
紺を基調とした制服に身を纏う男性と女性。
「まぁ・・・、まだ外にいるってことは、範囲外だろ。」
そのうちの男は、腰に携えた剣を引き抜いて戦闘態勢を整えた。
「見たところ敵は三人。俺と"ルーテ"が一人ずつとして残りは・・・。"サブエス"、お前が行け。」
「え!?俺っすか!!?」
整列していた騎士の一人が指名され、二人の少し後ろからついていく。
どこの誰かは知らないが、戦闘準備を整えていることはわかる。
「・・・この国の王様から釈放されるって話だろ?戦ってもいいのかよ。」
「釈放するという話は来ているが、脱獄を許した覚えはねェ。牢獄の外にいるってんならそういうことだろ。一応戦りあっとかねぇと、こっちにもメンツってもんがあんだ。」
ちくしょう結局駄目じゃねぇか。こんなことになるならついていかなければ良かった。いっそジジイを差し出すか。
「ぶっ殺せ!!!」
「だからやめろやクソジジイ!!」
これ以上罪を重ねたら戻れなくなりそう。
「・・・あー。爺さん見えてなかった。・・・関係ねぇか。」
あぶねぇ。もう一人追加されるところだった。
そもそもなんで同数対決を望んでるんだ?数で攻めれば確実なはずなのに。・・・命令無視を指摘されたときの対策か何かか?
「冒険者パーティ、黒馬リーダー、アメル。」
「・・・ちゃんと知ってんのな。」
説明は受けているだろうし、身元が割れているのは当然か。
「俺は、第二騎士団長代理。ガンレット。」
一筋縄ではいかない雰囲気を感じる。目を盗んで逃げることはできなそうだ。
「脱獄犯捕縛のため、いざ果たせッ!!」




