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6.ごかい


 あ、今日もイケメン来てる。

 西上さんの手が一瞬止まって、またDVDのバーコードを読み始める。

 仕事真面目にやらないと、片山さんにまた怒られちゃうよ。まあ、僕の声なんて西上さんには聞こえてないんだろうけど。

 しかし最近、イケメン――神崎さん、だったっけ。片山さんがそう呼んでいるのが聞こえたんだけど。

 神崎さん、よく見るようになったよね。それはそれで仕方ないのかもしれない。だって神崎さんは、店長のそのまた上の、エリアマネージャーって人らしいから。

 普通は店長と一番コミュニケーションを取るらしいんだけど、神崎さんは店長と同じくらいの時間を片山さんとも話して過ごすんだよね……。

 しかも、すごく仲良さげにね。

 片山さんって、笑うと結構可愛いということを、僕この間初めて知ったよ。

 西上さんには、いっつも冷たい目線か無表情かのどちらかしか向けないから、片山さんって実は笑わないんじゃないか、って思いかけてたくらいだし。

 神崎さんは神崎さんで、とても優しく片山さんに笑いかけているし、恋人なんじゃないかと一瞬疑ったくらいだ。バイトさんの噂では、「まだ」付き合っていないらしいけど。

 今日も今日とて、二人は仲良さそうに打ち合わせをしている。

 仕事の打ち合わせがあんなに楽しそうだなんて……もうこれは二人の仲は決定的だって思っていいのかな。

「あの……早くしてほしんですけど」

 お客さんの声に振り向いてみれば、西上さんも僕と同じように二人を見ていたらしい。そして接客中だというのに、手を止めていたらしい。

 あははは。

 片山さんがおっかない顔でこっち見てるよ。

「申し訳ございません」

 西上さん、顔が赤い。……こうゆうときちょっとだけ、西上さんのことが可愛いって思う僕は、大分西上さんに毒されているんだろうなあ。




 西上さんはまた青い顔をして、スタッフルームから出てきた。これで片山さんにこってり絞られるのは何度目になるだろう。いい加減学習したらいいのに。

 というか、そんなに片山さんに注意を向けていなければ、西上さんはそこそこ仕事が出来ているほうなのになあ。惜しいよなあ。

 多分、自分が見られているのが西上さんの失敗の原因だとは思っていないんだろうけど、片山さんは西上さんがちゃんと仕事出来るってことを知ってるんだと思う。だから、きちんと叱るんだ。

 そう考えると、片山さんってやっぱりすごい人だな。尊敬する。

 西上さんがスタッフルームを出て暫くすると、帰り支度をした神崎さんと片山さんが連れ立ってスタッフルームから出てきた。一緒に帰るんだ。それって、やっぱり……。

 西上さんは、二人の様子をじっと見ている。……ショックだよ、ね。

「西上さん、ライバル現れたわね~」

 西上さんとほぼ同じ時期にバイトに入った松本さんが、楽しそうに言う。

「あ……うん。そうだ、ね」

 西上さんは苦笑いで、松本さんの言葉に応えた。

 もう、はっきりしないなあ。

 僕はちゃんと、西上さんの想いを応援したいのになあ。




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