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プロローグ

……宇宙怪獣から地球守ろう!


 手渡されたパンフレットの表紙には威風堂々と、そのキャッチコピーが踊っていた。


……宇宙怪獣から地球を守ろう!


 一条和馬は何度も凝視するが見間違いではなかった。無論、そのパンフレットは遊園地のアトラクションやネットゲームのチラシなどではない。

「ん、んん~?」

 和馬は首を傾げた。人を信じられなくなったことは数知れないが、自分の目を信じられなくなったのは始めてのことだった。

 宇宙怪獣の存在は和馬でも知っていた。

 ときおり地球の、いや、日本のある地域に落ちてきてはその都度撃退している。

 そんな話を和馬はよく耳にした。しかし、遠い世界のことだと感じていた。


 自分には関係無い。


 ずっとそう思っていた。

 さらに和馬が理解に苦しむのは、どんな理由でそのパンフレットに宇宙怪獣の事柄が載っているかという点である。

 そのパンフレットの場所と宇宙怪獣の間には、まるで接点など見当たらないように思えるのだが……。

「あの、師匠。これって……?」

「お前は明日からそこへ行って、青春をエンジョイするのだ!」

 パンフレットを調達してきた和馬の師匠である、上杉竜也が何故か誇らしげに胸を張る。

「青春をエンジョイって」

 30半ばのオッサンが何を言ってるんだ……。

 正直、和馬はちょっと引く。

「あれ? 師匠、明日って言いました?」

 青春うんぬんよりも、そっちのが重要じゃないか。

「うむ。和馬、お前は明日から晴れて新葉学園の1年生だ」

「ちょ! 明日って!! 準備とかどうするんですか!?」

 もっともな理由で和馬は声を荒げた。全く、このオッサンときたら……。

「そんなつまらん事は気にするな。その身1つ、行けば何とかなる!」

 がっはっは!

 上杉は大声で笑いだす始末だ。

「マジかよ……」

 不平をたらたら洩らしながらも、和馬は明日の出発に備え支度を始めた。

 なんだかんだ言いつつも、和馬は師匠である上杉に信頼を置いていた。きっと悪い話ではないのだろう。

 それにここでゴネても決定が覆らないことは、今までの経験上わかりきっていた。

 ただ腑に落ちない点、というより非常に気にかかることがあった。

 高らかに笑う上杉を尻目に、和馬は再びパンフレットをまじまじと眺めた。

 そのパンフレットは、


 私立新葉学園


 の学校案内である。制服を着用したモデルや校舎の写真、学園のあらましが掲載されていたりと、ごくいたって普通の内容なのだ。


 宇宙怪獣と戦うという1点を除いて。


「普通の高校が、一体どうやって宇宙怪獣と戦うんだ?」

 ふつふつと、和馬の胸中に興味が湧き上がってきた。

 パンフレットの表紙こそ例のキャッチコピーが踊っているが、それ以外のページでは宇宙怪獣について全く触れられていない。

「それこそ師匠の言うとおり、身1つ行けばわかることか」

 和馬は1人、ごちた。




 かくして、一条和馬は新葉学園に編入することが決定した。

 夏も終わりを迎えようとしていた季節の出来事である。

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