おまけ two-four 「モーニングルーティン2」
「おーーーい。ミウ。起きろーーーー。」
ベッドで眠っていたはずのミウは、床に転げ落ちていた。ぷるぷるした体をゆすってみても、まるで起きる気配がしない。いつものことだ。
数回揺らしたところで諦め、ぬいぐるみ感覚で抱えていくことに決める。これもいつものこと。飯を平らげる頃には目覚めているため、もはや飯の匂いがモーニングコールだ。
少し前までは国から配られる飯を貰うために外へ出ていたが、最近になって宿の飯が再開した。並ばなくてもよくなったのはシンプルにありがたい。
「よぉ、兄ちゃん。今日も仕事かい。精が出るねぇ。」
気さくに話しかけてくれたのは、C級冒険者をやってる年上の先輩だ。
「そっちは今日も街の復興?」
「どうせこんな時間に起きちまうからなぁ。早起きで暇なC級はせこせこと復興作業してっから、お前らは気にせずいつも通り、困ってるやつ助けてやれや!」
心なしか気分が良いように感じる。D級の時の習慣ゆえに無駄に早起きしていたので、早起きする理由を見つけることができてうれしいのではないだろうか。
街を歩き、集合場所へ行く。意識が高いのか、早朝から準備に取り掛かる者がいる。ありがたい。
「むにゅ・・・。ますたー。おはよ。」
「おう、おはよ。おにぎり食うか?」
「ありがと!」
毎度のことながら宿の主人に頼み込んで持ってきたおにぎりを、起きたてのミウに食べさせる。食事が必要なのかもわからないが、本人もわかっていないため一応あげている。幸せそうに食べるから、餌感覚でつい。
待ち合わせ場所と言えど、ハチ公のような明確に目立つ建造物があるわけではない。小休憩ができるただのベンチ。そこにはすでに人が二人座っていた。
白髪緑肌の少年、トウガ。最近肌の色が薄くなった気がする。マフラーで顔の下を隠し、レッドブラウンの髪色をした少女、サリート。夏なのに暑くないのかな。
「おはよー。待った?」
「おう、一分も待った。」
「待つの許容範囲短すぎない?」
何気ない会話をしつつ、ギルドへ向けて出発する。二人で活動していた時は遅刻常習犯ゆえに受注できる依頼がないなんてことがざらにあったので、最近は余裕を持って行動している。
さすがに間に合うだろう。
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白馬の獣人ハークンは、なんとなく早起きしてしまっている。病室で一人、怪我が治るのを今か今かと待つ少年は、窓の外を眺めていた。
扉が開く音がした。
寝ている人を起こさないような慎重な音だったが、その気遣いは徒労に終わる。いつもの4人があいた扉の先に立っていた。
「お前ら、また来たのかよ。」
「暇だと思ってよ。暇つぶしできるもん買ってきたから・・・ほい。」
本が一冊、紙に包まれている。なんか妙に優しい気がする。
「・・・本当に買ったやつ?」
「・・・・そうだよ。」
「間があったな。」
薄く見える中身を見てみると、5等景品の文字がある。たまたま購入したくじが当たったのか。絶妙に変な運があるやつらだ。
「そういえばこの前病院ん中歩いてたら、ラキってやつ見かけてよ。一応声かけたんだが、だいぶ元気なかったぞ。大丈夫なのか?」
「・・・あぁ、徐々に回復する。大丈夫だ。」
回復する。しているとは言い切れないのが、問題の深刻さを物語っていた。希望的観測の話をするしかない。
「あ、そういやぁあのおっかねぇ女医が、焼きそば売れなさすぎって愚痴ってて・・・。」
気づいたころには、病室の窓から逃げ出そうとする4バカの姿があった。
「おいそんなことしたらもっと怒られるだけだろバカ!・・・・あぁ、行っちゃった。」
夏日の炎天下、窓を解放したことで生ぬるい風が部屋を駆け巡った。
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そこは、冒険者ギルドとは少し離れた位置にある場所。子どもが遊ぶ公園のように緑が溢れている墓地だ。
等間隔に並んだ墓石には一つ一つ名前が書いており、枯れ切った花が放置されている墓石から常に満開な花が添えてある墓石まで、様々な個性が見て取れる。
トッカの名が刻まれた墓石と、隣り合っているフィーオと刻まれた墓石それぞれに小さな花を添えた。
「俺らの金銭的にデカい花束ってのは無理だけどよ。」
小さな花程度なら、いくらでも添えてやれる。人はいつだって綺麗に見られたいからな。花一つあるだけでも違うだろう。
手を合わせて目をつむる。時間的にそこまで余裕はなくなっているため短めだが、許してくれるだろう。
目を開けて後ろを見ると、待ってたと言わんばかりに立っている三人の姿が。
「アメルは・・・丁寧だな。」
「んな堅苦しいことしなくたってあいつなら、心の片隅にでも覚えてくれればうれしい、とかキザなこと言ってきそうなもんだけどな!・・・実際そうだし。」
案外軽い感じでカルチャーショックを受けそう。
「しゅ、習慣付いちまってんだよ!・・・・こうしとかないと気が晴れなくてな。」
祭りの時も、知らない誰かが墓石に酒をかけて肩組む姿勢をしていたので、この街では大切なのは心だと言う人が多いのだろう。
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「よし!!こんだけありゃあ十分だろ!!」
ギルド掲示板での依頼争奪戦において、今日はそこそこの成果を出せた。素材収集や討伐など、一日にまとめて2つ以上こなせる依頼を重点的に集めた。効率的に金を稼ぐにはこれが一番良いのだ。
だが、当然例外が存在する。
「む・・・。素材元護衛をとってしまった。」
素材の元に一般人を護衛して連れていく。特に研究者等が出す依頼だが、素材採取と間違えてとることがしばしばある。
「・・・よし!手分けするか!!」
「ボクが行く!!」
「待て待て待て!ミウ一人で行ったら向こうが不安になるだろ!!」
護衛するのがスライムのみでは、依頼取り下げまったなしだ。この手の依頼では本来の強さ以上に見た目が信頼材料となる。
あれこれ方針を話し合っていると、知った顔を見つけた。ギルドの中を見渡すメクの姿だ。向こうから気づいたのか、こちらへ近寄ってくる。
「な、なかなか良いカッ・・・・。見たことのある顔だと思いましたが、案の定でした。おはようございます。」
「おはよ。なんか早くない?」
彼女はソロでC級であり、激戦区D級の依頼争奪戦のために早朝から来る意味など無い。
「そそそそうですかね?!依頼取りに来たんですよ別にめぼしいカップリング探しなんてしに来たわけではないです皆さんも頑張ってくださいさようなら!!」
C級の朝は遅くてもいいが、変人の朝は早い。
それから粗方の方針を決め、外へ駆り出す。
今日もまた、いつも通りの一日が始まった。




