二章十三話 「混沌として」
「まず・・・一匹目ぇ!!」
バキィ!!
白い長髪を揺らして、長くはない足を振り切る少年には遠慮という文字はなく、直接脳天に気絶するほどの一撃を叩き込む。
「行かせねーよバカ!!」
ダアァン!!
「あ、あの。。怪我人は無視する方針のはずですが・・・。それに、まきびしを乗り越えた人を重点的にって。」
まきびし地獄を乗り越えてくる人数が少ないためか余裕が有り余り、暇を嫌っているハークンは予定外の人でさえも、まきびし地獄の奥へと追い返していた。メクは手持ち無沙汰で眺めることしかできない。
「ありゃあ無理するなって意味だろ!!おいらにとっちゃこんなの、無理なんかじゃねえ!!」
あっちへ行ったりこっちへ行ったりと、その守備範囲は明らかに無理をしている。足腰が強いゆえにできる芸当だが、次第に粗が目立っていった。
「ハァ、、ハァ、、。広すぎるだろ・・・。こ、こんなの人のできる範疇超えてるよ・・・!」
「そ、そうですよ!だから言ったじゃないですか!こんな数と範囲、協力しなければどうにもなりません・・!!」
「・・・?メクはなんでなんもしねぇんだ?」
「バカなんですか?」
予定外もそうでない者もまとめて蹴散らしてしまうため、目標を捕捉する前にいなくなってしまう。捕捉できたとして、唯一の仲間一人が定期的に射線上へ入り込んでくる。遠距離涙目の動きをされていては協力どころではない。
「も、もう少し下がりましょう。サリートさんと戦っている獣人は、遠目からでも強く、性格は威圧的です。他の介入を邪魔だと考えているのか、獣人たちは、あの範囲だけは避けているように見えるのです。」
「なるほどな!あいつが巻き込まれるってことはないから、門の前まで下がっちまおうってことか!!」
そうと決まれば足早に門前へ引き返す。想像通り一騎打ちには誰も入り込まず、直線上の兵士はわざわざ回り込んで進んでいた。
前方ではイージアと名乗った男とサリートが戦っている。かなり不利な状況ではあるが、こちらとしても助太刀できる余裕はない。次々にまきびしを乗り越えた兵士が、二人へとにじり寄ってきた。
「なんだ?てっきり数で押してくるかと思ったんだが、、ビビってんのか?」
罠により血を流す兵はもちろんのこと、被害が少ない者でもうかつに進まない。なぜなら、油断の後に罠起動を数度やられ、まだ何かあるのではないかと警戒度が最高値に至っているからだ。あからさまに門へと走る姿が、その可能性を浮かばせたのだろう。
「それなら好都合だ!メク!!狙うは一直線!魔法で全部消し飛ばしてやれ!!」
「バカなんですね?」
指をさす直線上には一騎打ち会場。そして人を大勢吹き飛ばす威力など、そうそう出せるものではない。
見てわかる通り、ここからは複雑な策はない。東門でも行われているであろう、攻め入る者を立ち入れないだけ。
「い、今から私は魔法を溜めます!なのでハークンは時間稼ぎを!!」
「おっしゃ任せろ!!っらあ!!」
真っすぐに突っ込んで蹴り飛ばす。ただし、敵の様子を見ながら選ぶことにより、多少の体力維持を目指している。一度疲れたことで懲りたようだ。
「・・・っと!こいつは狙っちゃだめだな!・・・・・・ぶへぇ!?」
怪我人を蹴る寸前で思いとどまり、見逃そうとしたあげく、ちょっと変な空気が流れてから普通に殴られた。
「バカなんですね。」
やはり戦闘センスはそこそこなようで、何人相手でも対応ができている。相手が負傷していることもあって思うように動けていないようだが、子ども一人に苦戦している事実がそこにあった。
「オイオイ!!餓鬼一人にビビッてんじゃねぇぞぉ!こんな体たらくじゃあこの俺!"モーイ"が!!兄貴に恥晒しちまうだろうがぁ!!ゲヒヒ!」
イージアと似たような、真似でもしたような動きで現れた眼鏡犬獣人は、ある程度距離をとった状態で声を張り上げた。
「やれ!"リッツァ"!!お前には戦うしか能がねぇんだからよぉ!!」
その瞬間、人混みを縫うように尚且つぶつかったりどける動作もなく、兎の獣人がハークンの前へと姿を現した。
「っな!?」
あまりにも流れるような動きに、戸惑いはするも足を振る。
ドドドドド、ガッ!!
「ぐへぇ!?」
ぶつかっているのではないかと疑うほどに最短で避け、胴へと殴打。元の場所へと殴り飛ばされてしまう。その女性は敵がいないにもかかわらず、その場でシャドーボクシングを始めた。
「くっそ!武器みたいにいてぇ・・・!なんでだ!?」
「あれは・・・。メ、メリケンサック?」
彼女の拳には両方、鉄の殴り武器が装備されている。おそらく罠で負ったであろう負傷をなんとも思わずに動き、なにより隙がない。
「ゲヒヒヒヒ!!そいつはなぁ!敵を最短で倒すことのできる、生物兵器みたいな女よ!!魔法の溜なんて悠長なことしてて、、いいのかなぁ?」
「た、溜まりました!!」
「なにい!?」
溜を始めてから一分ほどが経っている。疲労が限界に達しそうでも、ハークンは守ってくれた。そもそも罠を警戒して近づきにくい者が多く、集中できた。
「い、行きます!!私の魔法、突撃!!」
ヒュゥ~・・・・・
・・・・・・
魔法が放たれた。放たれたが、なにか小さくてフワフワしたモノが、おじいさんの散歩くらいの速度で宙を浮いている。
「・・・?え、なにこれ。」
「・・・・」
本人はいたってまじめな雰囲気を醸し出しているが、騙される者はいない。いや、罠を恐れる者がいるにはいるが、誤差だ。
「・・・・・ヒ、ヒヒ、、ゲヒヒヒヒ!!な、なんだ脅かせやがって!!こんなもんをお前は溜めてたのかぁ?」
害がないことを悟った男は調子に乗って、未だぷかぷか浮かぶ魔法に近寄った。そして、おもむろに口を開け、
「ちっぽけな魔法ごとき!この俺が食っちまうぜぇ!」
魔法が口の中に入るまで待つモーイ。ゆっくりと体内へ入り、ごくんと一飲みしてしまった。
「・・・ん~。このドロドロしたものが喉を通っていくという不快感。ある意味趣があってい
バタン!!
背中から勢いよく倒れた。思いっきり白目を向いている。
意味の分からない状況に唖然としていた集団だったが、仲間の一人が倒れたことを認識した瞬間、モーイ!モーイさん!と心配する声が上がった。
「・・・・・・・よ、よしっ!一人倒しました!!」
「結局なんなんだよそれ!!いいか!?絶対おいらに当てるんじゃないぞ!!!」
あからさまな毒を飲み込んだバカが一人いなくなったところで、再度戦闘が開始されようとしていた。彼との接点がほぼなかった者はそれを無視し、武器を持って向かってくる。罠に恐怖していた気持ちを、逆にほぐしてしまったような気がした。
「おいおい!状況変わってねぇし、悪化してるんじゃないのか!?ってか、魔法多種類使えるんじゃないのかよバカ!!」
もう体力もない。万策尽きた。援軍が来るまで戦い待つことが最善となった今、あまりの状況の悪さに冷汗がでてしまう。
だが、メクの雰囲気は変わっていない。
「あ、安心してください!!本命はこっちです!!」
メクの頭上には、謎の塊が浮かび上がっている。先ほどの小さなモノと似たようなものだが、威圧感が違う。
「炎、水、土、雷、風。その他にも数種類!全部が混ざり合った"混沌"の魔法。」
気持ちが悪くなる色をしているが、赤、青、茶、黄、緑と、様々な色が異様さを表しており、それだけの配色を用いながら調和のちの字もない。ぷかぷか浮かんでいたあれも、この混沌の一部だ。
「混沌魔法!!過オす之鵜ズ|・・・!!」
ゴオおォOオぉオoぉォ・・・
蠢く球体が集団の中へと着弾する。すると黒い竜巻が巻き起こり、大勢を舞い上げた。ドロドロした液体が飛び散る。竜巻のはずなのに、地面に小さなクレーターがぼこぼことできる。草がひとりでに燃える。食らった者は痺れたかのように体を震わせるものもいれば、幻惑を見ている者もいる。
死者はいないものの、得体の知れなさが死の恐怖を上回る。まさに混沌。敵の戦意など無いに等しくなっていた。
「・・・えぇ。じゃあさっきのいる?」
ただ茫然と眺めるしかないハークンは、状況に光刺したのに不思議と戦意が削がれていった。技を食らわなかった者もただ茫然と見ており、恐怖が芽生えてきていた。
ただ一人を除いては・・・・
「お、お前!やる気か!?」
戦いが続くのであれば、無理にでもやる気を出さなければならない。表情一つ変えずに戦場に立つ、兎の獣人を迎え撃つために。
「・・・・・そろそろ喋ってもいいかな。私ね!何もしない人って大嫌いなんだ!!」
後ろの混沌など見えていない、感じていないかのような調子で、雰囲気があまりにも状況と不釣り合いな女性は、自分の調子のまま話し続ける。
「大嫌いなものを見るとね。殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って・・・・・」
景色も女性もなにもかもの情報量で渋滞している。リッツァの腕の筋肉が、二倍三倍と肥大化していく。
混沌として混沌として混沌として混沌として殴られ混沌として混沌として混沌として殴られ混沌として混沌として混沌として殴られ殴られ殴られ殴られ混沌混沌混沌混沌混沌混沌殴混沌混殴沌混沌混殴沌混殴沌殴殴殴混殴殴沌殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打
力の制御ができていない
二人は地に倒れ伏した
サブ連載 < 魔人っ子の平和(?)な散歩道 >
二十一話 「魔人っ子のごめんなさい(?)な真面目話」
「う"!!?何ここ・・・!!臭い・・・!!」
陥没した地面のさらに下。地中の中に空洞が。
「ここだよ~。ここが君の知りたがっていた、この村の秘密。」
「・・・なんなんですか。この空間。」
特にいじられた感じもなく、ただの地中。地下室と言えるほど部屋として作られてない。
「ひっ!!?」
焦りで気づかなかった。目の前には、とんでもない量の死体の山がある。さらに足元には新聞の切れ端があり、日付が数十年も前のもの。
「ホント。面白いよねぇ、"人"って。いや、この場合は"魔法"がって言った方が正しいか。」
シララは恐怖で声も出ない。
「むか~しむかし、あるところに。死者を蘇らせる魔法を研究する、一風変わった者がいました。」
周りを見ても上を見ても、出口なんてどこにもない。
「様々な手を用いて死体を集め、様々な方法で死体をいじくり、様々な者の反対を押しのけて、彼は研究に没頭しました。」
「・・・ぃぅ・・・!!?」
横の土から死体が飛び出してきた。ゾンビではない。何らかの方法で、この場所に引きずり込んだかのようだ。
「ある日。これまでの苦労が報われたのか、とある死体に命を吹き込むことができました。」
「こん・・・・に、ち・・・。」
「うわああああぁ!!?」
下の方の死体が、声を発した。手足が動いて、上に重なる同種を押しのけようとしている。
「声を発し、手足が動き、こちらの意思も伝わっています。でも、その後のことを考えず手段を選らばなかった彼は、ゾンビの体に触れると数多くの異常をきたす、生きる猛毒を創ってしまいました。」
ピエロが死体の山を土ごと左右に吹き飛ばし、奥が見える。
「それでも研究を続けた彼は死してなお、意思もなくゾンビを、猛毒を創り続けていましたとさ。」
椅子に座らされた白骨死体が一つ。
「不思議だよねぇ。魔法を放つ本人はもう亡くなっているのに、どうやって魔法を使っているのだろう?魔力はどこから?」
「・・・・。」
「かつて人が持ち、行使できる夢を魔法と名付けた者がいた。・・・魔法って、なんだろうね。」
「考える時間はそこまでだ。」
音もなく上に空洞が空いていて、そこにはエトシアの姿があった。
「早かったねぇ!隠し事をするのが、そんなに好きなのかな?」
「何も知らぬ子に言っても、混乱させるだけだ。それにな・・・。」
穴からもう一人の女性が。メイラだ。
「サブ連載で、長々と真面目な話しちゃあいけないって裏ルールもあるんだよ!!自重しぃや!!新人!!」
「・・・と、いうわけだ。ルールを破る不届き物には、正義の鉄槌、下さんとなぁ。」




