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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
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"花火"

掲載日:2026/10/29

毎晩深夜0時を回ると短時間、此の躰は制御を喪ってしまう

元々は僕の肉躰では無かったからなのかも知れない



こう書くと僕が『肉躰を取っ替え引っ替えして居る人間』みたいに思う人も居るかも知れないが、僕が脳交換を行ったのは生涯で一度だけだ


対象は好きになった人間の男の子で、彼は交換後に死亡してしまった

死因は脳を廃棄された事による脳死

即ち、考えように依っては彼は『生きて居る』とも言えた

何しろ僕が、まだ此の躰を使って生活して居る


話を戻そう

何(いづ)れにしても1日に1度、確実に僕は肉躰の制御を『誰かに奪われる』

前例の無い出来事であり、解決出来る技術者は居ないと云う事だった


ただ、其れは『技術者』に限っての事だ

使用人に毎夜監視させた結果、僕は既に手掛かりを掴み始めて居た



今夜も0時が訪れた

一階の広間で、柱時計が鳴って居る音がする

僕の躰はベッドの上で上躰を起こし、やがて素足のままに床へと降り立った


幸運な事に僕の意識は、此の夢遊の状態でも保たれて居る

今から始まる楽しい時間を、余さず視る事が赦された様だった


両足が寝室の窓辺に向かう

幾多の報告から、僕の躰が毎夜窓の外を眺めると云う事は知って居た


実は理由については、直ぐ思い当たった

脳髄を破棄されて死んだ、此の躰の主(ぬし)で在った少年の生まれ育った家が窓の外、遠くの方角にぽつんとだが視えるのだ


つまり家は、豆粒よりも小さくしか視る事が出来ない

其の為、今日の日の『演出』はとても気を使い、手間と予算を大きく費やしたものに成って居た




ぽつ、ぽつ、と


真夜中の昏い空に灯りが点(とも)っていく

実際には或る一点だけが燃え盛り、大きな火柱が天を焦がさんばかりに暴れて居るのだ


少年の生家(せいか)だった



『あ……』と、変声前の喉が悲痛な音を立てる

一拍だけ間を置いて音は喚き散らす悲鳴へと変わり、視界は窓へと迫った


───やっぱりだ


僕は云う事を聞かない肉躰の動き回る様を、演劇でも観る様に鑑賞しながら、自らの予測の正しさについて考えて居た

やはり此の夢遊状態は、元の躰の持ち主の意識の残滓(ざんし)が引き起こして居たのだ


意味を結ばない嗚咽や言葉が、濁った大きな声で喉から溢れ返って声帯を震わせて居るのが、感覚として解る

此の躰は、遂に立って居る事も出来なくなり崩折れると、視界いっぱいに広がる床の敷物を、激しい感情と共に叩き始めた



段々と状況に慣れるにつれ、僕は早くも白け始めて居た


彼の家族は生け捕りにしてある

明日からどうやって其れで遊ぶかを、僕は静かに考え始めた

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