第13話 世界は、静かに答えを出す
王都冒険者ギルドの掲示板が、朝から騒がしかった。
「……見たか?」
「本当かよ、これ」
貼り出された通達は、短い。
ガルド・ハインツ率いる冒険者パーティ
度重なる安全管理不備により、正式解散。
主要メンバーは、当面の高難度依頼を停止とする。
派手な言葉は、どこにもなかった。
だが、それが余計に重かった。
ガルドは、掲示板の前で立ち尽くしていた。
怒号も、抗議も、出てこない。
出せるはずがなかった。
「……終わり、か」
誰にともなく呟く。
セシリアは、少し離れた場所で、その背中を見ていた。
魔力回路の違和感は、まだ完全には戻らない。
(もし、あの人がいたら)
考えてしまう。
だが、それは――もう、意味のない仮定だった。
バルドは、無言で装備を外す。
戦えなくなったわけじゃない。
だが、“信頼”が失われた。
それが、冒険者にとって一番重い。
一方、辺境の村では。
朝の集会が開かれていた。
珍しく、全員が揃っている。
「正式な通達だ」
カイルは、ロベルトから届いた書状を広げる。
本区域を、共同開拓区域として正式登録する。
医療・水利・生活インフラの中核拠点として認可。
どよめきが、広がる。
「……つまり」
「この村は――」
「もう、消えない?」
カイルは、頷いた。
「少なくとも、“勝手に潰される場所”ではなくなった」
それは、最大限の保証だった。
リーナは、胸に手を当て、静かに息を吐いた。
「……よかった」
ここまで来るのに、時間はかかった。
だが、壊れずに進めた。
それが、何よりだった。
その日の午後、行商人ドランが村に立ち寄った。
「聞いたぞ」
いつも通り、軽い調子だ。
「正式登録だって?
いやあ、最初に来たときは、こんなことになるとは」
「俺もだ」
カイルは、正直に言う。
ドランは、村を見回し、満足そうに頷いた。
「……で、噂だが」
声を落とす。
「元の仲間たち、解散だそうだ」
カイルは、一瞬だけ目を伏せた。
「そうか」
それ以上、何も言わなかった。
恨みは、ない。
勝った感覚も、ない。
ただ――
結果が、そうなっただけだ。
夜。
焚き火のそばで、リーナが隣に座る。
「聞きました?」
「ああ」
「……どう、感じましたか」
少しだけ、迷いがある声。
カイルは、しばらく考え、答えた。
「俺は、何もしていない」
炎が、静かに揺れる。
「自分の場所で、やるべきことをやっただけだ」
リーナは、ゆっくり頷いた。
「それが、一番残酷ですね」
誰も責めず、
誰も裁かず、
世界が勝手に線を引いた。
それが、現実だった。
ミアが、少し離れた場所から言う。
「……ねえ」
「どうした」
「ここ、ずっとある?」
カイルは、微笑んだ。
「みんなが守ればな」
その言葉に、ミアは嬉しそうに頷く。
追放された補助役は、
もう――
誰かに証明する必要はなかった。
世界が、答えを出していたからだ。
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