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夏に恋が終わった時

作者: 三笠 広生


 こちらもあるキャッチコピーから連想した作品です。


 ――高校2年の夏、私の恋が終わった。


 ずっと好きだった彼に告白した。片思いだとは何となく分かっていた。でも、もしかしたらという思いが消せなくて……私の誕生日の今日、彼に思いを告げた。


 分かってた……分かっていたけどやっぱり来るものがある。

 自分でも分かるくらいフラフラした足どりで帰路に着く。信じられないくらい足が重い。家に着くのはいつもの倍の時間が掛かりそうだ。


 今にも雨が降りそうな空模様。今の私の心情を表しているようだ。


 私は何でフラれたのだろうか。やっぱり彼に好きな人がいたから?すでに彼女がいるから?それともただ単に私はタイプじゃなかったから?

 そんな思考をぐるぐると続けてしまう。だけれど、どんなに考えても答えは出ない。


 ――彼は何故、私の告白を断る時、あんな表情をしたのだろう?

 嬉しそうなそれでいて何処か悲しいような顔。何かに気付いてしまったかのように見開かれた瞳。その表情が頭から離れない。


 何かが頬を濡らしていた。それと同じく鼻先に何かが当たっていた。何だろうと思う間もなくそれが雨だと気がつく。意外に雨粒の量が多いが、走って帰る気力は今の私には無い。すぐに全身ずぶ濡れになった。普段は絶対お断りだが、今は別に気にならなかった。

 額に髪が貼り付く、シャツが水を吸って透けていく。

 何時もなら羞恥の感情に襲われるだろう。だけど私は今、別の感情で手一杯だ。そこにまで気がまわらない。


 今まで黙々と進めていた足を止めて、顔を空に向ける。最早、泣いているのかただ雨に濡れているのか分からない。


「――――――」


 雨が降っていて良かった。泣いているというのを誤魔化せる。自分では分かっているけれど、心を少しでいいから騙して軽くしたいと思った。


 彼とは幼馴染みだった。小さい時から一緒に居て、仲が良くて、よく遊んだ。

 段々と彼を思う感情が変わっていった。学年が変わって、高校生になって、その感情が好きって気持ちなんだと気付いた。


 そして今日、告白してフラれた。だから今、私は彼との思い出の場所に足を運んでいる。

 彼と遊んだ公園、彼と一緒に行ったデパート、彼と一緒に勉強した図書館。全部が思い出だ。


 好きだった。でも、こうして彼との思い出の場所にに足を運んで見ると、なんとなく彼のした表情の意味が分かるような気がした。


 キラリと光るものが瞳に入り、目を細めた。いつの間にか雨は止んでいて、雲の切れ間から光が射し込んでいた。雨は上がっていた。


「――――よしっ」


 一筋、目尻から零れたものがあった。それは雨粒だったのか、涙だったのか、若しくはその両方だったのかも知れないが彼女は目を閉じ、一呼吸したあと声を出し、彼女は歩き始めた。 その足取りは幾分、軽いものになっていた。


 空を見上げてみれば光のカーテンが彼女を照らし、それは道のように続いていた。

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