再会
「いやーすまないね。うちの姉さんにそっくりで」
お爺さんは快活そうに笑う。
俺たちは今、レトロでオシャレな喫茶店に来ていた。
少女が体調を悪くしてしまったので休憩ということで連れてきてもらった。
「そんなにそっくりですか?」
俺が訊くとお爺さんはうんうん、と何度も頷く。
「瓜二つ。いや、生き写しだよ」
そして悲しげに苦笑する。
「戦時中のことだからあり得ないのにな」
俺の中に予想が生まれる。
だが、まだ情報が欲しい。
「住んでいるのはこの辺なんですか?」
「ん? いや、違うけど。それがどうかしたのかい?」
予想が外れた。
浅草に住んでいるのならばもしかしてと思ったのだが。
……いや、待てよ。
「出身が浅草だったりします?」
お爺さんは怪訝そうに首を傾げる。
「そうだけど。変なことを訊くね?」
「浅草の空襲でお姉さんを亡くしたりとかは?」
「ああ、確かに空襲で。まあ実際は遺体は見つからなかったんだが。時代が時代だし、爆弾で遺体ごとって人も居たから。うちの姉さんも死亡扱いになった」
俺はチラリと少女を見る。
彼女は目を丸くしていた。
俺と同じ考えに至ったのだろう。
目の前に居るお爺さんは少女の弟なのだと。
「もし、もしですよ? お姉さんが生きていたとしたら?」
俺の明らかに怪しくて頭のおかしい質問。
だけどお爺さんは笑って答えてくれた。
「俺を空襲から救ってくれてありがとうって伝えたいな」