第OOO話 縁は腹痛みたいに、来たらなかなか収まらない
意味が通じにくい箇所があれば、ぜひお知らせください。
ご感想やコメントもお待ちしております。ありがとうございます。
あと二日で、黒牙と直接対決。
なのに、私には落ち着く暇もない。
私はギルドのカウンター席で、
ひどく気が重くなっていた。
ギルドのイケメンたちが、
みんな消えてしまったのだ。
バツ奇仁まで、
何週間も休みだと聞いた。
そのせいでギルドの中は、
妙に「雌の気配」が強い。
メイド服の給仕たちが、
あちこち歩き回っている。
しかもギルドの男たちの、
いやらしい視線まで揺れていた。
まさかこんな歪んだ風潮が、
転生前の世界から、
こっちまで吹いてくるなんて。
頭には猫耳の飾り。
足にはレースの長靴下。
もう少し地味に、できないものだろうか。
たとえば、バツ奇仁。
あの人は短パンだけでも、
あんなに綺麗だった。
あの優美な体の線は、
本当に反則だと思う。
「はぁ……どうしたらいいの。」
「へえ? 玉秀、久しぶり!
まさかギルドで先に会うなんて!」
私が光の精霊を呼んで、
あのメイドたちを隠そうかと、
本気で考えたその時だった。
後ろから、王岳の明るい声がした。
「王岳?
剣士修練の村にいたんじゃないの?
朝七時に走って、八時に風呂と休憩。
九時から十一時までは、
基礎剣術の訓練でしょう?
休み時間に、メイハオ村まで戻ったの?
片道三十分なら疲れるよね。
私、回復術を……!」
「玉秀、君、知ってたの……?
僕が剣士修練の村にいるって。
しかも……
どうして僕の個人日程まで?」
「従弟があそこにいるの。
イケメンが来たって聞いたから。」
「この世界、本当に偶然が多いね。
ごめん、説明してなかった。でも、
ここ数日は休みでね。
だからメイハオ村に戻って、
みんなの様子を見に来たんだ。
元気にしてるかなって。」
「曾宝は騎士と組んでるし、
たぶん明日には戻ると思う。
曾広隊長は甘味屋で働いてるよ。
今から一緒に顔を出す?」
「えっ?みんな、
そんなに変わったの……。
うん、行こう!」
王岳の間の抜けた笑顔を見て、
私は思わず眉を寄せた。
右の頬に、
爪で引っかいたような傷がある。
胸の奥が、
少しだけ痛んだ。
「玉秀、どうしたの?」
「怪我してる!」
私は王岳の頬に触れた。
柔らかい感触が、懐かしい。
「わっ、わっ。
心配しないで。
簡単な変装用の魔道具だよ。」
王岳は翡翠の指輪を撫でた。
すると傷はすぐ消えた。
元の整った顔に戻る。
「裏口から行こうか。そっちのほうが早いよ。
曾広隊長のところで休めるし、
あの甘味屋の花茶はおいしい。」
王岳がうなずくと、
私は急いで彼の手を取った。
時間が少し危ない。
脅威が近づいている気がする。
「きゃっ、ごめんなさい!」
私たちが数歩進んだ時、
メイドがうっかり水杯を倒した。
こぼれた水を見て、
メイドは慌てて床を拭き始めた。
私は笑顔のまま、
手を伸ばしかけた王岳を引いた。
優雅に避けて進む。
裏口まで、あと十メートル。
「お客様、失礼します!」
目の前のメイドが、
二人用の卓を運んでいく。
卓の長さは、
ほぼ彼女の背丈と同じだった。
そのせいで、
私たちの道がふさがれる。
ギルドのメイド給仕って、
そんなに重労働なの?
私は「助けたい」と顔に書いた
王岳の手を強く引っ張った。
まだ時間はある。
裏口まで、あと六メートル。
「お客様、
回り道をお願いします。」
目の前のメイドは、
小型の掘削機で穴を掘っていた……。
どうしてメイド服なの?
ギルドで「奉仕」するなら、
皆あれを着る決まり?
あれが制服なら、
バツ奇仁の姿なんて、
私は想像したくない。
私は笑顔のまま、
全身から奉仕の気配を出す王岳を、
魔法でその場から引き離した。
裏口まで、あと三メートル……。
「申し訳ありません、お客様。
先ほど空間歪曲術が発生し、
ただ今対応中です……
ふふ。」
目の前のメイドは、
丁寧に私たちへ頭を下げた。
でも最後の含み笑いは、
私はちゃんと聞いた。
聖職者の笑顔が、
本当に崩れそうだった。
まさか私たち、
狙われているの?
私はすぐに、
カウンター周辺を見回した。
すると巨大な看板が、
カウンターの横に立っていた。
「本日限定恋人セット、残り100食!」
あの二つのゼロ、
わざと消した跡があった。
私ははっきり見た。
今回は王岳も、
少し冷静だった。
そのあと、
彼は私のほうを見る。
賢者として、
私は術式解除も得意だ。
私はすぐ陣を見つけ、
さっと消してやった。
「ちっ。」
あのメイド、
今たしかに見下したよね?
危うく分解の精霊を、
呼ぶところだった……。
裏口まで、あと二メートル。
もうすぐ扉に届く……。
「申し訳ありません、お客様……」
「結構です。」
「わあっ!
これ、お客様の落とし物ですか?
ううっ……」
私の顔を見たメイドが、
急に泣き出した。
手には、
さっき王岳がつけていた
翡翠の指輪がある。
王岳はすぐにそちらへ行き、
相手を気づかい始めた。
目の前の裏口までは、
もう一メートルもない。
私は止める暇もなく、
王岳はあのけん狐……
あのメイドの話を聞き始めた。
店内の套餐の話まで、
聞かされている。
その時だった。
ギルドの正面扉が、
突然大きく開いた。
王岳は気になって、
そちらへ顔を向ける。
「曾宝! 騎士!」
「王岳? うそっ!
どうして戻ってきたの?」
私は一緒に振り向かなかった。
ただ、目の前で床を片づける
メイドを黙ってにらんでいた。
さっきすぐ分解の精霊を使えば、
この目の前の「障害物」なんて、
三秒で消せたのでは?
聞き慣れた甘い声の笑い。
それに、近づいてくる二人分の足音。
私は聖職者らしい、
穏やかな笑みに整えた。
それから王岳と一緒に振り向き、
かつての仲間二人を見た。
くっ……。
あと一分だったのに。
せっかくの王岳との独占時間が、
全部だめになった……。
ごめんなさい。
新しい話の構成に、少し時間がかかってしまいました。
これからも、この物語を応援していただけたら
とても嬉しいです。
もし少しでも「続きが気になる」と思っていただけたら、
ぜひ【ブックマークに追加】をお願いします!
評価や感想、
ひとつひとつのリアクションが本当に励みになります。
これからも頑張りますので、どうぞよろしくお願いします!




