表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人魚は江戸に流れ着き  作者: 月常
2/2

意外

治療された人魚は洞窟の中で目覚めるのだった

ここは何処だろう?

差し込む日差しに起こされた私は自分が置かれた状況を思い出していた

私達の祖先は歌声で人間達を惑わせて船を沈め溺れる人間達を見て楽しんで居たらしい

そんな日々の中で人間達は歌に対抗する力を付けて行き私達の祖先も

溺れる人間の姿を見飽きたのか

船を沈める事は無くなっていったと海に住む魔女は言っていた

そうして何年も経つ内に船を沈める歌声は空想上のものとされ、人魚も人間に関わろうとはせずに過ごしていた、私達も同じだった

けれど数日前、唐突に人間達が襲って来た、思い描いていた為す術もなく溺れる弱々しい存在と言うイメージとはかけ離れた顔をした人間達が

理由は解らない、過去の恨みかも知れないしもっと別な訳があるのかもしれない

私は逃げた、人間のよくわからない武器で全身が傷つこうと脇目も振らずに逃げた

何日泳いだろう?

とっくに人間の船なんて見えなかったのにそれでも狂ったように泳いでいた、ようやく正気に戻ると今度は忘れていた痛みに襲われた

全身の傷口に海水が染み込み形容し難い苦痛を味わった、堪らず私は近くの砂浜に乗り上げたのだった

そうだ、そこで人間に見られた、私は痛みで動く事も話す事も出来なかった

殺されると思っていたのに人間は不思議な行動をとった、驚いた様な素振りをした後何処かへ走って行った

きっと仲間を連れて来るのだろう、結局人間から逃げられなかったなぁ…

そんな事を考えている内に人間は1人で戻って来た、それより意外なのはこの人間が私の傷に薬を塗り始め事だ、訳が分からなかったが痛みは和らいでいた

薬を塗り終えると人間は私を背負い洞窟へ連れ込み何かを被せた

そこで私の意識は途切れている


私は自分の置かれた状況を考えた、全身の痛みは無くなり傷も塞がっている、魔女に教えて貰っては居たけれど実際に怪我をしたのは初めてだった、あの人間の薬がそれだけ良かったのだろう

「つまり…人間に助けられたって事?」

思わず口にしていた、思い返して見るとあの人間の驚いた顔は私が思い描いていた弱々しい人間の顔のイメージそのものだったかも知れない

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ