21話:謎=颯鬼
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GWは課題が多くて休むどころじゃありませんね゜・。(。/□\。)。・
狩暗 颯鬼。細身で背が高い彼は整った顔立ちをしていた。しかし、その不気味な笑みを携えているせいか、格好がいいというよりも恐ろしいといった表現が当てはまってしまう。
髪は長めで、前髪の先端が目を覆うギリギリのラインで保たれていた。
彼の腕はもう元に戻っている。そう、アレは能力だったのだ。
黒く鋭くコーティングされた手だった。『硬化』の類の能力だろうか、怜那の太刀を受けてもびくともしなかった。怜那の強化された身体能力の力を持ってしても。
「なぁ………いつまで歩くんだ?」
会話も何もなかったその背中に、問いかける。
「あぁ? 知るかそんなこと」
「しらねーって………どういうことだよ。適当だな」
「至るまでの時間なんて俺が知るわけないだろう?」
「そりゃ……そうだけど、ね」
自由奔放、いや、行き当たりばったりか? 何かと適当な性格の持ち主らしい。
「そういやそうだよお前、なんで俺が分かったんだ?」
「え? どういう意味だよ」
「なんでさっき俺を発見できたか、って聞いてんだよ。バリバリ気配消してたはずだぜ?」
「気配も何も、姿見えてたら意味ないだろ」
「あぁ? 見えてた? 俺がそんなヘマするわけんねーだろ?」
ぐぐぐっ、と近づいてくる。身を引くと、そのせいで後ろを歩いていた怜那が俺の背中にぶつかる。
「ふぐ………何してんのよ」
「いや、こいつが詰め寄ってくるからだな………」
というかさっきからまた機嫌が悪い怜那だ。俺にはどうすることもできそうにない。
颯鬼はニィィ、と笑って怜那に言う。
「怜那────だったか? そんなに落ち込まなくてもいーってよ。俺に太刀筋止められたのは悔しいかもしれねーがな、それは仕方ねーんだよ」
明らかなる挑発。ていうかこいつ、火に油を注ぐような真似してんじゃねぇよ!
絶対この二人は仲良くなれないと思った。
「………」
一方怜那はシカトを決め込んでいるので、仕方なく俺が話す。
「お前の能力てさ………何なんだ? 俺には『硬化』のような感じに見えたけどさ。そんなんじゃあないだろ?だってあの怜那の太刀筋を受け止める─────しかも片手でなんておかしい」
「おかしい─────ね。確かにおかしな能力ではある。つうかさ、俺の能力名を知ったときってのはさ、
そいつが死ぬときだよ
…………なんてな。びびったか?………んだよ。そんな顔すんなよ。ジョーク、軽めの」
いや、びびったなんてものじゃない。本気で死んだのかと思った。
怜那の出す殺気とは違う何か、絶対的な圧力、威圧感。
言っているときは、明らかに俺を殺す気だった。今にも飛び掛ろうとする勢いが感じられた。
その瞬間が。瞬間が、大きな恐怖だった。そう、ほんの一瞬のことなのに。
「あんた、………あいつ、ほんとに仲間だって信じていいの?」
怜那が後ろから小さな声で話し掛けてくる。声は少し震えていたような気がする。
「そんなこと言ったってな………。仮に敵だとしてどーすんだよ。とりあえずは味方………だと思いたい」
「思いたいって………何よそれ」
「しょうがないだろう? こんな状況で、しかも俺はまだ能力とかないし」
「ほんと無能ね………馬鹿」
「………」
言い返す言葉がなかった。まぁ………うん。
「おーい、お前らはナニやってんだよ。さっさとこねーと置いていくぞ?」
俺と怜那は顔を見合わせて、仕方ないと頷くことしか出来なかった。
「というかさー。お前………えっと、玲夜ンだっけか? お前は能力なんなの?」
「とりあえずれいやんはやめろ。というかやめてください」
「あん? なかなか面白いと思ったんだがな。でさ、後者の質問に答えろよ」
お前は教えてくれないくせに、と軽口は叩けなかった。
「えーと、な。俺はまだ持ってないというか………」
「へぇ、お前さ、こっちに来るのは何回目だ?」
「えーと………」
怜那に無理矢理連れられてが一番最初で一回目。
怜那に無理矢理連れて行かれたがバラバラになったって言うか、そういうのでリツカ帝国と関わったのがたしか2回目。
で、今回も無理矢理連れられてのパターンで3回目………?
というか毎回無理矢理つれてこられていないか?
「3回目………かな?」
「3回目ぇ!? そんでもってまだ能力もってねーのか? こりゃ面白いなぁ、普通はこっちで3日は過ごしてりゃあ嫌でも目覚めるもんだぜ?」
ということはもう一回目に来たときから目覚めていないとおかしいってことか………?
「もしかして『能力無』っていう能力じゃあないだろうな!? それだったら大爆笑だぜ」
それはシャレにならないな………。
「でも、可能性はあるぜぇ? まだ目覚めていないってことはなぁ」
「それに関してはもう笑うしかないよ」
気楽に話す俺たちの後ろでは、怜那がまだ不機嫌そうな顔をしていた。
「さ、着いたぜ。ここだ、ここ」
そこは、大きく開けた場所だった。ドーム状の造りになっているそこは、例えるなら体育館のようであった。
窓は一つもなく、光は差し込まない。だが真っ暗というわけではない。電気はないのだが、なぜかほんのりと明るいような気がする。
「というか着いた、とかいわれても…………何もないぞ?」
まさか、ここがお前らの墓場だ!とかは言い出さないだろうな………。
「上だ」
「上?」
颯鬼が天井を指を指すので、上を見上げてみた。
そこには、大きな魔方陣とでも言うのだろうか、そのようなものがたくさん張り巡らされていた。
それらは淡く白く光っていて、それが光源となっているのであった。
「これを反転させるんだが………面倒だからさ、というか俺そんなことが出来ないからさ、ぶっ壊すわ」
「は?え? 何いってんの?それがどっかに繋がるんじゃねーのか?」
「いや………なんて言うのかな? 俺にしか出来ないんだよ。これ。反転しない方法の魔方陣の使い方。えっと、なんだっけ? 怜那だっけか? お前は反転できんのか?」
「………できない」
愛想が悪いというかそっけないというか………明らかに敵対。
「………つーわけで、俺が天井から魔方陣を引き剥がす」
「………?」
「何言ってるかわかんねぇって顔してるな。まぁ、俺が実際やるから見てろって」
そう言うと、颯鬼はめきめきと骨を鳴らし、手を掲げた。
その手が、黒く、感覚的に言えば鋼鉄化したような感じがする。
颯鬼は軽く屈むと、そのままものすごい跳躍力で飛び上がった。怜那が飛んだときと同じくらいだろうか。
そのまま天井に触れるのではなく、魔方陣を引っ張った。
まるで蜘蛛の巣を引っ張っているかのように簡単にするりと抜いて、地面に貼り付けた。
「ほい、これで完成かな?」
「…………」
「…………」
俺と怜那は黙って見ているだけだった。
「お前らなんつー顔してんの? ほら行くぞ」
地面に貼り付けられた魔方陣に踏み込むと、鏡に入り込んだときと同じような感覚に襲われた。
「ねぇ、あんた………あいつのことなんだけど」
無事に新たなアジトに着いて、颯鬼とも別れたあとに、怜那が口を開いた。
「毎回思うがお前の台詞は代名詞が多すぎてたまに意味わからん」
「そんなことはどうでもいいのよ」
「よくねぇよ。とりあえず俺の名前くらい呼べよ」
「なっ、呼ぶわけないでしょ! 馬鹿じゃないの!?」
「馬鹿まで言われる覚えはないぞ」
「ま、まぁ。そこら辺は置いといて、あいつ………普通じゃない」
「そりゃあそうだろ、仮にも能力持ってるんだし。そんなこと言ったらお前だって普通じゃないだろ」
「そういうことじゃないの! 魔方陣を触るなんてこと………普通は出来ないの。触ったら発動するものなの、普通は」
「なんか、俺にしか出来ない、なんてことを言ってた気がするけど」
「あいつの能力は………『硬化』なんてものじゃない。刀を向けて分かったわ」
「うーん。でもさ、ここまで無事にこれたんだし、敵じゃないだろ」
「そんなこと………分からないわよ」
「そうやってすぐ人を疑うのはいけないぞー」
「なんのなのそのキャラは! 無能っ!」
「それ言うのやめねぇ?」
「うるさいっ! 無能無能無能無能っ!」
いつもよりか会話が弾んでいた。それは先ほどまでやはり緊張していたからであろうか。
狩暗 颯鬼の存在によって。
一緒にいて、面白そうな奴ではあったけども、安心は出来なかった。
どこか不安定な感じ。いつ暴れ出すか分からないといった風に。
スイッチの緩い爆弾を抱えているような感じだった。
「よー、れいやん。お久だなー」
今日は青でまとめているのだろか、全身青ファッションの灯花さんが向こう側から歩いてきた。
「灯花さん。久しぶりです」
「どうもです」
怜那が真っ先に挨拶をした。むう、どれだけ慕ってんだ。
「れーちゃんも変わんないね、………いや?変わったのか?」
「どこがですか?灯花さん」
「うーん。………なんとなくだけどうれしそう!」
「灯花さんに会えたからですよっ」
「そうかそうかー。れーちゃんは可愛いなー!」
そして置いてけぼりの俺。ほんと、姉妹のように仲いいなあの二人。
怜那もなんだか、楽しそう、というか普通にうれしそうだ。
「っと、れいやん。そういえば君の話だよ」
「なんですか?」
「えーと………まだ、目覚めていないんだって?」
「………あー、そうですね」
「無能なのよ」
「こらこら、れーちゃん。そんなこと言っちゃあいけないよ。れいやんだって気にしてるでしょ?」
「えー、とまぁ、多少は」
「こいつにはやる気が足りないのよ」
それを言うなそれを。無いわけじゃないぞ、………いや、足りねぇって言ってんのか。
「って、言った私が言うのもなんなんだけどね………あの、れいやん?」
「へ? なんですか、灯花さん」
「えーと、あなたね。こちらに来るのは3回目って聞いたわ」
「はぁ、そうですけど」
「でね、普通は、よ。能力に目覚めているわけよ」
「………」
「だからね、なんの能力もないって言うのはありえないわけで、やる気が足りないのか『能力無』なのかどっちかなのよ」
ああ、そんな能力はもう存在していることになっているのか。
「私は、前者の方だと思うの、というかそうじゃないと駄目」
「色々と私情が挟まってる気がするんですけど」
「だからね、特訓?というか無理矢理出してもらうことにするわ」
「はい──────?」
俺が返事をし終える前に、視界は黒に染められた。
そう、ブラックアウトした。




