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メサイアマジック <あの時の君へ胸張れる転生を>  作者: 桜の宿
第二章 南西の都市"エトカルディス" ~戦争編~
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幕間2-2 「事件の後」



 そこはエトカルディスより数段大きい都市。立地は最悪で、なんでもない平地にぽつんと立っているが、文字通り何十年何百年と長い歴史がある。それの意味するところは、いかなる敵襲でさえ地形に頼ることなく、人のみで跳ねのけてきた最強の砦だということ。



 四大都市とは比べ物にならないほど人がごった返し、外も馬車などの行列が永遠と続いている。まさに大都会。




 さらに中央にそびえたつ巨大な建物がある。都市の内部構造は違えど、その一点は変わらず、その上何倍も大きい。そう、そここそが王城だ。




 鼠一匹入れさせない厳重な門から内部へ。道行く人々のすべては、世界の上位数パーセントと言ってもよいほどの重鎮。さらに奥へ進んだ先では、日々会議を行う専用の部屋があった。




 「今回の議題は、四大都市の一角であるエトカルディス。人族の象徴でもある都市の一つが、魔王軍からの攻撃を受けたことについてです。」




 一人の男が資料を片手に、着席している十数人へ向けて話し合いの始まりを告げる。



 「首謀者は"アテンドス"。元等級S冒険者、"希望の風"の構成員にして、数少ない"巨悪討ち"を果たした男。それが現在は"強欲の魔王ソティス"の幹部を名乗り、革命と称して都市の襲撃を決行しました。」



 手元の資料に目を落とせば二枚の写真が添付されている。一枚は本題とされている男の顔写真。もう一枚は、過去に英雄と称えられた男の顔写真。老いの変化は見られるが、大部分において一致している。



 「傘下として、イージア率いる"幻破(げんは)"、オールスト率いる"悪魔の使い"。そして・・・」



 一つめくった先には、事を起こした各集団の頭である二名の顔写真が載っている。問題はその下にあるもう一つの写真。



 「"厄咲き商人"、クスニク。」



 集団ではなく、たった一人の商人。しかしこの名は、一つの集団を率いる頭と同列に語るほどの脅威をはらんでいた。それどころか、



 「この二つは小さい集団ながらも世界各地で暴動を起こし、たびたび耳に入ってきていた。危険度は高いものの実力が抜きんでているわけではないため放置状態だったが、まさか徒党を組まれていたとは・・・。」



 「そんなことはどうでもいい!!問題はクスニクだ!!奴の損失を嘆く極悪人が今、世界中にどれほどいることか・・・!奴の遺体はどこにある!?」



 一人の男が誰の目にもわかるくらいの焦りを表し、報告をせかす。



 「今回の件、主要人物の中で死亡を確認されているのは首謀者のアテンドスただ一人。その他は現在、エトカルディスの監獄へ収監しました。」



 会場がざわつきはじめ、この状況を利用できるのではないか、同時に複数勢力から襲われては終わりだもっと慎重に、と今後の行動についての話し合いが起きる。



 人にとって最大の敵、魔王。罠を張ることでその一角が落ちる、という希望を見出した者。二人以上の魔王、またはそれに匹敵する勢力が現れてしまえば国の寿命を縮めるだけ、という絶望を見出した者と二分した。人によっては絶望が大きく、クスニクのみの解放を提案する声まで上がるほど。



 この一件で手に入れたものは、薬になるか毒になるか。



 「・・・。この資料はいつ作られたものだ?首謀者周りの情報がえらく詳細に書かれているな。とてもじゃないが一日でできるものではない。こんなものを作るより、一日でも早く我々に報告するべきではなかったのか?」



 一人が疑問を呈する。回答が報告者にゆだねられたが、うまく答えられないでいる。いや、答えられないのではなく、答えたくないかのような。




 扉が開いた。




 そこには一人の男と一つの檻。鼻が隠れるほどの長さで白と黒の混じった前髪の青年が、中で何かが暴れ狂う檻を引き連れている。



 「・・・"レカン"。何をしに・・・・。」



 行動の意味を問う最中、檻の中に目が行った。破損の一つもないが、盛大な音を響かせて檻の破壊を試みている。化け物や動物の類ではなく、人だ。



 「突然の入場で、驚かしてしまいましたかね。申し訳ございません。それと、その資料を制作したの僕なんですよ。事件前に作ったやつです。その証拠に事件当日から先の内容はスカスカでしょう?」



 人であることしかわからない。というのも、その者の抵抗が派手すぎて影でしか伝わらないのだ。衝撃を封じているゆえに風すら届かず、視界の情報以外が隔絶されている。



 「ここまで来るのに少々手間取ってしまいまして、到着が遅れました。・・・ですが!貴重な時間に引けを取らない、素晴らしい土産を手に入れました!・・・何か喋ること、ある?」



 檻の中に問いかける。



 その瞬間、爆風が部屋を覆いつくした。紙が吹き飛び、体制を保つので精一杯になるほどの勢いが会場を埋め尽くす。そして、暴れ狂う声が届く。




 「こんなことして、ただで済むと思うなよ!!?絶対にぶっ潰してやるッ!!!!師匠はお前らに危害など、一度として加えなかったぞ!!!お前らが破ったんだ!!!どうなっても覚悟が」



 「はい、終了~。」




 風も、音も、振動という振動が消えた。レカンは会場にいる人々へ向き直り、本題に移る。




 「彼女はかの名門、リビューテシアが残した義娘。リエン・リビューテシア。・・・・もう、目に見える脅威を恐れ続ける暮らしなど、辞めませんか?」



 話す本人を除き、息をのむ。



 「魔王の一角を落とす?・・・理想が低すぎやしませんか?」



 檻で今もなお、暴れ続ける。



 「魔王と共に・・・。彼女ら魔人が統治する国、第一界面を墜とす・・・!!時代を変える算段はもう、ついていますので。」







━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━







 監獄の中、一際隔離された場所に男はいる。他のどの犯罪者が逃げようとも、彼だけは逃がさない。それほど強固な牢獄に、男はいる。




 「随分と、見苦しい姿になったではないか。クスニク。」



 女性が男に声をかける。黒の長髪から角を二本生やし、一本は半ばから折れている魔人の女性。



 「俺をからかいにでも来たか、"エトシア"。・・・それとも、殺しに来たか?」



 不快な感情を一切隠さず、睨みつける男。怯む様子など微塵も見せず話を続ける。



 「あぁ、そうだ。・・・・からかいに来た。」



 いっそう不快を募らせるも、牢獄の中では逃げることはおろか、攻撃して追い返すこともできない。誰かに見つかりでもすれば、さらに守りが強固となる。




 「当然だろう?まさか貴様が年端もいかない少年に討たれたとあっては、からかいたくもなる。」



 「チッ・・!あの金髪の餓鬼、お前のまわしもんだろ・・・!?考えうる限り最悪の立ち回りをされたよ、お前の勝ちだ。」



 「私は何の指示も出していない。貴様の起こしたミスの責任を、私に押し付けるな。」



 自覚はあったのか、再度舌打ちをする。彼は何かの陰謀によって計画を阻止されたのではない。予測外の事態に対応できなかった、自分の不手際に負けたのだ。




 「ここに人が来るのも時間の問題なのでな。聞かせてもらう。」



 本当にただからかいに来ただけではない。わざわざ足を運んだ理由がある。



 「"シャドウを、どこへやった?"」



 「・・・・。」



 無言を貫く。それは果たして無知か拒否か。表情からそれを察するには相手が悪いが、早々に判断をつけたエトシアは一歩引く。



 「・・・そうか、知らないか。困ったものだな。」



 「・・・相変わらず生意気な。それこそ貴様のまわしもんにでも直接聞けばいいだろう。」



 「その必要はない。」



 そう言い放つと、エトシアとは反対の奥の壁に寄り掛かっていたクスニクが引き寄せられ、檻越しで掴まれる。



 男は驚きすら見せず、彼女の判断に身をゆだねている。生かすも殺すも、すべては自由。




 「さぁ、どうしてやろうか。」




 闇に紛れた二人の会合は、誰の目にも映らない。



 







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