24.かくせい
またもや天使に関する適当な設定が書かれています。
苦手な方、嫌悪感を抱かれる方はバックをお願いいたします。
目が覚めた。
どこだろう、と一瞬考えて、ああそういえば死んだんだっけ、と思い出す。
「死んでない。いい加減起きろ、佑」
――僕は跳ね起きた。と言っても身体があるわけじゃないから、正確には言葉が発せられた方向を知覚した、んだけれど。
「死んでないっていうのは、正確じゃないか。まあ確かに一回は死んだ。おまけに二回目も見事にあっちへ行った。そして三回目の御目覚めだ。気分はどうだ?」
気分? 気分って言っても、そんなもの僕には無いよ。身体無いんだし。
「そうか……俺が誰か、分かるか」
ええと……。
「ボケてる振りを続けるなら、また暫く無視するぞ」
ええ!? 西上さん無視してたの!?
「食いつくのはそこなのか……まあいい。で、俺が誰かは分かるようだな。じゃあ、お前は誰だ?」
西上さんの鋭い目が、僕をまっすぐ見ている。久しぶりの意思疎通だなあ。実際、西上康也と現実に会話したのが、本当に遠い昔だったのだと思い出す。
僕は川上佑……川上縁の弟で、生前西上さんと個人的に親しくさせて貰っていた、ごく普通の人間。だった。
どうして「だった」なのかは、まあ死ぬ間際に「じゃあ機会があったら、君の仕事を手伝うよ」なんて、ぽろっといった事が原因かなあ、と思う。
「肉体も精神も人間のままなのに、仕事手伝うとか根性あるよな、お前」
ほっといてよ、これでも後悔はし尽くしたよ。
「でも死んだはずが、仕事の任期が終わっていないからって、送り返されてきちゃあ死に甲斐がないな、本当に」
……放っておいてくれよ、それこそ。
「けれど、天使の剣先に飛び込むなんて、お前もなかなかやるな」
西上さんがにやっと笑って言う。確かにね、自分でもびっくりした。
けれどそれで西上さんが今、生きているんでしょう? 大怪我はしてるみたいだけど、僕が守った命だ。感謝してほしいなあ。
「悪いが、感謝する気にはなれないな。神崎さんは俺を殺す気なんか、これっぽっちも無かったんだから」
……は?
どういうことでございましょう?
「知らなかったのか? 天使は一日一回の狩りしかできないってことを。しかも命日《その日》だと決めた相手しか狩れない」
……それで?
「同じ天使が同じ相手を狩れるのは、相手の人生で一回だけだ。そしてこの二千年の間、神崎さんは片山さんをしっかりと狙った日に狩ってきたんだ。お前は彼の片山さんを狩る機会を、奪ったってことになる」
よくわかんないや。要するに?
「要するに、お前が守ったのは俺じゃなくて、片山さんの命ってことだ」
でも、西上さん。命の危険が無いならどうしてあの場で動かなかったの?
「タイミング見計らってたらお前が勝手に突っ込んできたんだろ」
……あはは。
「事後処理大変だった」
……あははははは。
「暫くこき使ってやるから、覚悟しろよ」
……僕に乾いた笑い以外のリアクションをさせてください……。
かくして僕は西上さんの仕事を正式に手伝うことになった。
片山さんがあと300年近く生きなきゃならなくなって、どうせだからと僕と一緒に西上さんの仕事を手伝うようになったりもした。
神埼さんは階級を三つか四つ落とされた上に、減俸・左遷で良いこと無しだそうだ。でも数千年に渡って一つの魂を蹂躙し続けた報いがそれだけって、正直おかしいんじゃないかと。
……彼の執着も、また一つの感情の形の一つと認められたっていうのは、若干嬉しかったけれど。
そして西上さんの仕事が、実は死神だけじゃなかったことが一番の驚きだった。
西上さんは縁姉さんと出会って少しした後、「天から見ておかしい状況や事態の推移を監視・調査し、必要にしたがって実力行使もする」という部署の仕事も請け負うようになったらしい。今回の片山さんの仕事は、それだったというのだ。
けれど、死神の仕事と同じく、こちらもものすごく薄給。薄給な上に危ない仕事も多いから、常に人手不足。基本的に西上さんは、こちらの仕事に追われているといっても過言じゃない。
……忙しくなりそうだなあと考えて、僕は意識を閉じる。
訪れるであろう、明日への覚醒のために。
とりあえず終わりました~。すっきり←
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