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キメラ ヴァリアント  作者: まあまあ適当なモバイルバッテリー
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第一話:よくあるプロローグ

 住宅街というのは思ったより静かだ。

 必ずしもにぎやかさは人や建築物に比例するわけではない。要するに住宅街はいざというとき予想より安全 ではないということだ、今まで考えもしなかったが。

 私はそんなとりとめのないことを考えながら帰路についていた。背後からは謎の視線を感じる。だが、振り返っても誰もいない。

 気づいたのはここ数日、それ以来学校から帰る途中つけてきている。もっと以前からかもしれないが、少なくとも気づいたのはここ数日だ。

 今のところ嫌がらせなどは何もされていない、それがさらに焦燥を掻き立てる。

 いっそのこと出てきてくれればぶっ飛ばせるのに。

 自然に歩幅は大きくなっていく。

 自宅はまではまだある、もう一度振り返るが人っ子一人いない。実害がないのでほおっておいたのだがそろそろ限界だ、警察に相談する?どうせ相手にしてもらえない。友達に相談する?どうせ自意識過剰だといじられるのがオチかもしれない。

 そうこうしているうちに家の前につく、念のためもう一度振り向くがやはり誰もいない、背後に不気味な気配を感じながらも私は玄関のドアを開けた。



 央馬市。

 中部地方の山々に囲まれた巨大な盆地にある地方都市。

 京都の西、群馬の東、二つの違う意味での魔境(片方はそのままの意味、もう片方はネットの過大すぎる風評被害の事だが)に挟まれた位置に存在するその都市は四方を山に囲まれているという地理的なディスアドバンテージを抱えながらも昔から本州の山脈を越えて各都市をつなぐ交易路として栄え、今や百万人近い人口を抱える本州有数の巨大都市にまで成長していた。

 様々な文化が流れ、無秩序に交じり、特殊な町人文化を形成してきたこの都市は観光客も多く、毎年六十万人もの人々が山を越えてやってくる、

 良くも悪くも雑多な街。その街の都心、高層ビル群から少し離れた場所に周囲からもよく目立つ四階建ての校舎がある。

 市立穆勢(ぼくぜい)高等学校。

 大学に併設され、全四つの学部が設置されていて、校内の設備や都心に近いという立地から生徒数は約七百人を抱える。市内でも屈指の人気校である。

 そのバカでかい校舎の一角1-2の教室、生徒たちの話声ごた混ぜに飽和している中、二人の女子生徒が窓際で会話していた。

 片方は髪をポニーテールにして、快活な印象を与える少女で。もう片方は、黒髪を腰辺りまで伸ばした怜悧な雰囲気をまとう少女。

 二人は教室の窓側辺りで静かに会話していたが、突如、ポニーテールの少女、烏丸 優希が大声を上げた。

「ストーカー!?」

 その声は高く、よく通った。それ故、彼女はすぐにしまったと思った。さっき話していたことは決してほかの人にむやみに知れ渡ってよい話ではないからだ。

 案の定、向かいに座る米田 美弥子が咎めるように、貫くような凛冽とした視線を向ける。

「ご、ごめん・・・」

 慌てて謝りながら優希は周囲を見回す。何人かこちらを向く生徒を確認できるが、幸いにも先の大声に気付いた人はあまりおらず、聞こえた生徒も大して気にかけず、すぐに各々の会話に戻っていった。

 優希はほっとした表情で美弥子に向き直る。しかし、美弥子の不機嫌な表情は変わっていなかった。

「ごめん」

「もう、気を付けてね」

 再度面と向かって謝ると、美弥子はやれやれといった表情をした後、話を再開した。実際優希はほとんどの場合において自重するということを知らないため、たびたびこういうトラブルが起こる、一々怒っていてはキリがないからだ。

「え、えっと、それで何だっけ?」

 恐る恐るといった様相で優希が話の続きを促す。

「だから、つけられてるのよ。学校の帰りに。」

 先程とは違う表現を用いて、美弥子は事のあらましを説明する。

「で、でも、それなら警察とかに相談した方が、」

「そうなんだけどねぇ」

 その通り、本来ならばこれはストーカー規制法に引っかかって警察の出番となるはずなのだが、美弥子は相談していなかった。

 その理由は・・・。

 「本来なら私が直々にぶっ飛ばしてやるのに、姿かたちも見えやしないのよ。確かにつけられてるってのは分かるんだけどね。」

 「う、うわぁ」

 言うとうり、美弥子という少女はその穏やかそうな外見とは裏腹に腕っぷしが強い、空手2段の腕前で、それこそそこいらのチンピラ程度の男ならば相手にもならない程に。今まで幾度となく大の男を(試合で)葬りさった己の拳で、美弥子はそのストーカーも地面にキスさせてやろうとたくらんでいたのだが、生憎と姿かたちも見えないため意気揚々と振りかざした拳のおろしどころを彼女も分からず、悶々とした日々を送っていた。

「というわけで、あんたに頼みがあるのよ。」

 どうやら今までが前置きで、ここからが本題のようだ。

 だが、ここに来て優希は嫌な予感がしたこの手の相談話に付き物の“あれ”である。

「私と一緒に、このストーカー野郎を捕まえてほしいの」

 やっぱりか、と優希は心の中でため息をついた。


 烏丸 竜弥、17歳 市立穆勢高等学校に通う高校生。クラスは2-C、クラスの人気者ではないが、ボッチというわけでもない。背が高く一部の女子から密かに人気がある。好きな教科は歴史、嫌いな教科は数学、趣味はゲームと駅前をぶらつくこと、学校の成績は中の下程度で低いわけではないが、取り立て優秀でもない。

 そんなどこにでもいそうな普通の青年は本日数えて二度目のため息をついた。

 一度目は今日あった体育の授業で制服のブラウスを土足で踏んづけたとき、そして二度目、家に帰って昨日のゲームの続きをやりたかったのだが、不運にも烏丸 優希という少女に呼び止められ、強引に一緒に連れてこられた今この時だ。

(いや、まあ烏丸 優希は実のところ俺の家族だったりするわけなのだが)

「ちょっとお兄ちゃん!聞いてるの?!」

 そんな誰に説明しているのかわからないモノローグを心の中で読誦して現実逃避していたところに優希の声を張り上げた一撃が炸裂する。

「聞いてます、聞いてますってば」

「嘘だ、絶対いま聞き流してたでしょ」

 全く、毎回テスト前になると半泣きで俺の部屋に助けを求めに来るようなキャラしてるくせに、たまに冴えたことを言い当てることがあるのが始末に負えないと、竜弥は失礼なことを考える。

「今、何か失礼なこと考えたでしょ?」

「いえいえ、滅相もございません。」

 竜弥はごまかすようにおどけて謝罪の言葉を口にした。優希に対して誤魔化すにはこれが一番だと理解しているからだ。

「もう、真面目に聞いてよね、大事な話なんだから」

 その言葉を聞いて、優希もあくまでも誤魔化されたように装い、あえて追及することはしなかった。

 つまり予定調和である。

 そして、そんな二人のやり取りを傍で眺めている第三者が一人いる。

 竜弥がちらりとそちらを見やると、そこには見麗しい美少女が立っていた。腰の上あたりまで新緑のような黒髪を伸ばし、瞼は二重で、ダイアモンドにも劣らぬ宝石のような眼球が埋め込まれている。唇は鮮やかなピンク色でほんのりと湿り気を帯び、目鼻立ちの整った顔、まさしく絵に描いたような大和撫子であった。

米田 美弥子である。

 今まで、たくさんの人間と顔を合わせてきた竜弥でも、これほどまでの美人と対面したのは片手で数えるほどしかいなかった。

 美弥子は苦笑い寸前の顔をして今のやり取りを聞いている。

 どうやら今の茶番がお気に召さなかったようだ。少しばかり顔がこわばっている。

 再び竜弥が優希に目を戻し、優希からの話を頭の中で反芻する。

 簡単にいえばストーカー被害を受けているのでその犯人を特定してほしいというものだ。

「だけど、そういうことなら警察に言うべきことじゃないか?」

 偶然というか必然というか数時間前の優希と同じ反応を示した竜弥だが、優希が否定する。

「警察っていうのはこういうとき頼りにならないものなの。どうせ相談したって真面目にやってくれるわけないじゃん。」

 そうなのか、と竜弥は納得を示す。犯罪に対処しないというのは法治機構として致命的だが、残念ながら物事には優先度というものがある。一々細かいことまで対処することは不可能だ。

「警察だって忙しいんだ、そう言うもんじゃないよ。それよりも、ストーカーを特定することは構わないけれど、証拠を取って警察に通報するということでいいか?」

 優希をたしなめながら、竜弥は美弥子に確認する。こういう依頼において終了条件の確認は必須だ、ズルズルと引き伸ばされてはたまらない。

「え、えぇ。そういうことです。」

 少し、答えに詰まった美弥子に少し不審に思いながらもあえて竜弥は詮索することはしなかった。

「わかった、じゃあ今日の放課後からでいいか?」

「ええ、お願いします。ああ、実は部活動があるので7時30分からでもよろしいですか?」

「ああ、わかった。・・・おい、なに拗ねてんだ。」

 竜弥と美弥子が話していた間、蚊帳の外だった人物、烏丸 優希が頬を膨らませて先程からこちらを睨んでいた。どうやら、手柄を取られて膨れているらしい。

「私が話してたのに・・・」

 美弥子もこれには苦笑するしかない。

「はいはい。それじゃあな、俺は行くぞ」

 美弥子を小突いて苦笑しながら、竜弥は二人から離れていく。優希はふてくされながらその背を見送った。美弥子はかなりの美人だ、少なくとも優希が16年間生きてきて見たことのないほどの、そして、自分の一番の親友でもあった。そんな友達を見たときの反応を見たくてわざわざ呼んだのだが、当の兄の反応は普通であった。それが不満で少し不機嫌になったのだ。

「いいおい兄さんね。」

 美弥子はそう親友に話しかけた、それは本心だ、妹の無茶振りに嫌な顔ひとつせず答え、そして、変な依頼にも何も聞かずに力になってくれる。美弥子はそんな人間は今まで見たことがなかった。

「まあね」

 優希も心なしか嬉しそうだった。そして・・・

「美弥子、猫かぶりすぎ」

「うるさいわね!」



初めまして。

適当に書いたものを投げていきますどうかよろしくお願いいたします。

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