第五話 2つの階段
そういうと魔法使いはタカヒロの額をなでながら呪文を唱えました。
「痛いか?」
「痛くはないけど…あれ?暗闇の中がよく見える!」
「そうだ、その調子で闇に目をならせ」
「よいか、ここからはお前1人でやらないと全て水の泡になってしまう。
心眼を使ってさっきの化けネコを暗闇の中から見つけだせるのもお前以外にない。
ネコの2つに裂けた口をつかんだら大きく開いて、自分がやった罪を3つ告白しろ!」
タカヒロは心の目が開いていくのを感じると、
闇の中にけむりのようにただよっている不気味なネコ見つけました。
そして、言われた通りにやってみました。
闇の中にネコを見つけたタカヒロは、魔法使いにいわれたとおりにネコの口をあけてみました。
なるほど、中からゴーゴーという音が響いてきます。
軽くうなづくとタカヒロはこれまでに犯した罪
①ネコにきゅうりを食べさせようとしたこと
②ペナントレースで優勝していないのにネコを胴上げしたこと
③せっせっせのヨイヨイでネコを困らせたこと
以上の3つを正直に告白しました。
すると、ネコの口が開いてあっという間に中に吸い込まれます。
気がつくと大きな時計の上にいました。
見ると、時計は螺旋階段のように下につづいています。
時計の周りは大きな渦がとり巻いていて、足を滑らせたら助かりそうにありません。
「さぁ、タカヒロここからが大事だぞ。リラックスしよう。
いいか時計から階段が時計回りに下にくだっている。
すべて降りおわると4つの部屋がある。しかしどの部屋にも入ってはならない」
魔法使いは語気を強めて言いました。
「よ~く階段を見ろ。一番最後の階段はシールみたいにめくれる。
そこをめくってみろ。そうすれば『裏階段』へつづいているはずじゃ。
そこをどんどん降りてゆけ。いう通りにしないとネコの口が閉じてそこから出られなくなるぞ!」
「そして、階段をくだった所でようやく泉の前にでる。
お前が心から願えば泉からは水があふれだし、その水が渦となってお前を歓迎する。
泉の中には時間の方程式があって、お前を代入しようとするが、とりこまれてはならない。
水の流れがお前のために必ず補助線を引いてくれるので、それまでじっと待つのじゃ。
補助線が引かれたらそれにしたがって進むと、時間をお金や財産に変える黒々しんじゅがある。
それをとってこぼれ落ちないようにポケットに入れて持ってきなさい」
こういって事細かに指示を出すと、タカヒロは頭がいっぱいになって、
最初から最後まですべて忘れてしまいました。
それを予想してか、魔法使いは首から下げていた時計を転送して、
タカヒロの首にかけてあげました。
「この時計はただの時計じゃない。ネジをちょっと回すと頭の回転が速くなって
信じられないくらい切れる男になるものだ。
いいか、ネジを2~3回まわしてみろ。
お前はもう心眼をひらいて、あと頭さえ賢くなれば怖いものなしじゃ!」