第三話 仮想世界とおなら
翌朝、タカヒロが立派なネコを抱いているのを見た養母はびっくりして、それから周りをキョロキョロ見て、きっとどこか偉い人の飼いネコを勝手に盗んできたと、不安で胸がいっぱいになりました。
「本当にこれはお前のネコかい? タカヒロ噓ついちゃいけませんよ」
「いえ、これは母上へのプレゼントです。おじさんに買ってもらいました。本当はボクが面倒を見てあげたいけど、このネコだけは母上にお任せします」
「タカヒロから初めてのプレゼントが、こんなに可愛いネコなんて、あぁ女神様!」
養母は嬉しさのあまり人目もはばからず、泣き出してしまいました。
「あぁ、女神様。この子をどうかしっかりお見守り下さい。頭の毛がないし身長も1m50㎝しかなくて、どこの子よりも貧しいうえ宇宙人と近所の人に言われているんです」
その夜タカヒロは幸せで胸がいっぱいになり、ほとんど眠れませんでした。
あくる朝、おじさんがまたやってきました。
ドアをたたく音がしたので、タカヒロは階段を降りて、おじさんの目の前に立ちました。
「おはようタカヒロ。今日は宇宙人と噂されるお前でも絶対に見たことがないすばらしいものを見せてやる!」
二人は、仮想現実の世界に入る通称”ネコの穴”にやってきました。
周りは黒山の人だかりで、長い行列でずいぶん待ちましたが、2人はチケットを購入するとイスに腰を下ろしました。
黄金のたてがみをなびかせたライオンが近づいてきて口を大きくあけると、
そのまま2人を丸のみにしたのです。
そこはすでにゲームの世界で、血も出ないし痛みも感じませんでした。
魔法使いは帯をほどいておしりを丸出しにすると、「プゥー」とオナラをしました。
「さぁお前もやってみな。『仮想世界がなんだ!』っていきがるのが男ってもんだ」
2人は全力でオナラをしました。十分におなかの中にガスがたまってたので、魔法使いはプププとリズムをつけてやりだしました。
「おじさん、どこまでオナラって出るもんですか?」
こんなにオナラする人をみたことがなかったので、タカヒロは興奮してたずねました。
「他の人は大きな音が出るとあわてるもんじゃないですか?
なのにおじさんには全然そういうところがないから・・・
あの・・・もうそろそろやめてもいいのではありませんか?」
すると、魔法使いは答えました。
「男らしくないなぁ…ワシはお前の前ではもう絶対にオナラはしないと約束しようじゃないか。
でもその前に心ゆくまでオナラをさせてほしい。
世界中どこを探しても仮想現実の中でこれほどのことをやった凄まじい男は
ワシ以外にはいないと思われたい」
そして、あらゆるオナラの音を響かせながら屁をこいているうちに、
とうとうおじさんが目指していた最後のオナラが出ました。