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23 不敵な笑み

「……ロゼッタ!」


「エルネスト様……どうかしましたか?」


 私はアクィラ生徒会の控え室から出て廊下を歩いていると、エルネストに呼び止められて振り返った。


 小走りで正式なローブを身につけているエルネスト、流石メインヒーローだという出で立ち。


 ちなみに、モブっぽい動きのする三年生の生徒会先輩も現在は控え室に居る。とても存在感が薄いけど……。


「これ。悪い……俺も帰ってから忙しく、渡さなければと常々思っていたんだが……」


 私はエルネストからぽんと渡された正方形の四角い箱を見て、すごく不思議になった。今までに見たこともないし、私の物ではないように思う。


「……え? これって……なんですか?」


 私が不思議そうにすると、エルネストも同じような不思議そうな顔になった。


「あの、洞窟の中で、これを抱えていたんだ。ロゼッタの物ではなかったのか……?」


 その時、私はとてもとても寒い洞窟の中で、手にしていた四角い箱をパッと思い出した。


 …あれだ!


「あ! 思い出しました! ……けど、川に流された場所にあったんですけど、私のものではなくて……」


 とは言え、エルネストもこれを返されても……というような微妙な表情になっていた。


 ……うん。持って帰って、部屋に置いておこう……学生の頃の思い出として、懐かしくなるかもしれないし……。


「では、これは持って帰りますね。ありがとうございます……」


「それでは、それに何を封じたのも、ロゼッタではないのか?」


 エルネストは慌てたようにそう言い、私は彼が何を言っているのかわからなかった。四角い箱には呪文の文字が取り巻いている……あ、これ……ただの正方形ではなくて、中に何か入っている箱なんだ。


「……なんでしょう? 私ではないです」


「ふーん。封印を解いてみても良いか? 呪いの何かだとしても、今ここで何が起こってもなんとかして貰えるだろう」


 それもそうだ。今は魔法界でもトップクラスの面々がこのアクィラ魔法学園で行われる『魔法学園対抗試合』を観戦するために集まっている。


 何故かというと、生徒会の面々は各魔法学園のトップ……彼らに仲間入りすることになる魔法使いを観戦しに来るのは、不思議なことでもなんでもない。


 私が最後エルネストに箱を渡すと、呆気ないくらいに簡単に、何かが封じられていた箱は開いた。


「……指輪?」


 指輪に填め込まれたカメオ中央には美しい鷲が描かれていて、アクィラ魔法学園ゆかりの物なのかもしれない。


「別に、何の気配もしないな……逆に守護の力も感じる」


 鑑定でも魔法を使っているのか、エルネストの青い目は不思議に輝いていた。


「これを付けていたら、指輪に守られるということですか?」


「……そういうことだろう。まあ、好きにしろ」


 エルネストはすげなくそう言って、控え室に帰ろうとしたんだけど、私は彼の後ろに居る人を見て、エルネストの腕を掴んだ。


「……ロゼッタ?」


「エルネスト様、失礼を承知でお願いします! 私と一分一緒に居ていただけますか」


「……? 別に、構わないが」


 エルネストは首を捻りながら、その場に留まり、私は隣を通り抜ける数人は行ってしまうまで、息を止めていた。


 サザールは私のことを認識したはずだけど、隣にエルネストが居ること理解し、不機嫌そうに無言で歩いて行った。


「ありがとうございました。お忙しいのに、申し訳ありません」


 エルネストは生徒会長で、彼は第二王子……今日は力量を見られるだろうし、私と話している時間なんて、本来であればないはずだ。


「まあ、事情はわからんが……頑張れ」


 私はその時、大きな手は頭に乗って、意味がわからなかった。だって、私を嫌っているエルネストがそんなことをするなんて、思わなかったし……。


「ありがとうございます。頑張れます……」


 私がそう言って彼へ微笑むと、エルネストは変な顔をしていた。



◇◆◇



 いよいよ『魔法学園対抗試合』が始まる……くじ引きの後の、トーナメント戦なので、私たちのアクィラ魔法学園の相手はサザールの居るファルコ魔法学園だ。


「先輩たちー! 頑張ってくださいー!」


 明るくて可愛いヒロインフローラがそう応援すると、生徒会面々はまんざらでもなさそうに、こちらへ手を振ってくれた。


「ロゼッタ先輩! 先輩も、応援しましょうよ!」


「……フローラなら喜んでくれると思うけど、私は止めといた方が良いと思う」


 これは本当にそう思う。フローラやイエルクのような一年生は知らないと思うけど、二年生以上は私がどれだけエルネストに迷惑を掛けていたか知っている。


 エルネストにまた関心を戻したのかと思われると、あまり良くない。


「そんなの! もう…ごちゃごちゃした理屈は良いですから、早く応援しましょう!」


 フローラはそう言ったので、私も彼女の熱意に押されるようにして、彼らを応援することにした。


 うん。生徒会に入っているんだから、それは変なことでもなんでもないよね?


「……頑張ってくださいー! 応援しています!」


 やけくそになって叫んだんだけど、三年生の先輩やエルネストもオスカーも手を振り返してくれた。


 ……その時、私の兄サザールのにやにやした悪い笑みが視界に入り、あの人がどういう人か良く理解している妹の私には。どうしても……心の中に広がる、悪い予感が消せなかった。

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