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メサイアマジック <あの時の君へ胸張れる転生を>  作者: 桜の宿
第二章 南西の都市"エトカルディス" ~戦争編~
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おまけ two-three 「屋台で買うのは味じゃなくて雰囲気 後編」



 「サリートを男と見間違えたぁ?」



 「そ、そうなんです。」



 だから一方的にそそくさと目線を逸らしたりしていたのか。



 「別に気にすることはない。こいつも間違えてたしな。」



 「どうも"こいつ"です。」



 本人は隠しているつもりはないが、わざわざ性別を語る意味もタイミングもないため、たびたび見間違えられる。ちょっと慣れていた。




 「だが、助けて欲しいってのはどういうことだ?」



 土下座までして発したこの言葉は、謝らせてほしいの意味ではないことはわかる。なんらかの悩みがあるからこそ、これが出たのだ。



 その始まりが、サリートの性別見間違い。



 「は、はい。助けて欲しいんです。脳みそを。」



 「・・・?」



 「誰にでもあることだと思うのですが、私は毎日、脳内で色々なカップリングを妄想しているんです。」



 「ねぇよ。」



 悩みを聞く上での大前提が理解できない。この人の一般常識として、人はみな脳内ピンクらしい。



 「私が冒険者になったのも、男性同士で繰り広げられる様々なシチュエーションを、より近くで拝むためでした。」



 「今どんな気持ちで話してんの?」



 ギルドでは日々、依頼の受注や報酬の受取で人がごった返している。時折力が必要になってくる仕事柄、男女比で言えば男の方が多いのは確かだ。



 「天職でしたよ。屈強な前衛職からなよなよした魔法職まで十人十色。中がざわついており会話内容が聞けないのは難点ですが、脳内でいくらでも補完できます。」



 たぶん、この人がソロで活動しているのはそれに起因していそうだ。




 「いや、できていました。・・・・先日、あの事件が起きるまでは・・・。」



 性癖暴露タイムから一転して、ついに本題へたどり着いた。



 「私が、まさか性別を間違えるなんて・・・。」



 「・・・。」



 「それに気づいた日から、あの人は実は女性かもしれない、あの人は実は婚約しているかもしれない、あのパーティは実は仲が悪いのかもしれない、あの人は実は化け物が化けた姿かもしれない、と妄想中にどんどんと派生してしまって・・・。」



 「・・・。」



 「スランプに陥った私の脳みそを、どうか正常に戻してください!!」



 「正常になったじゃん。」



 世間一般の正常な脳みそは、道行く男性同士を繋げてカップリングしない。




 「サリートさんしっかりと確認したいのですが、本当にクール系の女の子なんですか!!?実は下についてるんじゃないんですか!!?いや、絶対についてます!!ついて!!」



 現実を受け入れられず下品な懇願をし始めた。おそらく、サリートの本当の性別はどうでもいい。自分が見間違えたという事実が受け入れられないのだ。



 「・・・こいつ別にクールでもなんでも・・・ごぁッ!?」



 「あぁ、よく言われる。」



 脳天にかかと落としを食らったトウガは、痛さゆえに床でのたうち回っている。事実証拠として何点か示され、駄々をこねたメクは信用せざるを得なくなる。



 落胆して座り込むメクの膝の上に、ミウが飛び込む。



 「だいじょぶだいじょぶ!本、面白かったよ!」



 漫画に夢中で話を聞いていなかったミウは、悩みがわからずあてずっぽうで褒める。



 「・・・これは・・・ショタ・・・?」



 「もう戻れないとこまで来てるよ?」



 声やしぐさで幼い部分は出ているけど、だからと言ってスライムをショタと感じ取るのは重症だ。一連の悩みは聞いたが、俺らにできることなんて一つもない気がしてきた。男の子に詳しい有識者がいれば、遠くからの見分け方とか教えられるのかな。





 「泥棒だーーー!!!」



 声の方向は俺らが来た方角。ざわついた祭りの最中でよく通る声なのもあって、不安が胸を突き抜けた。



 「・・・まさかな。・・・・いや、こんだけ屋台が出そろってんだ。まさかそんなことあるわけないよな。」



 「・・・一応行ってみるか。一応な。」







━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━







 「鮭さんと売り上げが、全部盗まれました!」



 顔がイカで手が触手になっている人、いわゆる魚人が焦りながら伝えてくれた。



 「・・・あの鮭って魚人だったの?」



 「いや・・・そうなのか?・・・・でも切り身だったぞ?」



 非常事態なのに別のことが気になってしまう。そもそもなぜ鮭の切り身が盗まれるんだ?



 「・・・あれ?売上っつったら、アメルの・・・。」



 焼きそばの売り上げは正直言ってそこまでではない。やばいけど。ただ、それ以上に原価0の変な商売での売り上げも入っていた。



 「・・・・。」



 状況を理解するのに数秒かかった。そうだ。盗られたのだ。




 「お”れ”の”カ”ネ”!!!」




 犯人の全力捜索が始まった。人で溢れている道を見渡しても、何の成果も見つからない。道行く人にも注目しているが、当然成果はない。



 怪しい奴と言えば、鼻の下で結んだ緑色の頭巾をかぶった男がいるくらいで。



 「おい、待て。」



 「あァ!?」



 こんなあからさまに泥棒な奴がいるか。決めつけるのも良くないが、焦っていたのもあってか声をかけてしまった。



 「お前ら、助けてくれィ!!」



 男が背負っていた風呂敷から、ボコボコにされた鮭の切り身が叫ぶ。



 「やっぱお前じゃねぇか!!」



 こんなあからさまに泥棒な奴がいるのか。正体がバレた泥棒は振りほどいて逃げる。そこら辺を走るだけで人混みに紛れてしまうので、とても面倒くさい。




 「さすがに・・・こんな人が溢れてりゃあ無理だな。」



 「状況証拠もある。許される余地はあるだろう。」



 早々にあきらめムードに突入している。単純に面倒くさいのと、売り上げを出せず叱られるよりかは泥棒が来て盗まれたからしょうがないね、で終わらすことができる方が大きいのだろう。鮭の存在は、もう頭の中から消えた。



 しかし、




 「お”れ”の”カ”ネ”!!!」




 こちらは多大な損失だ。最悪な祭りになってしまう。




 「・・・あ、あの。」



 後ろからついてきたメクが口を開く。



 「私に、任せてください・・・!」



 「・・・?」



 すると、俺らが捜索したように街中を歩きだす。周りを見回しているようで、方法に関してはまるっきり一緒だ。



 「・・・・。」



 「メク、あの服装から着替えられては目視での判断は不可能だぞ。」



 無理をしているように感じたサリートが止めようとするが、それでも諦めることはない。



 「・・・。・・・・」



 汗が流れている。相当な集中力を使っているのだろう。



 「俺らが謝れば済む話だ。メクが気負うことはない。」



 少し人の数が減って来た。屋台の数も少なく、祭りの中心地から外れてきているのがわかる。



 「・・・・・!あそこです!」



 指を指す方向には、先ほどの頭巾をかぶったあからさまな男はいない。祭りの中心地ではないとは言え、通常時よりかは人が多いためわからない。



 だが、それほど時間は経っていない。




 「うしっ!!・・・鮭えええぇェ!!!声だせえええェ!!塩につけるぞおおおぉぉォ!!!」



 「ぎゃああああああぁぁぁ!!!?水分があああああぁァァ!!?」



 「そこだァ!!」



 大きめの荷物を持つ男目がけて、祭りで手に入れた水風船を投げつける。男は目に見えて驚くも、水風船に反応できない。



 バッ!!



 顔面に直撃した水風船は、衝撃と共に破裂。気づかれないように忍んでいたトウガが、抵抗される前に押さえつけた。



 そして、安全が確保されたと確信した鮭の切り身は飛び出し、よろこびを表現しようとする。



 刹那、水風船から飛び出してきた謎の物体に、体を焼かれることとなる。




 塩だ。



 「ぎゃあああああああああぁぁぁぁああ!!!!?」




 こうして、金と平和は守られた。




 「・・・よ、よかったです。日々の妄想が実を結びました。」



 安心しきったメクが、疲れながらに声を出す。



 「道行く人すべてでカップリングを作っていました。まだ私は未熟なのでこれは賭けでしたが、明らかに不自然だったので・・・見つかってよかったです。」



 「狂ってるよ。十分。」



 このような人間離れした能力があるからこそ、冒険者のような仕事が適任なのか、と考える。諜報部隊とかも天職かもしれない。



 「・・・サリートさん。私はもう、迷いません。」



 前髪で目は見えないが、その顔はまるで遠くを見据えているかのよう。



 「あの時私は自分の体を動かせたはずなのに、よく考えもせず勝てないと決めつけて、知らない方に責任を放り投げてしまいました。」



 強い姿を見せた魔人の少女に、ハークンの救出をすべて丸投げしてしまった。あれから、人に頼んだから大丈夫だと、何もせず休んでいた。



 「今回の件もそうです。皆さんには縁のないような悩みを打ち明け、困らせてしまいました。」



 犯人特定を名乗り上げて清算しようとしたが、そんな考え自体が卑しい。



 「なので私は」



 「言っただろう。一つ一つのことに気負う必要はない。」



 話に割り込んで、中断させる。



 「あの場でメクが向かったとして状況が改善したかはわからないが・・・。少なくとも一人の命が消える可能性があった。」



 「・・・」



 「たとえ意味の通じない悩みだとしても、抱え続けれる姿を見るとこちらの気分が良くない。」



 「・・・。」



 「その時その時に、自分が信じた行動をとれ。その結果俺らを巻き込む形になろうとも、誰も心からの拒絶なんてしないだろう。」



 縁がないと決めつけても、実は何か知っているかもしれない。実は今の自分に合ったアドバイスがもらえるかもしれない。




 「そ、そんな優しい姿見せないでください。・・・好きになってしまいます。」



 今できる精一杯の冗談を交えて、この話を終わらそうとサリートの方へ振り返る。




 ドオオオオオオオォォォン・・・!!!!




 衝撃広がる花火のように、何かが咲いたような気がした。






 「おー・・・・。」



 一方、新しい知識を詰め込んだスライムが、察することを憶えた。









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