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二十二話

 あれから噂は段々と下火になっていき話題に上がることもなくなって、今では皆、明日にある文化祭の準備をしている。


 私も接客するだけと聞いてはいたが、メニュー表を見てもたかだかハーブティ一杯でこの金額を取るのかと思いながら、看板などの設置をしたり手伝う。

 『1年3組 花の喫茶店』と書かれているのを見て、教室を見比べるが。花の要素を象っているのは折り紙で作られたものをテープでカーテンにつけた花くらいなもので、そんなに予算が無かったのかと少し呆れてしまう。


「阿澄さん接客の時ちゃんと笑顔でお願いね」

「任せてくれ」

「う、うん」


 他のクラスも覗きに行けば私たちのクラスとは大違いでしっかりとした作りの物が多い。

 予算がどうのと言ってたが面倒くさかっただけでやってなかったのかもしれない。


 適当に歩いて見て帰ると、結構な量のダンボールを運んでいて、その中身をちらりと見たらハーブティ用のパックが大量にある。


 近くにいた男子に声を掛けて。


「これダンボール一つで何人分なんだ?」

「えっとたしか百人と少し?」

「そうか…多くないか?」

「予算が足りないって言ってるけど、発注ミスだなこりゃ」


 そう言って笑ってる男子に呆れてしまうが。予算ってほとんどこのハーブティに使われたのか…。

 思わず数を数えればダンボールは二十個ほどある。一つが百人とするなら二千人は相手にしないと必ず余る量だ。


 ただよく見て見れば一つ一つダンボールの中に入ってるハーブティの種類が違うようで、変なところで拘ったから予算が足りなかったんだと分かった。


 改めてメニュー表を見れば確かに豊富な種類のハーブティがあるが、それにしたって二千人も相手に出来るほど席も足りてないし、文化祭は二日続けられて行われるが、他の教室と見比べてそんなに接客が見込めそうに感じない。


 それに初日の午前は体育館で色々催しがあるからそちらの方に人が行くと思う。外で出店をしたほうがまだ人は入りそうだ。まぁ私は協力してないからハーブティがどうなろうと知ったことではないのだが。


 その後も準備というか机の配置などを変えたりするのを手伝ってバイトや部活の子は居なくなる時間になった。

 何もすることがなくなったので、ハーブティの淹れ方を聞いて一応何かあったときのために作る側に回れるようにしておく。


 種類が種類なだけに覚えるのが少し苦労したが、教えてる子たちはよほどハーブティが好きなのか嬉しそうにしている。

 もしかしたら余ったハーブティを持って帰るためにこんなに発注したのかもしれないと変な勘ぐりを入れてしまいそうになるが、楽しんでいるならそれでもいいか。


 私はやることが無くなったので時間を確認しつつ、まだコンビニに行けばクロの退勤まで間に合いそうだと思って行ってみるが。今日は休みのようだった。


 毎回連絡してるわけではないからシフトを入れてるか確認してない私の問題なのだけど少し残念に思って明日は少しでも文化祭を一緒に周れたらと思ったが、元より約束もしてないから今回の文化祭は一人で周ることになりそうだ。



 何事もなく晴れた文化祭を迎えて、学校へ着けば校門も飾られていて少し雰囲気を感じる。

 帰りの時に見た学校までの道に出店がたくさん並んであって、花火大会を思い出して、クロならきっと色んな物を食べるに違いないと思った。


 教室に着けば早速私も準備を手伝って、クロが来たことにも気付かないほどに忙しかった。

 何が忙しいって、ハーブティの種類をちゃんと把握してるのが注文して、昨日教えてもらった人ら以外にそんなにいなかったことだ。

 私も作る側に回って、名前とハーブティの淹れ方を再度頭に叩き込んで、時間になったのか、校内放送で文化祭が開催されることを告げられる。


 お湯などはIHの物を使うことになっているが、火力が足りないのか時間がかかる。

 そんな状況とは裏腹に他クラスの生徒が来るものだから人数分急いで作りはするが、カセットコンロは火気系統の物が教室内では使ったらいけないらしいのでとにかく水道水とIHを行き来してポッドにお湯を注いでいく。


「阿澄さん、三杯分追加で」

「分かった」

「やっぱり五杯分追加で」

「分かった」


 IHコンロは全部で二つ。隣でも一生懸命作ってはいるが水が多ければお湯になるまで時間がかかるし、少なめにして温めたり、余裕が出来たら多めに入れて温めて少しずつ客を捌いていく。


 温めている間、暇な時間があれば茶菓子の包装を破って紙皿に置いて接客に渡してはまた水を温める。


 意外と人が来るものかと思い、満席になって水を追加しに行くときに廊下で行列が出来ていたのを見たときは少し嫌な思いをした。メニューが多いとはいえ素人が作るものをこんなに待っているものなのか。


 戻ってはお湯を作ってと繰り返していると、時間もいつの間にか過ぎていたのか、交代の時間が来るが。少し交代して様子を見ていたら少しずつ提供が遅くなっていって来てるのを見兼ねて、私が水の量に注意するように言ったりして立ち直していってから、安心してクラスを離れた。


 その時に服の裾を掴まれたのを感じて振り向けばクロが汗を流しながら笑顔を向けてくれる。


「雪ちゃん休憩だよね。一緒に周ろ?」

「ああ。しかし暑そうだな。大丈夫か?」

「コンビニで慣れてると思ったけど教室だと熱気が籠って大変だったよ。雪ちゃんもたくさん汗掻いてるよ?」


 言われて見れば服が少し湿気て感じる。汗などはハンカチで拭っていたつもりだが。


「お互いに大変だったな」

「なんか作る方もずっと廊下と教室行き来して大変そうだったね?」

「意外と客が入るものだから初っ端からお湯が中々沸騰しなくてな。しかし田中彩や井口冴は一緒に周らなくていいのか?」

「二人も誘ってくれたけど、雪ちゃんと二人で周りたいなって思ったから。二人には話してるから問題ない!」

「その言い方は…私を真似ているのか?」

「あはは。いつかのお返し」


 いつかと言えば花火大会の時か。

 一人で周るつもりだったから嬉しいが、それ以上にクロが私と周りたいと言ってくれたことが嬉しい。


「それじゃあどこから周るかな」

「なんか2年のクレープ屋が凄い美味しいらしいんだって、だから外から周らない?」

「そうだな。教室の蒸し暑さにすこしうんざりしていたところだ。外から行こう」


 外に出ればそれはそれで暑いが、蒸した感じはなく、風が心地よい。

 クレープ屋などの場所は把握してなかったから黙ってクロに付いていけばクレープ屋の前に他の出店に向かってたこ焼きを買い始めている。


「やはり塩っ気があるものが好きなんだな」

「そういうわけじゃないけど、疲れた時は塩分だからね」

「いつも疲れているのか?」

「そういうわけでもないよ?」


 そう言いながら一個私にくれるようで食べてみるが、世辞抜きで言うなら素人のたこ焼きだと思ってしまう。ただそんなの関係なく美味しそうに食べているクロを見ればちゃんとした店で食べるよりも雰囲気のおかげか美味しいとは思う。


 目的の店に行くまでに塩っ気のあるものばかり食べようとするクロに、このままだとまた金欠とか言い出しそうなので私が率先して買うようにする。

 大体の物は一口か二口で渡して、残りを食べて嬉しそうにしている。


「雪ちゃん相変わらず小食だね」

「そうだろうか…。栄養は摂っているから問題は無い」

「そうかなぁ?あ、クレープ屋あったよ!」


 どんなものか見て見れば意外に種類があるのでイチゴとブドウを頼んだが、クロはここでも塩っ気のあるものがいいのか明らかにガッツリとした照り焼きチキンクレープなどを頼んでいる。

 美味しいのかは分からないが、クロは美味しそうに食べているので良いだろう。


 私も少しずつ食べてはいるが、半分くらいで大分胃の中が窮屈に感じる。ここに来るまでに色んな者を食べてきたからだろうが。


「クロはこれ食べれるか?」

「そこまで気を遣わなくてもいいんだよ?」

「いや、私はもう食事は十分だ」

「そうなの?それじゃいただきます」


 それこそ私に気を遣ってくれたのか外の出店から校舎内の催しを見ようとクロが言い出したので大人しく付いていけば、文化展という名目で過去の文化物の詳細と恐らく手作りの展示品を見て完成度が意外と高いことに驚く。


 占いなどもあるが、それは私もクロも素通りしたので気になって一応聞く。


「クロは占いに興味ないのか?」

「当たったことないんだよねぇ。雪ちゃんは興味ないって顔してたしいいかなって」

「私も当たったことないな。それらしいことを言われはするが大体は見当違いだったりする」


 校舎内で見れるものは外と違ってゆったりとしたものが多く、お化け屋敷なんかもあってクロをちらりと見れば苦笑いをされるので苦手なのだろうと思い別の所へ行く。


 上級生のところも見て回れば1年とは違って本格的な要素を増していて、こちらも中々に人が多い。

 全校生徒が一気に色んな所をみればこんなに人がいるんだと再認識して、3年の喫茶店に入って少し休むことにした。


「私達のところとは違って慌ただしくないね?」

「元々計画性のないのはハーブティの数で分かっていたからな。経験をしているとどこに予算を充てればいいか分かるものなんだろう」


 テーブルクロスも刺繍がされてあったりと細やかなところで1年とのクオリティに差がある。

 メニュー表も量が多いわけではなくむしろ茶菓子の数が色々と豊富だ。私が食べるわけではないがクロが食べるだろうと思って注文をして、クロの方に差し出せば笑いながらも食べてくれる。


「雪ちゃんと一緒だと太っちゃいそう」

「そんな太って見えないが…私はクロが太っていようと関係なく好きだが」

「人前ではまた違う恥ずかしさがあるね」

「事実だ」


 アイスティーをゆっくりと飲んで涼んでから、ここはどんな風に作っているのかと思えばアイスボックスに氷を用意してそれを使ってアイスティーにしているようだ。多分サイズからして在庫は今日一日保たなく無くなるのだろうが残っているうちに来れて良かった。


 クッキーを頬張っているクロを見たら、胃もたれとかしないか心配になる。そんな気配を漂わせることなく胃袋に詰め込んでいるから大丈夫なのだろうが。


「雪ちゃんは他に周りたいところある?」

「いや、元々目的なくふらつく予定だったからな。クラスが心配ではあるが、正直戻りたくはないな」

「あはは。私もまた暑いの嫌かな。体育館に行く?あっちは演劇とかバンドとかあるみたいだよ?」


 体育館は二つあるが、どちらもなにかしらに使われているのだろうとは思っていたがそういうのもあるのか。部活動はあまり気にしてこなかったがクロが興味ある方を見てもいいかもしれない。


「何か見たいものがあるのか?」

「んー特には?演劇は午前と午後で二回公演してるっていうから今から見ても中途半端なところから見るかもだし」


 舞台や衣装の準備を考えたら体育館の一つは演劇部の貸し切りかな。もう一つは吹奏楽やバンドなど音楽系なのかもしれない。


「それじゃあ別棟の方を行かないか?確かクロの好きなアニメ作品などを文芸部が題材にしていたはずだ」

「そうなの!?食べ物ばっかり考えていたから知らなかったよ」


 私も知らなかったが、校舎内を歩き回っているときに宣伝してる人を見て気付いただけだ。


 紅茶をお互いに飲み干した後はクラスの邪魔にならないように早々と出ていく。

 別棟に行くまでの廊下でも小さな出店があって、人が来るのか疑問ではあったが、別棟が文系なだけに汚れないようなサンドイッチを販売していてクロが反応しているのを横目に買うか悩んでいたらクロは我慢するのを決めたのか素通りしていった。


 これはお腹いっぱいだからなのか、お金が無いからなのか分からないな。


 別棟では生物部など鑑賞用の物が置いてあり校舎で見た文化展とは違ってこちらの方が本格的だ。

 さすが部活でちゃんとしてるだけあって説明も分かりやすく、別棟はよりリアルに。校舎で見たものは作り物に手を込んでるイメージかな。


 クロもクロで水槽の生き物を見たりするのは好きなのか楽しんでいるのが伺える。


「雪ちゃん見て、美味しそう!」

「君の食欲は一体どうなってるんだ…」

「お刺身もいいなぁって思って、えへへ」


 あまり本来の楽しみ方とは違うみたいだが、別棟に来た目的のところまで行けば文芸部はアニメ系の物で溢れていた。

 履修はしたが考察など書かれていたり、ウケを良くしてるが純文学なども取り扱っていて読ませたくなるような文面を見て意外と本格的だったんだなと感銘を受ける。


「色々あるんだね」

「もっとはしゃぐのかと思ったがそうではないのだな」

「私を何だと思ってるんだろう?雪ちゃんだってアニメ見てるのに自分から話題に出したことないよね?」

「それはそうだが、ここの考察はネットに書かれてあるのよりもっと別視点の考えがあったりと興味深いとは思っているよ」

「真面目だなぁ。アニメはささっと楽しむものだよ」

「そうか?クロが言うならそうなのかもしれないな」


 内容の深いところまでちゃんと掘り下げていて凄いとは思ったが観点が違うからか、見てないアニメの所に行って「今度見てみよ」と言うくらいだ。

 反応がいまいちだったのは申し訳ないが、クロの言う楽しみ方をもっと知りたいと思ったので考察頼りにするよりもそのまま私の感性で一度見てみようと思う。


 文芸部を後にしてクロが時間を気にしているので何か見たいものがあるのかと、この時間にあるものは何かあったかなと思い出してみるが心当たりが特にない。


「雪ちゃん、ちょっとだけ待ってもらっていいかな?」

「トイレか?」

「違うよ?んー、ちょっとだけ待ってて?」


 そう言うと校舎の方に戻っていくので、待つか悩んだが後で合流するならそのまま付いていった方がいいだろうと思って後ろから付いていく。


 特に私に付いて来られて困ることは無いのか気にしてないのか分からないが私のことに気づくことなく彼女は階段を登っていき、屋上へ向かう階段も登るので、鍵は生徒会と私しかもってないはずだが?

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