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遺された私

 まだ風が吹くと少しだけ肌寒い季節。

 私の好きな海は、真っ黒なものに埋め尽くされた。

 軍人さんが小銃を手に走っていく。

 それとは逆に逃げていく私たち。

 まるで地響きのような音。

 私たち家族は学校へ逃げた。

 本当から来た軍人さんが助けてくれると思ったから。

 だけど、そんなことはなかった。

 偉い人が言った。

『一人で十人殺せば勝てる』

 父は島を守るために半ば兵士に。

 母は幼い妹を背負いながら看護婦に。

 私も母を手伝いながら毎日運ばれてくる軍人さんに包帯を巻いた。


 数日後、父が死んだ。

 爆弾を抱えて敵に特攻したらしい。

 

 学校から逃げないとならなくなった。


 がまに逃げた。


 真っ暗で少し蒸し暑い。


 お腹が空いた。


 眠い。


 赤ん坊の鳴き声が聞こえる。


 軍人さんが怒ってる。


 母が妹の口に布を押し込んでいる。


 どうして?


 それじゃ妹が死んじゃう。


 母は泣かなくなった妹を抱き締めて静かに泣いた。


 軍人さんにガマから追い出された。


 私と母は敵から逃げた。


 命懸けで逃げた。


 空き家に逃げ込んだ。


 振り返ったときには母は居なかった。


 私は草や根を食べて北に逃げ続けた。


 そしてーー


 女子供が軍人さんからも、敵からも殺されていることを知った。

 

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