二章二十六話 「受け売りの信念」
ーーー「仮初でも、"それ"だけは持っておくでござるよ。たとえ溺れていても、そういう漢は格好良く見えたものだ。」
師の背中が大きく映る。それを語る本人はどうだったのか。仮初でも、信念をもって生きてきたのだろうか。
ここは人目もつかないような片田舎。見渡せば田畑が広がり、道行く人の数も数えるほど。のどかだけが売りの村である。散らばる建物の中でも一回り大きいものがあった。看板があるわけでもないが、そこは村民にとって当たり前のように利用されている道場。
そしてこの時間。男児を中心とした村の子どもらが、ある男による剣の指導を受けていた。
「"ヘイゴウ先生"!!」
ヘイゴウと呼ばれるその男は、着物姿に一振りの剣を携え、頭部は銀杏髷というここらでは珍しい格好をしていた。本人は東の方では普通と言い張るが、ある人が言うには今時いないとのこと。確かめるすべを持たないため、確認のしようがない。いや、そこはもはやどうでもいい。
「みな、筋が良いでござるな!!だがその程度ではどんな魔物にも勝てんぞ。慢心はしないようにな!」
二十にも満たない子どもらは、竹刀を手に持ち汗を流していた。見た目にたがわず剣の実力があるその男は、門下生でもある子どもに支持されている。
だが、ある人物はその対極にいた。
「はいみんなお疲れ様ね!じゃあさっさと準備する!!お勉強の時間だよ!!」
別室から現れた女性は、その手を叩いて気持ちの切り替えを促してきた。奥から机と書物を用意する姿に、一部があからさまな難色を示す。
「ほれほれ!体だけ鍛えても意味ないと、何度も言っているでござろう!話を聞くだけだ、なんも難しいことはない!」
ただ話を聞くだけであればその通りだ。だが、皆が難色を示すのにももちろん訳がある。今日がその日であるからだ。
「そう!ちゃ~んと聞いてれば解けるからね。今日のテストは!」
解けなければ、しばらく剣の練習が無しまたは居残り勉強。楽しみが一つ消えるか恥ずかしい公開処刑が行われるのだ。当然、僕も嫌だ。
「なんて顔してるんですか、トッカ。」
「・・・フィーオ。」
テンションガタ落ち状態に話しかけてきたのは、丁度この場所に来た同い年の女の子。剣の鍛錬には一切来ないが、勉強の時間になると決まってやってくる。しかしそれは珍しいことではなく、ちらほらと人が来ている。勉強嫌いの自分にとって、理解できない事象であった。
「簡単な問題しか出ないんですよ。どうせ身構えても意味ないです。」
「自信がないんだよ。・・・あれ?何cmが1mだっけ・・・。60だっけ。」
「それは時間ですよ。100です100。・・・大丈夫ですか?」
簡単な方の算数でこれだ。今回は盛大にこけそうで危ない。
そんな日々が繰り返される片田舎。今思うと、心身を磨いてくれる大人がいるという事実が恵まれていた。
日常の中の一片。フィーオと二人で村を歩き回っていたあの日。
一人の赤ん坊を見つけた。場所は道場のとある一室。大きめの籠にふかふかの毛布で包まれ、それはそれは大事に扱われているであろう赤ん坊。
「・・・先生、子どもいたのか。」
「そんな素振り、全然見せませんでしたよ?こんな大事、さすがの私たちでもわかると思いますけど・・・。」
ふと籠に書いてある一つの文字列に目が行った。ロゴや製作者名の感じもせず、装飾のようにとってつけられたもの。
そこには"バスメル"と、書かれていた。
子どもの名前だろうか。まだ頭髪も薄く、すやすやと寝息を立てているその赤子は、自然とこちらの視線を奪う。いつまでも見ていられるかのような、そんな時間が長く続く。
「その子はな、拙者の友人からしばらく預かって欲しいと頼まれたのだ。全く、子の成長は早いと言うが、傍から見れば友の成長も十分早く感じる。」
「「先生!!?」」
何の気配も感じさせず話しかけられたため、怒られた感覚に近くなる。だがしっかり思い返し、やっと自分らは何も悪いことはしてないと気づいた。
「じゃあ、この子は先生の子じゃないんですか!?」
「まさか!!もし子どもがいたら、お前らは拙者の自慢話に耳が痛くなっているはずでござろう。」
「自慢で耳が痛く・・・?」
変な言葉に引っ掛かって、無駄に反芻する。特別な意味なんてない。
「昔、拙者が冒険者という職に就いていた頃でな。冒険者とは自ら仕事を探して、いつ命を落とすかわからぬような危険な仕事でござる。一日に菓子パン一つしか食えぬ日もあったわ!!はっはっは!懐かしいなぁ!」
「えぇ・・・。なんでそんな仕事やってたんですか?」
フィーオが、自分には無理と言葉を繋げそうな勢いで聞く。
「仕事が自由ということは、好きに金を稼げるということ。この肩書があると一部の場所で融通が利いてな。宝を引き当てた時の爽快感ったらないんでござるよ!・・・まぁ、端的に言えばギャンブルだな。」
「全然理由がわからなかったのですが。」
「わかる者にしかわからんよ!」
自然と隠してしまったが、心の中で何かが湧きあがっていた。それは未知に対する興味なのか。きっとそうではない。
「ひたすら夢に向かって走る!そういうバカみたいな仕事でござる!!」
普段の先生も決して暗いわけではないが、目に見えてわかる明るさ。大の大人からワクワクが伝わってくる。ドキドキが伝わってくる。
「奴ももう、とうの昔に安泰な職に就いたがな。だがなんやかんや言いつつ、人生で一二を争うほど愉快な思い出でござるよ。」
憧れるようなかっこいい話ではない。それでも、師の姿は輝いて見えた。その思い出が輝いて見えた。
そうか。あの頃から僕は・・・。
「ぅう”、ひぐっ!ぁうううぅ・・・!!」
籠の中で寝かされていた赤ん坊が、今にも泣きそうな声で唸り始めた。意気揚々と語っていた先生は、慌てた様子でなだめる。
「おぉおぉ。蚊帳の外にしてしまって申し訳なかったなぁ!よしよし!・・・・・いないいなぁい・・・。ござる!!」
赤ん坊、バスメルくんが徐々に泣き止んだと思いきや、その小さな手を天へ挙げる。正確には真っすぐと天に掲げているわけではなく、それは自分に向けられているかのような・・・。
無垢で柔らかい手のひらを握ろうと、できる限り優しい速度で近づく。丁寧に、丁寧に包もうとする。
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掴みかかる手のひらを握り返し、紅の生えた頭に頭突きをお見舞いする。
「ぐ・・・!ぁっ!?」
頭蓋に響く振動により怯んだトッカに、すかさず打撃を加えようと構えた。が、炎の壁がそれを拒む。せめて一撃を与えようと、こちらも負けじと雷魔法を放ったが手ごたえがない。威力的にも溜めなしであれば弱い。手ごたえがあったとしても大した一手ではなかっただろう。
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咄嗟に道場から飛び出した。湧き出る思考を懸命に消そうと、無我夢中で走る。
なぜだ?なぜ僕は、目の前の赤ん坊に殺意を抱いたのだ?伸ばしてくる手に恐怖を覚えた。疑念を覚えた。その時の自分の視線は、確実に赤ん坊を捉えてなどいなかった。命ともいうべき心臓から、生命としてつながる喉元へ。
そこへ手を伸ばしかけていた。
ふと周りを見渡すと、人が一人とていない。いくら人口の少ない田舎だとしても、外に出て周りを見れば走り回る子や老人の姿があるものなのに。その不自然な感覚は、まるで夢の中のような・・・。
・・・そうだ。夢の中だ。
僕が僕へ警鐘を鳴らしているのだ。目の前の少年を殺してはいけないと。
彼は友達である以上に、自分の人生において大きな存在である師が大切に抱えた赤ん坊だ。止めなければ。己が信じる正義を持って。自分の信念は、自分しか守れない。
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全力の蹴りが入った。トッカの吹き飛ぶ方向に土煙が舞い上がり、その姿を消す。しかし、チームのタンク的役割をこなしていた人物相手にこれで勝ったとは到底思えない。追撃を狙おうとするが、
「・・・っ!?・・ハぁ・・・ハァ・・・!」
体にガタがきていた。捕縛された昨日からロクに休憩をとらず、身体強化魔法を連発して使用している。身体機能を一時的に底上げするこの魔法が、体に良いわけがない。
怯んだ隙に煙の中から大剣を構えた男の姿が。
今まで見たどの炎よりも勢いを増し、熱さに耐えきれないトッカの体は真っすぐ立つためのバランスを保つのに精一杯だ。正真正銘、捨て身の火力。
それでも、これまで培った身体能力は彼を裏切らない。燃え盛る剣を斜め上段に構えてこちらとの距離を一瞬にして詰めた。
「火剣 ・ 原動」
食らえばひとたまりもない。阻止しなければ。大技ゆえに隙が大きいことに賭け、再度全力の攻撃を真っ先にお見舞いしてやろう。タイミングは、近づいて来た今しかない。
ゴオオォォッッ・・!!!
「!!?」
予想よりも大分手前で剣を振り切った。体に当たらないくらいの前方。違和感に気づいて攻撃を止めたが、もし先走っていれば自分から直撃していたかもしれない。
だがなぜ、わざわざ当ててこなかった。
「逃げろ・・・!!バスメル!!!」
重々しく開いた口から、悲痛な声が漏れた。それを耳にして動くことはできず。
メ”キッッ・・・!!!
振り下ろした位置から大剣が飛び込み、胴体に直撃する。初めから二段目を想定した動きだったのだ。血を浴びて切れ味の落ちていた大剣は、鈍器になり果てている。
力任せに振るわれた結果、体がないまぜになりながら遠方へと吹き飛ばされた。
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殺しちゃだめだ殺しちゃだめだ。心ではわかっていても体が拒否する。自分が一番、彼を殺してはいけないはずなのに。
またしても道場へ戻り、一人残されている赤ん坊が視界に映ってしまった。
その子は必死に手を伸ばす。
僕の視界には、既にその子は映っていない。
僕が守らなければならないのに。僕が守るしかないのに。
一歩一歩近づいていく。
「逃げて・・・!バスメル・・・!!」
赤ん坊には無理な話だ。僕はその手で、芽を・・・。
「よく見るでござる。」
背後から聞きなれた声が聞こえた。先生の声だ。
「今、お前の視界には、バスメルなどおらん。」
先生は何を言っている?もしそこにいるのなら、無理やりにでも止めて欲しい。このままでは殺してしまいそうだ。大切な思い出を。自分の信念までも。
「目を凝らして見てみろ。過去を、現在を。」
彼はあの頃の赤ん坊、バスメルに違いない。それほど濃い思い出でなくともわかるのだ。あぁ、手が届いてしまう。
「ならば今一度、思い出に聞くがいい。目の前にいるのは、本当にただの無力な赤ん坊か?残酷な現実か?」
言われなくとも何度も思い出に聞いている。道場に眠っていた可愛らしい子どもで、先生が大切にしていた友の子で。
当時は気づかなかったが、突如として後輩として現れ、素直に説明を聞くような子で。
友と共に街中を走り回るほど騒がしくて、気まぐれだと言いつつ毎回人助けをする人で。
僕の気のいい、友でいてくれて・・・。
「今一度、信念に聞くがいい。」
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吹き飛ばされた少年がよろよろと立ち上がる。もはやそれだけでやっとな彼は、これが最後の一撃だと言わんばかりに片方の腕を引き絞った。
「火剣 ・ 原動!!」
今一度剣に炎を纏わせ、距離を詰める。そこそこ大きく吹き飛ばしたため、少し時間がかかった。その間に彼の手には小さく、確実に雷が溜められている。
ゴオオオオォォッ・・・!!
一撃目は騙し。先走って自ら当たりに来るならばそれでいい。リーチの長い大剣の、ベストな位置を保つ。二度目の技なので、これを知っている少年は微動だにしない。
持つ手が痛い。芯まで焼ける熱さに二度侵され、体は限界に近い。
それでもありったけの力を込めて振り切る。これが捨て身の奥義。切れ味はなくとも、打撃で仕留める。
・・・・・。
・・・・?
なぜ動かない。なぜ届かない。後は横に薙ぐだけだ。それで勝つはず。このままでは・・・。
溜が終わった少年は、真っすぐこちらを見据える。やめろ。その悲痛な顔は、勝者にふさわしくない。勝者は常に笑顔を向けていればいいんだ。勝ったぞと、表情で自慢しろ。でないと俺は、さらに惨めな敗北者ではないか。
口が独りでに動く。死してなお、抗ってくる。
「やれ!アメル・・・!!」
違う。敗北者は笑顔なんか見せてはならない。ふざけるな。
少年が、魔法を放つ。威力は先ほどよりも落ちるが、それは確実に、勝ちへとつながる一撃。
「シャクティ!!!」
雷が敵を貫く槍となり、胴体に強い衝撃をもたらす。なかなか貫かない体は、しかし衝撃には耐えきれず、抗えば抗うほど力の方向へ押されていく。
ゴオオオオオォォォ・・・ン!!
逆らうこと敵わず防壁に激突。体が完全に、機能を停止した。
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道場の壁にもたれかかる。夢の中でもわかるほど、体が疲弊している。もって少しの命をここで過ごせることは、不幸中の幸いだろう。
「だけど、まだやるべきことがあるな。」
師が腰にぶら下げていた刀を、自らの影に向かって差し込む。もはや残っているかも怪しい、最後の力を振り絞って。
「うぐ・・・ぁ!?貴様・・・!!何をする!?」
離れようとする影を、力の限り縫い留める。
「君の力は十分理解したよ。シャドウ。死体に乗り移り、その者の力を自分のものにする。限度があって本人以上には至らないが、十分危険な能力だ。ここで止めさせてもらうよ。」
「そんなことして何になる!?どうせ持って数十秒だ!ここは嫌でも死体が目につく戦場!!その程度の時間稼ぎなど誤差でしかない!!」
いつ解放されてもいいように、シャドウも力の限り脱出を試みる。
「ああそうだ。いくら時間を稼いでも、君には無意味だろうな。・・・だけど、僕には友がいる・・・!」
「友・・・?奴らのことか?いるからどうなる?」
「どうなるかはわからない。それでも、信じる。」
無鉄砲な、行き当たりばったりな計画。拍子抜けな言葉を聞き、抵抗するのが馬鹿らしくなったシャドウは、解放されるまで力を抜くことにした。
「とんだギャンブル好きだな。」
「あぁ、僕は子どものころから、生粋のギャンブル好きさ。だからこそ師に、冒険者に憧れたんだ。そして人生の最後に、僕は僕の信念を、彼らに賭ける・・・!!」
長いようで短いような、不思議な時間が過ぎた。トッカは顔中汗まみれで、今にも瞼が落ちてしまいそうな状況。
「・・・もうそろそろか。お疲れだったな。」
返事も返せず、飛び立つ影を見送る。この数十秒が、これが自分の人生の集大成だ。
「あなたの人生は、あなたはまだ、そんなものではないはずですよ。」
刀の指す先に、杖が一つ突き立てられる。完全に油断していたシャドウは、またしても動きを封じられて怒りが溜まった。
「ふざけやがって・・・!!無意味ってのがわかんないのか!!?」
そこには見慣れた女性がいた。青い長髪で、長い間パーティとして旅をした仲間。
「フィーオ・・・!」
「罪な男ですよホント。仲間を、ラキを置いてったあげく、私のことを忘れるなんて。」
近くで腰掛け、ともにシャドウを足止めする。無駄だとわかっていても、動けないもどかしさがシャドウを抵抗させる。
今の最重要の目的なはずなのに、もう、視界に映っていない。残りの猶予数分に何とも言えない感情が湧きあがってくる。
「全く、冗談じゃないですよ。育つところも死するところも、あなたと同じ場所同じ時間だなんて。」
「はは・・・。守り切れなくて悪かった。」
言葉と裏腹に、嫌な感情が伝わってこない。とっくに体の限界が来ているはずなのに、今がすごく心地いい。
「・・・あなたのせいですよ。あなたのせいで、私は冒険者になりました。賭け事だって嫌ではなくなってしまいましたし、こうして命を張るようになりました。あなたのせいです。」
「そうだね。でも、君のおかげで僕は毎日が楽しかったよ。」
思い返せば、師との思い出よりもフィーオやラキと過ごした思い出が一番心に残っている。時間もそうだ。
「・・・先に言わないでください。」
「え?」
疲労が溜まって顔に汗がにじみ出てきたフィーオは、その顔をムスッとさせる。すぐに呆れたような、優しい顔に戻って・・・。
「トッカ。あなたのおかげで、私は幸せでした。ありがとう。」
サブ連載 < 魔人っ子の平和(?)な散歩道 >
三十三話 「魔人っ子の小さめ(?)なプライド」
「ほれ。ここが南西の都市、エトカルディスだ。」
馬車から降りたら、ところどころボロボロの街。こんなだったっけ。
「・・・最近、大規模な襲撃があってな。なんでも首謀者は誰もが恐れる魔王軍の幹部。そのせいで騎士の仕事が増えちまったよ。」
なんとなく聞いたことある。ニュースに疎いから状況までは知らなかった。
「じゃあここまでだ。これからも、騎士に捕まるような行動はするなよ。」
真っ当な注意された。
「お姉さんも、上司に捕まらないでね。」
「上司にまで同じ態度とってるわけないだろ!?素は隠すわ!!」
よかった安心。
「・・・あんたは、もし夜にしか逃げ道がないとしたら、どうする?」
「・・・・。」
「・・・悪かったな。ほれさっさと」
「泣きつくよ。誰かに。」
「・・・・。そうとも行かないだろう。誰しもプライドってもんがある。泣きついて終わるほど簡単な話じゃない。」
「それでもそうするしかないなら、私は泣きつく。無理やり好きな居場所見つけて、好きなように生きる。だから・・・。」
私の悩みも、耐えきれなくなったら誰かに話す。誰かに泣きつく。そう・・・。
「お金ください!!」
このように!!
「まだたかる気かお前!!?ここまで送ってやっただろう!?」
「だってーー!この馬車、移動早いんだもん!!行く先々で名産品買ってったらもうすっからかんなんだよ!!責任とりなさいよ!!」
「責任なんてない!!痴情のもつれみたいなお願いの仕方するな!!プライドはないのか!?お前に聞いたこちらが馬鹿だった!!離せ!!」
「離さない!!一食分でいいから!!二食分でもいい!!なんなら三食分でいいから!!」
「増やすな!!徐々に妥協しろ!!」
絶対に引き剝がされない!!・・・意外と力強い。
「金が欲しいなら冒険者ギルドでも行け!!あそこなら一般向けに日雇いの雑用がある!今日の分の食費だけ欲しいならそれで十分だろう!!」
ほう。良い情報が手に入った。確かに今日だけだし、まだ日が出てるし、大丈夫そう。
「まったく、油断も隙もありゃしない。」
「ご迷惑を。」
それじゃあここでお別れだ。
「・・・あの子のこと、できれば」
「安心しろ。痛い目には遭わせない。」
「よかった。」
多分、友達が欲しいのかもしれない。誰かに泣きつきたいのかもしれない。まぁ、もう裏切られちゃったし、その相手が私じゃなかったってことで。後はお任せ。
「バイバイ!」
「あぁ。二度と会わないことを願うよ。」




