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追放された補助役は、辺境でスローライフを始めました 〜役に立たないと言われた俺の仕事が、村と世界を支えていた件〜  作者: 山奥たける


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第10話 善意だけでは、守れない

 朝から、村の空気が重かった。


 焚き火のそばには、見慣れない顔がいくつもある。

 前日から泊まっている軽症者と、その付き添い。

 そして――村の外で、様子をうかがう人影。


「……増えすぎだな」


 カイルは、遠くを見る。


 人が集まるのは、悪いことじゃない。

 だが、“無秩序に”集まれば、必ず歪む。


 その予感は、昼前に現実になった。


「おい! この水、使わせてもらうぞ!」


 怒鳴り声が響いた。


 泉の近くで、見知らぬ男が水を汲んでいる。

 後ろには、数人の村人。


「順番を――」


「関係ないだろ! 怪我人がいるんだ!」


 声が荒れる。


 リーナが、間に入ろうとした瞬間――

 カイルが、静かに前へ出た。


「止めてくれ」


 低い声だった。

 だが、不思議と通った。


「ここは、誰の村だ?」


 男が、睨み返す。


「知らん! だが、助かる場所だって聞いた!」


「そうだ」


 カイルは、否定しなかった。


「だからこそ、勝手は認めない」


 男が、苛立ちを露わにする。


「人助けするって言うなら、水くらい――」


「善意は、資源を無限にしない」


 その一言で、場が静まった。


「水は限られている。

 医療も、人手も、時間も」


 カイルは、泉を指差す。


「ここを壊せば、誰も助からなくなる」


 男は言い返そうとして――

 言葉を失った。


 事実だったからだ。


「助ける優先順位は、こちらで決める」


 厳しい言葉だった。

 だが、必要だった。


「従えないなら、他を当たってくれ」


 沈黙のあと、男は歯噛みしながら桶を下ろした。


「……わかった」


 小さな声だった。


 その日の午後、村の集会が開かれた。


「このままじゃ、いずれ破綻する」


 カイルは、はっきり言った。


「医療を“売り”にはしない。

 でも、“拒まない”わけでもない」


 村人たちは、黙って聞いている。


「重症は受ける。

 軽症は、可能な範囲。

 長期の滞在は、村の仕事を手伝うこと」


 それは、助け合いの形だった。


 リーナが、補足する。


「診療は、私一人では限界があります。

 応急処置を覚える人を、数人決めたい」


「……俺がやる」


 エルバが手を挙げた。


「手は、まだ動く」


 続いて、農民の一人も名乗り出る。


 村は、少しずつ“耐える形”を覚えていく。


 だが――

 すべてが丸く収まったわけではなかった。


 夕方、村の外れで、別の来訪者が現れる。


 きちんとした服装。

 だが、目つきは硬い。


「私は、下流の村の代表だ」


 男は、名乗りもせずに言った。


「最近、怪我人が、皆ここへ来る」


 カイルは、静かに頷いた。


「……その結果、うちの村は困っている」


 空気が、張りつめる。


「労働力が減り、畑が回らない。

 医者代わりが、こちらから消えた」


 責める口調ではない。

 だが、不満は明確だった。


「この村が“助かる場所”になるなら、

 その影響も、考えてもらいたい」


 正論だった。


 カイルは、すぐには答えなかった。


 夜。


 焚き火の前で、彼は考えていた。


「……全部、想定内だ」


 助かる場所になれば、

 周囲の“バランス”が崩れる。


 それを、どう支えるか。


「ねえ」


 リーナが、隣で言う。


「逃げたいですか?」


 カイルは、少し考え――首を振った。


「いいや」


 小さく笑う。


「やっと、補助役の出番だ」


 壊れそうな場所を、

 力ではなく、設計で支える。


 それが、彼の仕事だった。


 追放された補助役のスローライフは、

 今度は――

 “世界との折り合い”を試されていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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