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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

「生臭い」

作者: howari

そのビニール袋は血生臭かった…

ザクザクザクッ


「あれっ?包丁新しくなってる…。」


「あぁ切れ味悪かったから、新しいの買っておいたよ。」


と旦那はソファに寝転びながら呟いた。


珍しいな、包丁なんていつも触らないのに。

その時はあまり気にしていなかった。その時は。


浅漬けを作る為にビニール袋をガサガサと出す。

ビニール袋に乱切りに切ったきゅうりを入れていく。

ん?何か…臭い…。


クンクン…くさっ!


「何これ!生臭っ!」


「あ…その袋使ったけど、入らなくて結局使わなかったから洗ってそこにまた入れておいた。」


「あ、そう…」


何に使ったんだろな…これは生乾きのビニール袋の匂い?

なんて思いながらきゅうりを入れて、浅漬けの素を注いだ。30分ぐらいつけるときゅうりの浅漬けの完成だ。



「浅漬け美味しいよ?」


「あ…俺はやめとく。」



次の朝



「いってらっしゃい。」


「あぁいってきます。」


手を振りながら、振り向くことのない背中を見送る。

私たちはいつからこんな風になってしまったのだろう。

きっと赤ちゃんが出来ない私のせい。

そのせいで彼は浮気をしている。


私が仕事で彼が休みの日、女を家に連れ込んでいるのはもうとっくに知っている。

それが何年も続いている。



朝ご飯に昨日の浅漬けを口に入れた。

やけに生臭い。というかなんか…血生臭い。

ゴリっと噛んだ時、誰かの声が頭の奥に響いた。



『こ、殺された。』


「えっ?」


『あなたの…旦那に刺し殺された。』

 

「えっ!?」


『バラバラに切り刻まれ、池に捨てられた…』


「あ、あなたは?」


『あなたの旦那と不倫していた、ゆりという女。』


不倫相手?殺された?バラバラ?


昨日の旦那の言動を思い出す。


〝切れ味悪かったから、新しいの買っておいた〟

〝その袋使ったけど入らなくて〟


…包丁を使って殺した?それを何処かへ捨てたから、新しいのを買ってきたの?

…袋に遺体を入れようとしたけど、入らなかったから違う袋に入れた?


ガタガタ…ブルブルと体が震えて、腰が抜け、背筋が一瞬で凍った…。



『私が妊娠した事を話して離婚を迫ったら、逆上して殺されたの。』


「妊娠…」

この女が憎いというより、旦那が憎いというより、殺したという事実が何より怖かった。

それと…血生臭いきゅうりが喉を通って体に入ったことが怖い。


『吹上公園の池に捨てられた。見つけて…お願い。』


それだけ告げると、ゆりの声は全く聞こえなくなった。


私は放心状態のまま、きゅうりを生ゴミの袋へと破棄した。



隣で寝ている殺人鬼。 

スースーと規則正しい寝息が聞こえる。

鼓動が早いのを気付かれないよう息を潜めて私は目を閉じた。


真夜中二時


ゴゾゴゾと旦那はベッドを降り、家を出て行った。

私も気付かれないように後を付ける。

月明りに照らされた旦那の影が、アスファルトに伸びて恐怖が押し寄せてくる。


…池に行くのかしら?


やっぱり旦那は池へとやってきた。ぼんやりと満月が浮かんだ池を眺めてボソッと呟いた。


「ゆり、殺してごめん。でも、お前が邪魔だった。だって…妊娠したなんて言うから…離婚しろだなんて言ったから。お前が悪いだろ?俺はやっぱアイツを愛してるんだ。」


…アイツって誰?他の女のこと?


ガサッ!


あっやばっ!気付かれる!!


旦那が気付いて、私の方へ静かに寄って来る。


冷や汗が背中を滴る…後退りするが、足が動かない。


「りか…お前どうして…」


彼の温かな手が私の頬に触れた。


「俺は…お前をあい…」



バシャッ!!



その音と共に池から血だらけの女が現れ


彼を後ろから抱き締め


池へと引き摺り込んでいった。



その女と旦那の遺体は永遠に池からあがることは無かったとさ。


そして私は…きゅうりの浅漬けを作らなくなった。



end


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