表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美湖ノート  作者: 柳橋美湖
ショートショート (一話完結の小説群)
8/31

名探偵

 つまりだよ、モナミ、なぜ、このようになったか仔細を説明する必要が生じたようだからいわせてもらうよ。私は先日免許をとり、つつまやしかな自家用車を手に入れた。買い物や駅送迎をサポートするとの条件で、わが親もそこそこの援助をしてくれた。

 教習所に通っていたとき、親爺がいったものだよ。

「うまい運転というのは、サーキットみたいなテクニックじゃない。助手席に乗った人が怖がらないように車を走らせることなんだ」

「なるほどだね、ポワロ」

 助手席に座るヘイスティングズ中尉がいった。

 私はキーをまわし、エンジンをかけた。

 新車ラパンが車庫をでる。

 十字路の信号機シグナルが赤になったので、思い切りブレーキを踏む。

 右折車が飛びだしてきたのだが、かろうじて、寸前で停止できた。 

 ――私たちはなんて「幸運」なんだ!

 私の運転はガサツで、中尉を苦しめていたはずだ。いま彼は、シートベルトに上体がかろうじて支えられ、がくんとなって首をおかしくした様子だ。親友である彼はとてもいい奴だ。免許とりたてである私の助手席に座って文句ひとついわない。恐らくはタフなんだろうな。

「こないだの件だけどね、モナミ。ありがたく申し出を受けさせて戴くことにした」

「そ、それじゃ!」

「そういうことだ」

 中尉が私の首筋にキスをした。

 そういうわけで結婚を承知したという次第だ。私は白のウェデングドレスで身を包み、新郎であるモナミ・ヘイスティングス中尉にエスコートされて、バージンロードを進んでゆき、壇上に立つ教会・神父の前で永遠の愛を誓う。

 鐘が鳴りだした。

 参列者の祝辞と歓声。

 さて、ここで謎解きをしておかねばなるまい。なんで私がポワロを気取っているかっていうことだ。正解は大学ミステリー愛好会OB。だから、浮気をして証拠隠滅をはかっても無駄だよ、モナミ。なにしろ私は名探偵なんだからね。

    END

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ