終戦日
『今日は終戦から七十四年。各地で戦没者のーー』
テレビでは終戦記念日の特番が流れている。
少女はシャワーを終えた昼からずっとテレビの前に座って流れる映像を見続けている。
時折聞こえる『空襲』という単語に彼女は反応する。
昼食も夕食も摂らずに戦火を、自分の知らない『敗戦』という事実を受け入れようとしているように感じる。
俺からしたら遠いことだが、彼女からしたら生きていたときの映像を見せられているのだ
簡単に受け入れられるものでもないのだろう。
陽はずっと前に沈み、時刻は深夜の十二時前。
ニュース番組も終わり、どのチャンネルでも戦争のことを語らなくなった。
「もう、今日は遅い。身体を休めた方が良いよ。二階に姉ちゃんが使ってた部屋があるから」
「……はい」
衰弱した様子の彼女を部屋まで送って俺は眠りについた。
睡眠が浅くなったときに扉をノックされる音が聞こえた。
俺の頭がゆっくりと覚醒していく。
「どうぞ」
俺が返事をすると少女が入ってきた。
「どうしたの?」
俺はボーッとする頭を掻く。
「……お願いがあります」
「お願い?」
少女が意を決して口を開く。
「今の東京に連れていってください」