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1話:鏡の修理代

どうも、鳴月常夜です。

To the way of the mirrorという2009年12月~2010年12月にかけて書いた自分の過去の作品の誤字・矛盾・行替えなどを修正して再び投稿することになりました。

これは、作者が書きたいことを書き殴ったというレベルのお話なので、過度な期待はしないようお願いします;


なお、元の投稿作品は削除しました。


修正を少し加えただけなので、話自体は変わらず、文体もそのままの状態です。各題名も大した変化はありません。

三年前の自分の特徴が見てとれます。


この作品は2日に1回ペースで更新する予定ですので、どうか皆さんよろしくお願いします。m(_ _)m


また、鳴月常世の他の作品もよろしくお願いします。



追記:この状況でこれを手直ししたということは、新作を読んでくださっている皆さんからすれば何をしたいのか分かりますよね……?



赤黒く染まった空の下、少女は廃ビルのかろうじて原型をとどめていた階段を駆け下りていた。

自分はそんなに弱かったか、そんなことを自問しながらただひたすらに走り降りていた。

ギュウイィン、という金属を擦ったような音が聞こえ、上から無数の斬撃が飛んでくる。

身をかがめて避けようとするが、数が多すぎる。頭や体をかばいながら走る。

斬撃は、腕や肩をぞぶり、と容赦なく切りつけてくる。

止まったら狩られる。それだけは分かりきっていることだが、逃げる術が思い浮かばない。

アレ・・が無ければ話にならない。どうにかして見つけないといけない。

背中に背負っている刀も、今ではただの重りにしかならない。

だからといって手放すわけにはいかない。

絶対に─────。


階段を降りきると出口に向かって一直線に駆けた。狩猟者も階段を降り終えたらしく、剣を構えるような音とともに威圧感が背を襲った。

目を辺りに走らせた結果、逃げる方法────あった。

柱の影に隠れていた、反射率100%のそれ・・・・・・・・・・を発見した。

彼女はそれに向かって方向転換し、頭から突っ込む。

場所は、どこでもいい。とりあえずここから逃げさえすれば。

まるでテレビの電源を落としたようにブツン、と意識が途切れた。

「ハッハ、逃げやがったよ。アレだけ威勢は張っておいてこれかよ」

少女を追っていた狩猟者はそういい切ると舌打ちをして、再び階段を上っていった。




ピピピッ、午前6:00。いつも通りに目覚し時計が鳴る。

ベットから体を起こし、カーテンを開ける。差し込む日差しに顔をしかめながら外を見る。

雲ひとつ無い空に輝く太陽。町は朝の静けさにつつまれていた。

犬の散歩をしている学生もいれば、河川敷でジョギングをしている中年の男もいる。

平和。そんな言葉がごく当たり前のように存在する世界だった。

窓から離れ、顔を洗うために洗面所へと向かう。


鏡に映るは自分の顔。勝手にランクを付けるなら上でもなく下でもなく中。いや、自分で思っているだけかもしれないがそんなところだとは思う。……少し盛ったかもしれない。

成績も平均点ちょい上。学力も普通。運動なんかは得意だと自負しているが、高校に入ってから部活をやっていないので筋力もそこそこだろう。

要するに普通の高校生なのだ。

顔、学力、運動能力、どれも普通の普通人間。

普通、と言うのが何を指しているのかは分からないが、普通だ。

ぱち、と鏡の中の自分と目が合った。

目の色は黒、髪の毛も飾らず黒。

見なれた顔を眺めつつ蛇口を捻ろうとした瞬間、ビキィッと鏡に亀裂が走った。

「え………?」

亀裂はみるみるうちに鏡の上から下までを覆い尽くし、膨れ上がった。

それを例えるなら、巨大な卵が孵化する瞬間のようだった。

これはおかしい、絶対におかしい。

バリィ! という効果音とともに鏡と少女が吹き飛んできた。

「えっ、えぇぇぇっ!?」

鏡の破片を払いつつ、少女を受け止める。

ズン、と来る少しの重さを支えつつ後ろの壁に激突する。朝から肉体的ダメージかよ、と背中の衝撃に咳き込みつつも、状況を確認する。

割れた鏡、傷だらけの少女、それを抱える俺。

「理解できるかっ!」

息を荒げながらも頭をクールダウンさせる。そうしようと試みる。と、そこに俺の思考を中断させるほどの異常を感じた。血だ、血が少女から溢れている。

何よりもこの子の手当てが先だと思う。肩の部分からの流血が酷かった。

そんなには深く切られていないようだが、傷の数が多い。早めに圧迫しておいたほうがよさそうだ。

切られた・・・・? 俺は自分で思ったはずの表現方法に違和感を感じた。

鏡から出てきたのもそう、何かおかしいんだ。

「う………くっ……」

小さく少女が呟いた。

「救急車………は」

呼んではいけない。女の子か傷だらけで家にいますってどういう状況だ。

間違いなく警察行きだろうな。

俺の知識で出来る範囲内でやるしかない。少女を抱きかかえ、ソファーへと向かう。

時計はもう6:30を指していたが、気にしている暇は無かった。今日はあまり学校に行きたくない気分だったのだ。

ソファーへと少女を寝かせたあと、物置部屋へと向かう。

確かあったはずなんだ、ここに特製救急箱が。物置部屋はごちゃごちゃとしていて、足の踏み場もなかった。もしかしたら何かが住み着いているかもしれない。黒い何か。

物がかさばる中で、鈍い白色をした箱が見えた。

それを手に取って少女のもとへと再び戻る。早く止血を、それだけを考えて。

が、ソファーの上には少女はいなかった。

どこかへいった。どこだ? 動き回れるような体力は無いはず。


ふと、視界の端に何かを捉えた。


ガシン! と鞘のついたままの刀が振り下ろされた。

それをぎりぎりのところでかわす。いや、軌道が途中でずれた。

目の前のフローリングの床に力なく鞘が叩きつけられる。

「お前っ、怪我してんだから動くな!」

「ぅる………さぃ」

少女は小さく呟いてから床に崩れた。

「お、おいっ! 」

急いで少女のもとへと駆け寄り、意識を確認する。

綺麗な黒髪に埋もれた白い肌。長いまつげに花のつぼみのような口。

『可愛い』という言葉が当てはまるのだろうか。多分そうだろう。

紺のスカートに深い緑色の制服。どこかの学生服だ。ここら辺では見かけない。

それよりも、処置をしないといけない。

包帯を取り出し、患部に巻きつけていく。

「何でか知らないけど……今は親父に感謝かな」

やけに冷静でいる自分がおかしくて、小さく独り言をつぶやいた。






午前9:00。普段ならば学校でホームルームを受けている時間だろう。

少女はまだ目覚めない。

冷蔵庫に目がいったことで、まだ朝飯をとっていないことを思い出した。

簡単なもので済ませようと思い、フライパンを出し、火をかける。

ベーコンエッグ。これこそ時間の無い人の友だ。

へーコンがじゅぅ、といい音を立てて焼ける。いい匂いがあたりに充満していく。

あとは卵を落としてしばらく焼けば完成だ。

一応2人分作って、皿に乗せる。

腹の虫がそろそろ暴れ出しそうだな、とそう思った瞬間。


「動かないで」


冷めた声が台所に響いた。

首筋にはヒヤリとした物が当てられている。先ほどの刀だろうとすぐに理解できた。

取り上げておけばよかったな。と思いながらも冷や汗が流れる。

殺気、そんなものが本当に存在するなんて知らなかった。

少女の威圧。まさにそれなのだ。

「銃刀法違反、だろ……」

「関係ない。あんたを殺せばバレることなんてないわ。バレなければ犯罪じゃない」

「それは馬鹿の考えることだ」

「この状況でよくそんなこといっていられるわね」

沈黙が訪れる。

この状況、どうする? このまま殺されるか? さらし首? 非日常の展開に俺は少し動揺していた。

だが次の瞬間。少女のお腹が鳴った・・・

「なっ……くぅ」

「と、とりあえず飯にしようか」

俺の策とは関係なく状況の打破に成功した。






よほど腹が減っていたのか、茶碗の中の米が超高速で消えていく。

俺はそれを唖然と見つめるしかなかった。

「さ、さっきは………背後を取ったりして悪かったわよ」

俺の視線を勘違いしたのか、少女は口元にご飯粒を付けながらそう言った。

謝る内容もおかしいと思うのだが。

「聞きたいことがたくさんあるんだが」

「あんた学生でしょ? 学校は?」

「俺の話は聞かないのか? それとも聞こえていないのか?」

「もう9時すぎじゃない。もしかして不登校って奴?」

「お前を助けたらこうなりました。何か言うことはありませんか」

「ごめんなさい」

以外にも素直に謝った。というかそれ以前に会話のキャッチボールが出来ていない。

まだ目覚めてから3時間程度しか経っていないのにすごく疲れているような気がする。学校に行ったわけでもないのに、だ。

「そういえばこの包帯……あんたが?」

「そーだけど。親父が医者だからな、包帯の巻き方ぐらいは知ってる」

「ふーん」

少女はそういうと、シュルリと包帯を解いた。

包帯が巻いてあった白い肩には、一つも傷がなかった・・・・・・・・・

「なっ!?」

鏡から出てきたのもそうだけど、こいつはやっぱりおかしい。

「超回復能力。そんな類のものね」

そんなことを普通の調子で言われても困る。

「お前、何者だよ!」

「ただの人間。でも、確かに存在する他の世界・・・・を知ってる。」

「意味がわからん」

「え? あんたも知ってるでしょ?」

「何をだよ」

鏡の別天地アナザー・ワールドのこと!」

………こいつはとんでもなく痛い子なのではないだろうか。

空から女の子が降ってくる出来事並に痛い。大体あんなことは実際にありえない。

あるとするのならば、自殺志願者が降ってくるだけだろう。そんな状況には巻き込まれたくない。

「あのな、………俺は同業者でもその他の世界の住人でもなんでもないんだが」

「え? だって刀当てられて微動だにしなかったじゃない」

アレはビビリ過ぎて動けなかっただけだ。

「私、鏡から出てきたでしょ!?」

「ああ……」

「なんでおかしいと思わないの!? あんたはアレですか? いまだにSFを夢見る痛い人なんですかぁ!?」

「お前に言われたくないんだが!あと、俺は痛くない」

「だっておかしいじゃん! 普通おかしいって思うじゃん! 警察とか呼ぶじゃん、それであんた捕まるよ!」

文脈がいろいろとおかしいが、まぁ………これは救急車を呼ばなくてよかったということなのだろう。

「呼ばれたことあんのか」

「うん」

「………」

その人は警察行きか。鏡まで壊されて気の毒だな。

というかこいつは他でもそんなことやってんのか。

「えぇぇぇ……私馬鹿じゃん。一人で盛り上がってたよ……」

肩をがっくりと落とし、机に突っ伏す。

先ほどの殺気は本当にこいつが出したものなのだろうか? 刀を当てられていたから恐ろしく聞こえただけなのかもしれない。

「まぁいい。傷治ったらさっさと出てけ。俺は学校に行く」

「ちょっと待って! いや、ほんとにあんたおかしいでしょ!」

「いーからでてけ、この行為が俺を普通だと物語ってるぞ」

「ふぅぅぅぅ……」

背中を押して、外に出す。もちろん俺も一緒にでる。

鍵をかけて、カバンを肩にかけなおし、少女と向き合う。

「じゃ、どこにでも行け。その代わりもう他のところの鏡壊すなよ」

それだけを言って俺は背を向けて、階段を下りた。

これであいつとはおさらば、短い付き合いってこういうことを言うんだな、と思った。

「ちょっと! なんであんたそんなに冷静なのよ! ねぇ!」

少女のそんな叫びが聞こえたが、振り向く必要性を感じなかった。



俺は学校へと向かう道の途中、壊れた鏡の修理代のことだけを考えていた。














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