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7話:青系統

夕方・・・?

いいえ、真夜中です。



゜・。(。/□\。)。・

戦いは一瞬にして決着がついた。決して相手が弱かったわけじゃないと思う。でも本当に早かった。何よりも2人のコンビプレーのすごさだった。

「それよりも………あの敵斬っちゃってるけど死なないのか?」

本当はこんなに冷静に対処するべきではないところだと思っていたが、展開の速さについてこれずに混乱しているだけであった。

「死ぬわね。でもこちらにも被害が出ているの、怪我人が多数ね。だからしょうがないことだとは思う、ってのがうちの組織の考え。私もそんなのは嫌なんだけどねー、こればかりは………どうしようもならないのよ、れいやん」

そんな、と俺は思った。あまりにも速くに人が死んでいる。この世界の秩序。

死んだら終わりというのは現実と同じ。しかしそれには多くの人の手がかかわってくる。

こんなの、ただのリアルゲームだ。死んだらその人は終わり、生き返らすことも出来ないのだろう。

悲惨と恐怖。考え方に俺は寒気を感じた。

「………私たちはなるべく殺さないようにしているわ。今回はたまたま、アジトに踏み入ってきたからよ」

表情を消して、怜那はそういった。

「ごめんねーれいやん。こんな殺したり殺されたりの世界なんか嫌だろう? 知ったからって別に責任感じて仲間になる必要性なんかないんだよ。普通の生活に戻りたいのなら戻ってもいいんだよ。それを誰も咎めようとなんてしないよ」

「灯花さん! でも………私は」

残念ながら俺はひねくれている。前にも言ったがひねくれている。

だから、この展開に燃えるような男ではないし、人のために頑張れるような人間でもない。

真っ先に逃げを選択するだろう。

「まぁ、期限は3日もあるんだし、じっくりと考えるといいよ。私としては仲間がほしかったけどねぇ?」

そういって灯花さんは、大きく背伸びをする。

「ところで、何で3日、なんですか? 」

「ああ、それか。それはね、通行石って中が空洞になっているでしょう? そこに時間がたつとエネルギーが溜まるんだ。満タンになったら、この世界にある鏡に突っ込めば、もと入ってきた場所に戻れるって寸法。緑色の通行石なら約3日ってこと」

「そうなんですか………ってことは、怜那が俺んちの鏡から出てきたってことは……俺んちから入ったのか!?」

「違うわよっ!」

「だって俺んちの鏡から出てきて………」

「あー、それはね、多分『小悪魔的な鏡ゴブリンズ・ミラー』ね。ランダムで現実世界の魔鏡に飛ばされるの。れーちゃんはそれを見つけるのが得意でね、それにいつも入っちゃうのよ。あっ、そうそう。それで思い出したけど、情報は集まった?」

ここで話題転換が諮られた。俺はさっぱりついていけなくなる。

「まだです………。結構奥まで進んだつもりだったんですけど……敵に見つかっちゃって」

「で、そのままれいやん家に行き着いた、と」

「そ、そうですよ。血だらけで出てきたんですからびっくりしましたよ」

「いつものことよ」

怜那は軽くそういった。何も気にしていないかのように。

ふと、何かが引っかかった。血? 人は傷つくと血が流れる。それは当たり前のことで、怜那だって血だらけで出てきたんだ。

戦場を見回す。そうか、これだ。

敵の体から出ている血・・・・・・・・・・の色だ・・・赤色じゃあない・・・・・・・

俺の驚く様子をみた怜那は、一呼吸おいて言った。

「あれ?……もしかして気づいていなかった? アレは人間なんかじゃないわよ?」

人間じゃないソレは、確かに人語────日本語か、を話していたはずだ。

これはなんだ?

「『血無しノン・ブラッド』、鏡の別天地の先住民だ。戦闘に特化したタイプでな、気性が荒く多少厄介だ。何が重なったのかまったくの人型でな、私も最初はびっくりしたものだ。しかも血が青色ってとこかな?血の色の概念を変えているから『血無し』。別に血が無いってわけじゃない」

「な、もう………何でもアリみたいだ……な」

「元々住んでいた彼ら彼女らとは住み分けをしたつもり。でもね、一部には敵視されていたり、共存しようと考えたりする人もいるんだけどね」

「これで話が繋がったとは思わない?」

そうか……『鍵』がほしいのは何も人間だけじゃないのか。だからこそ守っている。しかも戦闘に特化したタイプだってな。どうもご苦労な設定だ。人間と『血無し』という二種族がいるということか。

じゃあ人間と戦うことなんてほとんどないな、とそう思った。

しかし………なぜそれほどまでに鍵にこだわるのか。

「そんじゃま、れいやんにはアジトの修復を手伝ってもらいたいのだけどね」

「ああ、それくらいならやりますよ」

血無しの残骸は、いつの間にか灰と化していた。





運動不足。それが脳裏に浮かぶのは2回目だ。そんなに後悔しようが筋力的に限界。

灯花さんは炎で溶接しているし、怜那にいたっては鉄版らしきものを持って走り回っている。

小さな体のどこにそんな力があるのか。………あ、能力があったな。

俺の能力ってどんなものになるのだろう。

ふとそんなことが頭に思い浮かんだ。まず、発動条件ってあるのか?

どう使うんだ? いつ覚醒するんだ? などといった痛い痛い考えが頭を埋め尽くす。

中学二年生特有な心の在り方。俺もそんな時期があったきがする。

「いやいや、能力なんかなくていい。そんな異能の力なんていらねーよ」

日常生活に差し支える。というか待て、何で俺はここに再び戻ってくること前提で考えてんだ?

3日間考えろって言われたはずだった。答えが自分の中ではもう出てしまっているのか。

待て待て、こんなことに巻き込まれて日常生活はどうする、もうすでに崩壊寸前だっていうのに。

俺が断ろうが今までやってきたのだろうから特に変わることなんてないだろう。

でも、何で俺はこんなにも悩んでしまっているのだろうか。

「あんた、ばさっとしてないで働く!」

「それを言うならぼさっと、だろ」

「うるさい! そんなところは問題じゃないの、奴隷のくせに!」

「何度も言うがな、俺は納得してねぇっつうの! というか誰が納得するかそんなもん!」

「いやー、残念ながら日本人はあんまりイエスっていわないんじゃないの?」

「それは前の話だ! というか話が繋がってねぇ、古いもん持ち出してくるな!」

そんな会話をしていたら、木材を運んでいるお兄さんにからかわれた。

「いやー。仲がいいねぇ」

「よくないですよ!」

「よくないわっ!」

怜那と異口同音で否定してしまった。

「ひゃひゃひゃっ! あんたらまた漫才やってんのか。ほんと面白いねぇ」

漫才をしていたつもりはない。だけど周りから見たらさぞ面白かっただろう。

「ふん………さ、さっさと働きなさいよね」

そういって怜那は資材を抱え、走っていってしまった。

「はーぁーあ。………れーちゃんは明るくなったね」

「え? どうことですか」

「れーちゃんはさ、この世界にいるときは全然笑わなくって……任務だけをこなしているただのロボットみたいなものになってたんだよ。あるとき私が、パートナーでも作ったらどうだ?って言ってみたんだ。れーちゃんは作戦の幅が広がりますねとしか言わなかった。捉えかたが間違ってたんだ。でも………れいやんに出会えてよかったと思っているよ、私は。れいやんはれーちゃんとも相性がよさそうだし」

「俺とあいつが相性がいい? それにしてはやけに突っかかってくると思うんですけど。それにあいつは俺の名前とかを全然、というかまったく呼ばないし」

「それは最初は私も同じだったよ。尊敬する人とか信頼している人にしか名前で呼ばないんだ! とか言ってたけど、れいやんの場合はなんか違うよーな気がするよ」

俺があいつに影響を及ぼしているとでも言うのか? 俺は大してというかまったく何もしていないとしか思えない。まったく……勘違いでもしているのではないだろうか。

何度も言うが、俺はひねくれている。






3日後、とりあえず現実に戻ることした。たまに暇があればこちらに顔を出すということにして。

俺は弱いよな………意思が。とりあえず否定でもなく肯定でもない道を選んでいる。

要するにどっち付かずで、人の期待を裏切るのが怖い臆病者なのかもしれない。

普通の高校生だと自負していたはずなのに。

「じゃ、とりあえずバイバイだよね、れいやん」

「灯花さんもなんかいろいろとありがとうございました」

アジトには、魔鏡が存在しているので、エネルギーさえ溜まればいつでも帰ることが出来る。

魔鏡を探さなければならない! なんていうことにならなくてすんだ。

「さてと」

「おい待てお前。何故にお前もついてくる」

「あ、私まだエネルギー溜まってないからあんたの手借りるわ。ほら、手出しなさいよ」

「聞け。俺の話を聞け」

「私の声が聞こえなかったのかしら? 手出しなさいって」

「俺の声が聞こえなかったのか? 何故お前がついてくる」

「ひゃひゃひゃっ! あんたら面白すぎだわ。れいやん、私に免じて連れてってやんないかね」

無限に続きそうだった無意味な会話を灯花さんが止めてくれた。

とはいっても、こいつはついてきそうな展開になっているんだが。

「仕方ないですね………」

「な、なんで灯花さんが言ったら引くの! 」

「お前話聞いてんじゃねぇかよ。 分かっててシカトするな」

「普通私みたいな可愛い女の子が一緒に帰るって言ったらドッキーってなるでしょ!」

「状況と態度が180゜違う」

そもそも学校からかえろっ! っていう状況じゃないだろう。それにそんな状況はこの世に存在しないと思っている。存在するのは二次元のみと断定しておこう。

「お前がついてくるとなると食費がな」

「なっ! そこまで食べないよ!」

そんなこと言ってこいつは会った初日からご飯3杯は食ってたからな。田舎のじいちゃんばあちゃんから送ってもらう量を増やしてとお願いしなければいけないかもしれない。

「そうか……本当の姿は貧乏神だったのか。それにしてもよく食う割には発育が………」

「殺すぞ」

「すいませんでした」

最後まで口走っていたら首が飛んでいたかもしれない。だ、だって本当のことじゃん。

そんな眼で睨むな。

「………じゃあ行くぞ」

そういって怜那の手をとって鏡へと突っ込む。

ピシィン、という音とともに視界が黒に塗りつぶされ、重力感が無くなる。

この感覚も慣れるものではないなと思いながらまだ食費について考えていた。




それと、マンションに無断で住まわせる少しの罪悪感と。














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