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29話:素麺デイズ

予定通り更新完了。

テスト帰ってきたけど結果に泣きそう。


次回の更新は6/18です。

「つーことで夏休みだ、お前ら。宿題はちゃんとやるようにな。やらなかったら校内のトイレ全部掃除させるからな。ああ、あと不良化したい奴は勝手にしろよー。ただし、最後の一線は越えるようにな」

「センセーっ! そこは最後の一線は越えないように、ではないんですか!?」

「御崎、お前は黙ってろ。お前が一番ノリで不良化しそうだしな」

「不良化したらセンセーが更生させてくれるんですか!?」

「とりあえず手足を縛ってプールに投げ入れるかな。その中で僕がクズでしたすいません、と叫べば更生完了ということにしておいてやろう」

「更生の前に転生しちゃうよそれ!?」

「その前にプールの中では叫べないだろ………」

「そのさりげない突っ込みが大事だぞ、音城」

「恥ずかしいから止めてください、センセー」


そんなホームルームがあって、俺たちは夏休みを迎えることとなった。

予想通り馬鹿みたいな量の宿題が出たのは言うまでもなく、それをどう消化しようかと頭を悩ませた。

そういえば、中学校の時は夏休み日記なるものがあって、それは不真面目な人間にとっては夏休みの最終日に立ちはだかる強敵となるのであった。

問題集やプリントなら答えを写すだけで、それなりの体力が必要だがやれなくは無い。

しかし、日記となると答えと言うものがないそれに毎日毎日書くことなどなくて、最終的には『暑かった』だの『だるかった』などといった言葉が並ぶのであった。

そんな中で悠斗はすべてのページに『暇』と書くという快挙を成し遂げた。

正直心のそこからこいつはアホだな、とそのときは思った。昔からアホなのは知っていたけども。

その後は言うまでもなく呼び出しを受けて説教されていた。

ここで考えてみよう。

現在、30ページ程度の問題集が5冊。すべてを英文で書く日記が2枚。何故か読書感想文が1枚。補充用プリントやらが40枚。

さて、どうしようか………。プリントは一日一枚やっても終わらないという図ったかのような枚数である。

俺がうんうん唸っていると、ケータイが震えた。

「んあ、メールか」

そこには『明日みんなで消化会しようよ!』というメールが。

もちろんこんなことを言い出すのは真面目なのか馬鹿なのかよく分からない(前者が本当だが)桐水しかいない。

それでもって何故か場所は俺の家。

別にかまわないんだけどさぁ………。

「おい、怜那。明日桐水たちがここくるけどいいよな?」

リビングのソファーに座ってテレビを見ている怜那に言う。

「えっ、あの人!? うぅぅ………」

そういえば怜那はなんだか桐水が苦手そうだったよな。つーか当たり前か。

っていうか、なんで俺がこいつに許可求めてんだよ!

「いや、間違えた。来ることになったから、よろしく」

「なにそれ! 決定事項!? 」

がーがー言う怜那はほっといて、メールを返信する。『オッケーだ』と。

ちなみに消化会とは宿題を消化するための会である。説明不要なほどにそのまんまだ。

消化会が決まったことですでに安心しきった俺は、夕食の準備に取り掛かることにする。

冷蔵庫の中身を確認したが、しばらくは買い物に行かなくていいくらいであった。

とは言っても夏休みか、朝昼夜と三食作らないといけないから栄養面や片寄りが無いものを作らないとな。

まぁ、途中から素麺を大量に買って素麺dayが始まるのは目に見えてるんだがな。

とりあえず今日は………素麺か。

この間買っておいた素麺をゆでることにした。

………初日から素麺dayになった。






「こんにちわーっ! 怜那ちゃんいるかなっ!?」

玄関のドアを開けると同時にそう叫ぶ桐水。後ろには久々に私服の悠斗がいた。

「ひっ!」

リビングからこちらを覗いていた怜那は、桐水の姿を確認すると奥へと逃げて行ってしまった。

「あちゃー、嫌われた?」

「いや、そんなことは無いと思うが………スキンシップ上の問題だろう」

「久しぶりに見た怜那ちゃん………可愛い」

「おい、よだれ出てるからな。とても女とは思えんな………」

「えと、早く上がんね?」

悠斗がまともな切り返しをしてきた。


とりあえず机に勉強道具を並べた俺たちは、何から始めるべきかを悩んでいた。

桐水は胡座をかきながらも周りをキョロキョロ見回し、怜那を探していた。

「でさ、とりあえず問題集が危険だと思うんだ。面に数学」

「それは同意するしかないな………悠斗にしては真面目なことを言うな」

「あったりまえだよ。センセーに殺されたくないしな」

「釘刺されたのか」

「そゆこと。で、桐水はどんだけ終わってんの? どうせお前のことだから全部とか言わないよな?」

バサッと桐水は自分のカバンから問題集を一冊と英語日記一枚を取り出した。

俺と悠斗の間に沈黙が訪れる。

「お、おい桐水? まさかそれ以外終わったって言うんじゃあ………」

おいおい、まだ夏休み初日だぞ!?

「ふっははー。当たり前じゃん、天才だからねっ! 今日は怜那ちゃん目当てで来てるんだよ」

「おかしい、おかしい! 俺だって怜那ちゃんの声聞きたいのに!」

「うお、落ち着け悠斗。桐水は別次元なんだって。比べたら駄目だって!」

カーペットの上をのた打ち回っている悠斗に言う。

桐水はふら~っと怜那を探しに行ってしまう。

そんな中、俺は思うのであった。

「やっぱり勉強会ってモンは成立しないよなぁ………」

ちゃんとできたためしがない。

のた打ち回っている悠斗は放っておいて、俺は一人問題集を進めるのであった。

にしても………量が多いな。

センセーは何を考えてるんだろうか、それでもちゃんと確認して返してくるのだから恐ろしい。

正直言ってセンセーはどんな人かと問われると、謎だとしか応えられない。

まぁ、暴力的だとかヤンキーみたいだとかは分かるのだけれども、それにしたってベジタリアンという一面ももってるし勉学に対しても厳しい。

考えたら駄目だな。余計謎になる。

と、そんなことを考えていたとき、俺の部屋あたりから怜那の叫び声(?)が聞こえてきた。

「間違いなく俺の部屋なんだろうが………。荒らすなよ?」

誰にでもなくそう言い、シャーペンを走らせる。

「ちょちょちょ、あんたぁっ!」

衣服の乱れた怜那が走ってきた。騒がしいな………。

「何その目っ! こっちは命の危険感じてんのっ!」

桐水=ロリコン=衣服の乱れ=一つの結論。

「そ、そうか。悪かったな……」

「れ、怜那ちゃん! 今こそボイスを、お兄ちゃんって呼んでぇぇぇぇぇ!」

「「てめぇは寝てろや!」」

見事に怜那と同調してボディーブローを決めた。

「ぐぼっ」

ただ殴れば収まるという展開は気に食わないが、ここは仕方が無い。

「つか、桐水は何処行ったんだ?」

「なんかあんたのベットの匂い嗅いでたわよ?」

「おかしいだろうが!?」

いや、待てよ? 普段は怜那が寝ているわけで、その匂いを嗅いでいるのなら俺には問題が無いわけで、でもそれは俺のベットであって、たまに俺だってベットで寝ることもあって、昨日は怜那は暑いからと言ってソファーで寝てたから、昨日は俺が寝ていたわけであって………。

「やっぱりおかしいだろうが!?」

全速力で俺は自分の部屋の前へと向かい、ドアを開けた。

「んう~クンクン、あぁ男の子の匂いだぁ」

桐水は布団に包まりながら俺の枕に顔をつけてそう言った。

「三回目だがおかしいだろうが!?」

布団を引っぺがして、ベットの上から叩き落す。

ふぐ、と短い声を発して床にはりついた。

「何してんだお前! 勉強会とか当初の目的は何処行った!?」

「いたいなぁ、………目的は怜那ちゃんと遊ぶことだったのに」

「やっぱりか………。大体最初からそんな気はしてたんだよ」

一人だけ宿題終わらせやがって畜生、というのが本音だったりする。

つうか、何故に怜那遊びから俺の布団へと興味対象が移ってんだよ。

「じゃ、仕方ないから勉強始めよっか。おわらせちゃうよーん」

一人テンションの上がっている桐水はリビングの方へとてててーっと歩いて行ってしまった。



「やー、今日は楽しかったよ。またくるねぃ」

「ああ、ボイスは取れずじまい………。今度取りにくるわ」

玄関で別れを告げ、部屋へ戻る。

リビングに戻ると、怜那がソファーの上で死んでいた。いや、比喩だ。

「疲れた、いや………地獄だった。もう駄目……」

死ぬ直前だった。

「わりぃな、今回は犠牲になってもらったわ」

「ほんとに………、この貸しは、大きいわ、よ……」

怜那の犠牲で、問題集はほぼ全部終わらせた(写させてもらった)。補充プリントもなかなか終わった。

「と、言うわけで。あっち・・・に行くわよ」

「は?」

ここできたか、ここできたのか。言い出すとは思っていたけれど、初日にか。

んでもって貸しを作ってしまった。ミスだ。

「何その嫌そうな顔。あんた、まだ能力解放してないんだから当たり前でしょ!」

「し、仕方ないな」

俺はしぶしぶついていく羽目になった。


そしてそれが、今までとは違う旅になるとは思っていなかった。














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