三種族会議
真人は人族と魔人族のハーフである。
人族は長命で約二百年ほど生きることができ、鉄では簡単に切れないほどの頑丈な肉体を持つ。ただし、生殖能力が低く、子どもは授かるが三人まで。四人以上子がいるものは数百年の歴史をさかのぼっても数百人ほどしかいない。
魔人族は短命である代わりに、魔法を行使でき、かつ、子も多人数などざらである。多い家族では、兄弟だけで十五人などもいる。
真人はその良いところをそれぞれ受け継いでいる。寿命は八十年ほど、体もそこそこ頑丈である。魔法も魔人族ほど強力ではないものの行使でき、子も五人ほど生まれるのが普通であった。
真王コウライは真人の七番目の子として生まれた。魔人王キースとは異なり、幼少の頃より異様な才覚を発揮して魔物を狩っていった。コウライは普通は成人した真人が十人がかりで倒すような魔物すら、わずか十歳にして一人で倒すほどの実力を持っていた。
魔法の才覚も通常の魔人と同じほどの力を行使することが出来る上に、その使用により寿命が縮まるような感覚に襲われることもなかった。そして、歳が二十に達するころには、肉体も鋼のように頑丈になり、彼の血を分け与えられたものは、コウライほどではないものの力が増加した。
この血を分ける行為で、コウライは自分の能力と似た力を発揮できる者を増やす見返りに、彼らから血をもらい寿命を延ばしていった。
こうしてコウライもキースと同様に長命な命を得ることとなり、魔物の討伐に大きく貢献した。
魔人王と真王の登場により、魔物と互角に渡り合うことができるようになり、ヒトはわずかではあるものの勢力を外へ広げ、住む場所を拡大していった。
だが、それでも魔王の姿どころか、その名さえヒトは耳にすることはできず、やっと互角に戦えるほどであった。
この状況はヒトを焦らせるには十分な要素だった。
三種族会議場・・・
「なぜ人族には人王が出てこない」
魔人王キースはいらだっていた。自ら戦場に立つことはないものの、その優れた軍略と魔人族への能力向上への貢献から、魔人族の長として三種族の長が揃う会議に出ているのである。
だが、彼の軍略をもってしても成果は芳しいとは言えない。
「まったくだ。僕たちはこんなにもヒトの未来に貢献しているっていうのに・・・。人族は攻撃でも護りでもまったく役に立っていないしね。ごくつぶしもいいところだよ」
そう言って、真王コウライは鼻で笑った。
「・・・」
人族の代表としてこの三種族会議に出席しているのは、キュラという女性である。キュラは人族の中で唯一魔物との闘いで常に前線に立ち、無傷で帰還してくる強者であった。
だが、その強者の奮闘もキースとコウライの活躍の前では、霞んでしまう。
キュラは二十三歳とキース、コウライと比べればとても若く、活躍の期間もまだせいぜい二、三年ほどだ。
「我が魔人王として担ぎ上げられてから、既に二百年か・・・。この間に真王としてそこのコウライが生まれ、真人は進化を果たした。それでも魔物との闘いはやっと互角になった程度。人族も進化をすれば、魔物との闘いに勝利できるかもしれん・・・と思ったのは浅はかだったようだ」
「ねーねー、キース?人族にそこまで期待するのは酷じゃない?」
そう言ってコウライはニヤニヤと笑う。
キュラはギリッと唇をかみしめた。その唇から鮮血がしたたる。その血の真っ赤な色がキュラの怒りを表しているようだった。