文明
「びっくりしたわよ。あなたが女の子を連れてくるなんて」
腕を組んだ母が深く息を吐く。
俺が日本の敗戦を少女に伝えると彼女はとても大きなショックを受けたらしく、その場に崩れてしまった。俺も彼女をそのまま放置するわけにはいかなかったので様子を見ていたが、夏の厳しい暑さは危険だと思い、人形のようになってしまった彼女の腕を引っ張って無理矢理家に連れてきたのだ。端から見たら誘拐を疑われそうだが、俺はあくまで善意で助けたのだ。
その彼女は今、うちの風呂でシャワーを浴びている。
「それにしても変な子ね。服装もそうだけど、シャワーを知らないなんて。よほど田舎の子だったの?」
首を傾げる母に俺は経緯を説明する。
「昭和二十年って、おばあちゃんが産まれるよりも前じゃない。そんなことあるわけないでしょ?」
「でも、あの子を見ただろう? 戦時中の格好で日本の敗戦すら知らない。それに彼女が嘘を言っているようには見えないんだ」
「そうは言ってもね~」
未だに半信半疑の母。
俺だってそうだが、彼女の存在を説明出来ない。
「あのー!」
風呂場から少女の声がする。
さすがに俺が行くわけにはいかないので母にお願いする。
数分後に戻ってきた母は苦笑した。
「服を洗いたいらしいんだけど。うちに洗濯板ってないわよね?」