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殿下、貴方が婚約破棄を望まれたのです~指弾令嬢は闇スキル【魔弾】で困難を弾く~  作者: 秋津冴
第二章

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第三十五話 役割

 それはそれは、と黒狼はよろこんでいた。

 リンシャウッドの尻尾が二人を歓待するかのように、おいでおいでと手招きしているようだ。


「お二人の考えには嬉しい限りです。ここに来るまでの間、ずっと獣人は格下だの、無能だの、と蔑まれてばかりで」

 

 主人の悲し気な物言いに、尾がしゅんっとしなだれた。それから元気になって、アニスとエリオットが仲間になるのを歓迎するような素振りを見せる。


 もしかしてあの尾の方が本体で、この人の形をした少女は偽りの肉体かなんかかもしれないと、アニスは眉をひそめる。

 それほどに黒狼の尾は雄弁にものを語った。主に仕草で。


 まるで彼女と尾が主人公であるように、アニスの目には映った。

 仲間になるのならば、誰がリーダーで誰が脇役かをはっきりとしなければ。


 戦争もそうだし、魔猟もそう。

 一頭で街一つを壊滅させるような魔獣相手に、人間やいかに精霊を身に宿しているといっても、獣人なんて非力なものだ。


 その意味では、この三名のなかでもっとも実戦経験が豊富なのはアニスだった。

 人生における辛い目に関してはそうでないかもしれないけれど、リンシャウッドがリーダーになれる素養に恵まれているとは、はっきりいって断言しにくい。


 それはエリオットも同じ意見だったようで、青い澄んだ瞳にどうしますか、と問いかけの表情が浮かんでいた。

 チームになるなら、どんな役割にしますか、そんな問いかけだった。


「あなたはあくまで後方支援」

「えっ!」


 アニスの命じた役割分担に対して、途端にリンシャウッドは嫌そうな声を上げた。尾もまたピンと立ち膨れて抗議していた。


「私の魔弾スキルはよくて数十メートル。それを越えると距離が伸びるごとに威力が落ちていくの。対して魔獣の大きさは数メートルから十メートルが基本。攻撃が失敗した場合、安全地帯に逃げ延びる前に、敵に追いつかれてしまうわ。そう思わない?」

「俺は賛成です。騎士団にいたころに、前衛職を務めていたから移動式の防御結界や、簡易的な転移魔法を多用してアニス様の補助に回れます」

「そうなると、あなた」


 と、アニスはそろそろ食べるペースの落ちてきたリンシャウッドに目を向ける。

 もぐ、と返事が返ってきた。


「最低でも五百メートル後方から狙撃できないなら、用無しね」

「むぐぐっ! それくらいならできますよ! ほらっ!」


 心外だ、いうばかりにリンシャウッドは取得したばかりの魔猟師の身分証を見せてくる。

 そこにはほんの少し前に終了した実技試験の結果が、一覧表となって添付されていた。


 総合射撃力の項目で、一キロ範囲内の標的に関しては、Bランクまでの魔獣の装甲を貫通することを可能だと示す、星三つがついている。


 これには魔獣が保有する特殊な結界や防御障壁なども含まれるから、リンシャウッドはやはり腕のいい遠隔狙撃手ということになるのだろう。


 アニスとエリオットはそれぞれ、自分たちの成績表を出してみた。

 総合的なランクは、誰もが初心者のEランク。

 

 それに対して、リンシャウッドの狙撃力の範囲は一キロ。アニスの効果範囲はよくて百メートル。エリオットに至っては十メートルもない。


 代わりにアニスの効果範囲内でのそれはSランクだった。つまり、上から三番目までの魔獣を倒せるということになる。


 エリオットの直接攻撃ランクはEと低いが、回避能力や転移魔法のレベルはBで、効果範囲はリンシャウッドと変わらない。


 リンシャウッドが船や馬車、もしくは大型の転移魔道具を設置した拠点を守りつつ、アニスが中距離戦で敵を叩き、その後ろに防御と緊急脱出用の魔導具を扱える移動要員としてエリオットがサポートに入る。


 これはこれで理想的な陣形だと思われた。



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