幕間2-1 「欲しいものは声を大にして言おう」
「これにて、パーティ名"ダークホース"で登録されました。新たなダークホースとして頑張ってくださいね!」
「・・・・はい。」
悪気がないのはわかるが、なんか釈然としない。
あいつらちょっと離れた席で笑いやがってこの野郎。一昨日ツッコミまくったことでも根に持ってんのか?確かに頭にはよぎったよ。ダークホースのダークホースになっちゃうなって。でもすでに啖呵切った後だったから変えるに変えられなくて。
「パーティを組む方がいましたら、登録のため連れてきてもらえますか?」
お、来た!俺一人が恥を背負い込む必要などない。そう!俺らは今日から仲間なのだから!
「無関係です。」
「関係しかねぇだろうが!!言っとくけどなぁ・・・!"トサア"よりマシだぞこのセンスなし!!」
同じ類の、バカにできる内容があるのにのんきなもんだ。そっちがいじるならいじってやる。
「やめてください。公共の場で迷惑ですよ。」
「普段そんな敬語使わねぇだろ!!気持ち悪ぃ!!登録!!する!!こっち!!来い!!」
そんな真顔でよくも言えたもんだ。サリートはともかくなんでミウまで流れに乗ってんだよ。いいから!変な場所で空気読まなくていいから!!
もう面倒だから俺がなんとかしてみよう。
「えっと」
「俺はトウガだ。職業は剣士。先日までソロで活動していたD級冒険者だ。」
「はやっ!?じゃあさっさとこいや!!」
先ほどまでの会話がなかったかのように真面目に話しやがって。戦闘中でもあの距離を一瞬で詰めたことないだろ。
「俺はサリート。職業は・・・斥候だ。同じくD級冒険者。」
顔半分を隠している少年。いや、少女が淡々と話した。一昨日初対面で性別を間違っちゃったからいつか謝ろう。
「ミウ!魔法がいっぱい使えるよ!!初めて冒険者になる!!」
受付に見えるように、台によじ登っているかわいい。こう言えば失礼だけどパーティのマスコットだね。しかも強い。
「私はシュガードよ。職業はガンナーで、このギルドの長をしているわ。」
そうそう。とんでもなくガタイが良い彼女の存在を忘れてはならない。頼れる背中に加えて年長者としての威厳で、助けられた窮地は数知れず。
「誰だよ!!?」
よくその巨体でちゃっかり居れたな!?気づかない俺が異常だった?受付の子も全然動揺してないし。日常茶飯事なの?
「あなたは初めましてね。改めて、わたしがこの冒険者ギルドのギルド長、シュガードよ。」
俺以外は対面済みなのか。冒険者として活動していれば、トップの顔は一度くらい見れそうだからあまり不思議ではない。・・・たぶんミウは初対面。
ただそれ以上に気になるのは、なぜそんな上の方が話しかけてきたのか。
「登録が終わりそうだったから声をかけたのよ。お礼でも、と思ってね。」
「・・・お礼?」
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なし崩し的にギルド長の部屋へと案内された。よくある仕事部屋の雰囲気があり、ソファーに座らされる。
「まずは、情報提供をしてくれたこと。こちらとしても事前に準備ができたし、王も早めに騎士団長へ報告してくれたから、あなたたちが思う以上に助かった命は多いわ。私が代表として、お礼をさせてもらうわ。ありがとう。」
その真摯な姿から、深い感謝をうかがえる。二人が報せてくれたのか。あの時のヘイト稼ぎが役に立ってよかったぜ。まぁまぁ、そんな褒めんなよ!死ぬ気でやった成果ってもんよ!本当に死ぬかと思ったんだから。・・・王にまで会ったの?
「そして、今回の件で真っ先に協力してくれていた"二人"だけど。」
二人?あずかり知らぬ場で何かが起こっていたらしい。俺がちょうど敵に捕まっていた間か。トウガとサリートの顔に真剣みが増した。
「・・・無事よ。ハークンちゃんもメクちゃんも、今は他の負傷者と共に治療にあたっているわ。ただ、容体はよくないわね。ハークンちゃんはボロボロの体に追い打ちが重なって重症。メクちゃんは、何かに囚われたようにうなされているわ。理由は不明。」
無事という言葉でサリートの顔が緩まった。回復ではないものの、安全は保障されたらしい。それでも、トウガの顔は晴れない。
「・・・じじいは。ケッテツはどうなった?」
またしても知らぬ名だ。一か月滞在したとはいえ、知り合いは多くない。都市を守るために奔走した者は、想像以上にいる。
「・・・。・・・無事よ。こんなこと言えばあれだけど、国としては彼を失うわけにいかないの。たとえ死んだとして、国有数の医師が意地でも生き返らせるわ。」
そして想像以上にとんでもない人物だった。国が生き返らせる?そんなの立場が最上の人へあてた表現じゃないのか?コネクションが良いなんてレベルじゃない。
「・・・今なら意識くらいはあると思うけど。・・・会う?」
「・・・いや、いい。」
空気が最悪になっている。会うのを拒否する事情があるのだろう。深くは追及できないし、ギルド長からもされない。
「・・・ラキはどうだ?」
「・・・・・。分かっているんじゃない?聞かなくても。痛々しい彼女の顔は、もう見ていられないわよ。」
「そうか。・・・悪ぃ。」
空気が最悪になっている。おそらく生死を確かめるために質問したのだろうが、聞き方が間違っていたらしい。膝に乗っているミウが、最初は見渡すように小さく動いていたのになんの動きもなくなっている。
「・・・えっと。一つだけ聞いていいか?」
空気を変える内容ではないが、知識通がいれば聞きたかった内容だ。誰も口を開きそうもなかったため、今聞くことにする。
「ヴィクラネオっていう魔人は、この都市に滞在しているのか?・・・あと、リエンか。」
別に知らなくてもいいことだ。邪縁の森で事を交えたとはいえ、あくどいことをしている印象はないし、何なら手伝ってくれたお礼を言いたくて聞いてみた。エトシアがあいつらのボスを殺しちまったから、向こうとしては会いたくないかもしれないが。
「・・・聞いたことがないわね。姓はわかる?」
「えっと。リビューテシア、だっけか。」
名前で憶えていたため、ぱっと浮かんでこない。名前に連結して自然と浮かぶ。単体で思いだせと言われれば出てこない。
「・・・・。・・・いや、知らないわね。」
「そう、か。」
まぁ、別にいいけど。わざわざ探すまでもない。よく考えたらいくら悪人じゃないとしても、俺は殺されかけたし。はち合うのも怖いし、逆にいなくてよかった。
「悪いのだけど、お礼はもう少し後でもいいかしら。街の復興の件で忙しいのよ。その分盛ることを約束するから。ね?」
・・・お礼くれるの?
「それで、何が良い?」
「名誉」 「力」 「金」 「食べ物!」
「強欲ね。良いことよ。」
各々が欲しいものを挙げたが、抽象的すぎたか。あんまり多くても分散してしまいそうだから、一つに絞った方が良いか。
「具体性がないし、欲しいものがあれば選ぶ形にしようかしら。金品ももちろん、ね。・・・ただ、名誉はやめた方が良いかもしれないわね。」
「やめた方が良い?」
真っ先に反応したのは名誉と言った人物。俺です。違うんだよ?名誉があれば地位も得られて、他の欲しいものも手に入るじゃん。合理的なの。それはそれとして自分が醜いな。
「あなたたちがやったことは、私が一番知っている。革命軍の奇襲情報報告、いち早く前線での防衛、そして、"一級犯罪者クスニク"を始めとした革命軍幹部の掃討。」
「一級犯罪者・・・?あと、なんで知って・・・。」
戦闘中に周りに人がいる感じはしなかった。俺らが疲れてぶっ倒れた後はミウが運んでくれて、その間誰とも会ってないって言うし。
「私が後処理をしたのよ。隠そうとしない限り、痕跡の一つや二つはすぐ見つかるわ。」
縛り付けるのを忘れて離脱してしまったから、逃げてしまう可能性を危惧したんだが、余計な心配だったようだ。まぁ、誰かにばらされても何の問題もない。むしろ犯罪者捕まえたってことで良いことだと思う。
「・・・事の重大さがわかっていないわね。クスニクという人物は、複数の魔王とつながりを持つ、"闇の地雷原"と名高い極悪人よ。」
「・・・え?」
じゃあ、世界中の七大魔王に狙われるってこと・・・?




