表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メサイアマジック <あの時の君へ胸張れる転生を>  作者: 桜の宿
第二・五章 浅層の監獄 ~脱獄編~
60/65

二・五章二話 「現状」



 「駄目だ!!」



 「なんで!!」



 「金がないからだ!!」



 どこにでもあるファミレスの一席。呼び鈴の手前で一進一退の攻防をしているのは、金髪と黒桃髪の二人だ。テーブルにはすでに完食の痕跡を残した皿が並べられている。




 「な、悩みの種ができたと聞いたのですが・・・。」



 向かいの席に座るのは、前髪で両目が隠れている女性、メクだ。目の前には未だ完食しきっていないパスタが乗る皿がある。



 「仲良さそうじゃねーか。」



 その隣には、白馬獣人のハークン。すでに完食してしまった結果、暇している。




 「私を仲間にすればいい話!それと、ステーキ・・・!」



 「そんな簡単な話じゃないんだよ!!命張る仕事だ!それと、これ以上はウチの家計に響く・・・!」



 メイラが手を目いっぱい延ばすが、アメルはその呼び鈴を押されまいと距離を離す。



 「力なら証明した!拘束した紐を自力で破ったじゃん!・・・・今だミウ!」



 「力だけが全てじゃない!そんなポンポンと引きずり込んでいいような業種じゃないんだよ!・・・・あ、しまった。」



 先ほど椅子に縛り付けた紐は、内側からの圧迫で引きちぎれた。戦闘で役に立つとは言われ、それを実際に目にはしたが、同い年くらいの子を無責任に危険にさらすわけにはいかない。



 机に乗り上げたミウが呼び鈴を押す。突然人の体を持つと距離感がわからなくなる。それはそうと机に乗ってはいけない。




 「そ、そもそもなんですが、なぜ冒険者なんですか?アメルさんたちと一緒にいたいだけであれば、他の選択肢があると思うのですが。」



 メクが話を切り出す。攻防が収まり姿勢を正し、これに答えた。



 「冒険者じゃなきゃ駄目なの。なんでもいいわけじゃない。」



 呼び出された店員に、ミウとメイラは注文をする。暇してたハークンもそれに乗じて注文をして、質問を投げかける。



 「なにもD級(そいつら)じゃなくてもいいんじゃないのか?なんなら目の前にいるメクはC級だしな。」



 「それは・・・できない・・・・。」



 詳しい理由を言うのは厳しいのか、濁しつつ答える。



 「・・・・どんな理由だとしてもなぁ。」



 深掘りする意味はない。トウガやサリートも、人に言えない秘密を一つや二つどころか無数にありそうだからだ。そんなとこは重要ではない。



 「くっ・・・。こうなったら色仕掛けするしか・・・!」



 「絶対、公衆の面前ではやんなよ。」



 少しふくらみのある胸部分をはだけさせようとしたため、咄嗟に辞めさせる。冗談だとはわかっていてもひやひやする。




 「・・・じゃあ、こうしよう。」



 注文した特盛サラダが目の前に置かれたハークンは、とある一つの解決策を思いつく。



 いや、解決策とは言えない。




 「ミウを一番喜ばした方の言うことを聞く!!勝負だ!!」




 「お?」



 ステーキをむさぼっていたミウは、唐突に話の主軸にされたため追いつけてない。



 「は?いやそりゃ」



 「よし!!それがいい!!」



 こんな好都合な展開、メイラ側が放っておくわけがない。ノリノリで乗じてきた。







━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━







 「そ、それでは!!第一回、ミウちゃんを喜ばせ大会!!・・・スタートです!!」



 おそらく打ち切り待ったなしの大会が始まった。不正は行われないよう、外野の二人が審査員として付く。だが主な判定員はミウ本人だ。




 「お先どうぞ。」



 メイラが先攻を渡してきた。




 変な流れにはなったが、ぶっちゃけ言うとこの勝負は負けようがない。



 なぜなら人を喜ばせるというのは、情報戦だ。場所、雰囲気、その他もろもろ、全てが情報を持っているかどうかで決まる。



 そして俺は、この勝負において最高の情報を所持している。



 好みだ。



 俺は、ミウがなにを好んでいるかを知っている。



 メイラよ。自信満々に意気込んでいるところ悪いがこの勝負、先攻を握った時点で価値が確定したも同然だ。本当に悪いと思ってるよ。・・・なんで?別に俺悪くなくね?




 「一番最初の場所は・・・ここだァ!!」



 漫画喫茶。



 「おー!!」



 ミウは今まで俗世に触れてこなかったからか、漫画を一度も読んだことがなかった。それで漫画に夢中になったわけだが、どれくらい夢中かと言うとメクのBL本にも迷いなく手をかけるほど。漫画ならなんでもいいと思ってる節があるかもしれない。それが目の前に広がっているこの場所こそ、まさに正解だ。



 さぁ、ここで時間制限まで居座ってもいい。最低でも一時間は離れないだろうな。ウイニングロードを歩くとでもしますか。




 「ミウ~!これ面白そうだよ。一緒に読も!」



 「よもー!」



 今更頑張ったって意味などないだろう。必死になって楽しませようとしても、知識がものをいうこの勝負において決着は・・・・。




 違う!!




 まず前提をはき違えていた。場所なんてどうでもいい。判定するところはそこじゃない!




 ~私のために、場所を選んでくれてありがとう・・・!



 ~この勝負、行く場所は正直言ってどうでもいい。むしろ何が好きなのかもわからない現状だと、こちらが先攻になっても持て余すだけだ。



 ~判定するところは、"どれだけ喜ばせたか"!場所選びとかなんとかかんとか、デートの勝負とは話が違う。わざと先攻を渡すことで、場所決めから勝負が始まっていると勘違いしてくれた。




 「お。ここだ!」



 「よし。次行こっか。」



 しかも読んでるものが漫画じゃなくて、ミッケみたいな見つける系!?漫画喫茶ってそういう本あったっけ?持参してきた?



 「む。意外とわかんない。・・・お?」



 「ほれ。気休めのグミだ。これ好きだっただろ?」



 「ありがとー!」



 ~ほぉ?漫画喫茶まで来て食べ物で釣って来たか。しかし結局は優しいで終わる。ここからの勝負は、



 時間内にできるだけ本を持ってきて、できるだけ長い時間一緒に遊ぶこと・・・!!







━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━






 一時間後。



 「次こんなのど?」



 「意外と絵本にも面白いもんとかあるぞ!」



 「見せて見せてー!」




 二時間後。



 「謎解きとか持ってきたよ。」



 「お、いいじゃん。」



 「ナイスー!」




 三時間後。



 「あれ?ここどうやんの?」



 「・・・?え。ムズイ。」



 「・・・あ。わかった!」



 四時間後。



 ・・・・。




 「おい。おいメク。」



 「・・・あ、あれ。漫画読んじゃってました。」



 審査員が二人して空気に飲まれてしまい、勝負が長引いてしまった。久しぶりに様子を見てみると・・・。




 「・・・寝てんじゃん。」



 三人が肩を並べて眠りこけていた。たぶん途中から、勝負などどうでもよくなって楽しんでる。






━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━






 「つ、次は私の番!」



 寝てしまった・・・。



 結局ミウが勝敗を付けられないということで、延長戦にもつれこんだ。ということで、後攻が場所選び。



 なのだが。



 「女性の味方、化粧屋!」



 明らかにミウ向きではない。少し先行きが不安になってくる。



 店内に入ると、数多くの商品が奥までずらりと並んでいる。見たところどれも同じような見た目をしており、顔パックに似たものが売られている。



 「ここはお試しで使えるものばかりなの。」



 店を進むと試着室のような場所があり、一つ一つ区切られている。中には洗面台と鏡が置いてある。



 「・・・けしょう?」



 ミウには馴染みがなく、メイラに化粧の存在を聞く。お試し用のものを持ってきて説明した。



 「これを顔につけてはがすだけで、綺麗になるの!」



 顔パックのようなものを顔にはりつけ、数秒したらはがす。すると、あっという間にメイクアップが完了した。



 さすがのミウも相当驚いたようで、興味津々になる。



 転生前の世界と比べると、メイクアップにかかる時間が圧倒的だ。詳しいことは知らないが、ものの数秒で完了するような世界ではなかったはず。しかも同じような製品が大量に並んでいるため、商品の数だけメイクアップの種類があると考えると、とんでもない。




 気づいたらミウも色んなものを試して楽しんでる。マズイ。化粧なんてからっきしだぞ。終わった。






 入り口付近に、悪寒を感じる。




 「なぁんだぁ~?ロクな女がいねぇぞぉ~?」




 恰幅のいい男が一人、大きな声で入店してきた。すぐさま女性店員が対応に向かったが、数秒と持たず横になぎ倒されてしまう。



 「ここなら少しはマシな顔したやつがいると思ったんだがなぁ。」



 下卑た笑みで周りを見渡す。ものを見繕うかのようにじっくりと。



 店内を歩き回る。商品にぶつかってモノが落ちることなど一ミリも気にせず、女性の物色を続けている。



 まだ視界からは遠いものの、嫌な緊張感が流れる。



 周りからの目もまるで気にしない。どんな環境下であれば、こんな奴が育つのか。




 男の視界に映った。




 にやけた顔が、遠い視界の中でもはっきりと見える。




 それから周りには目もくれず、その重い足を確実に前へと進めてくる。視線の先は二人の女性。メイラとメクだ。もしかしたらミウも女性に見えているかもしれない。



 さすがにヤバい奴すぎると判断し、前へと出ようとする。



 しかし、男の視界には別の存在が映っていた。



 恐怖ゆえに店の外へ、そそくさと移動する女性の姿だ。




 「・・・斬れ。」



 ザンッ・・・!!




 いつの間にか入店していた一人の人に、女性は切り捨てられた。この場では、生死は不明。



 緊張感が何倍にも膨れ上がる。



 ただのヤバい奴ではない。さらに証拠として、次々と同じ姿をした人が入店してきていた。




 「ねぇ~。君可愛いねぇ。特別に僕の妻にしてあげるよぉ。」



 「やだ。」



 肝が据わっているのか、メイラは即答する。気づいたら、メイラは喋りが苦手なメクの前に立ちふさがっていた。




 「・・・・。まぁ、いいや。せっかくここまで来たんだし、なんか収穫がないとねぇ・・・。気が強い女は嫌いだけど、背に腹は代えられないかぁ・・・。」




 手が延びる。メイラの頭を目がけて、鷲掴みする勢いで手を延ばしてきた。




 我慢ができない。




 メイラはその拳を握りしめ、反撃の準備にかかる。幸い、後から入って来た人らは反撃の準備には気づいていない様子だ。




 髪に手が振れる寸前。




 メイラが拳を振りかぶった。狙うは顔面。紐をちぎるほどの力で殴れば、一般人の顔程度であればどうとでもなるだろう。




 パンッ・・・!




 メイラの手が止まる。当たるすんでで受け止められた。




 受け止めた相手は、アメルだ。




 驚愕(きょうがく)した顔に向けて視線を送る。




 何が起こっているのかわからない男は、それでも止まる気配はない。




 アメルは男をにらみつけ、思いきりその拳を振るった。




 ガアアアアアアァァン・・・!!




 男は店の壁に激突し、商品をなぎ倒した。




 「がぁ!!?僕が誰か知っての狼藉かぁ!!!と、捕えろぉ!!!この男を捕えろおおおぉォ!!!」




 十数人に取り押さえられる。抵抗する間もなく、店の外へ連行された。



 男は痛みに顔を抑えながら、従者であろう一人に肩を支えられ外へ出る。



 ミウが飛び出そうとするも、ハークンとメクに止められる。メイラはその驚愕の顔が変わらないまま、静かに行く末を見ていた。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ