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タカヒロの冒険  作者: コムポコ
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第二話

その翌日、魔法使いは朝タカヒロを探していると、いつものように野良ネコたちの中に混じって、楽しそうにしているタカヒロを見つけました。

かけよってタカヒロを抱くと喜びながら言いました。

「今夜お前の家にいくから、これでご馳走を用意してくれ」

こう言って2粒サファイアを渡しました。


養母は市場に出かけると、お花をそろえて豪華なディナーを用意しました

やがて、ドアをノックする音がしてワインやメロンなどをもって魔法使いが現れました。

魔法使いはタカヒロの養母に挨拶したあと、

「兄貴はいつもどこに座っていたんですか?」

と、涙ながらにたずねました


養母がそのイスを教えると、彼はいきなりそのイスに口づけしたのです。

「あぁ懐かしい兄者、ワシがいながら兄者を行方不明で失うなんて。ワシの罪はあまりに重い。今その罰を自ら進んで受け入れましょうぞ。どうかワシを許してくれー」


魔法使いは、慟哭しているうちに、しまいには顔がひきつけを起こしました。

この様子をはじめから終わりまで見ていた養母は、魔法使いをすっかり信用して、夫の弟に違いないと思い込んでしまったのです。


養母は何とかイスに座らせました。

「兄貴からワシのことを聞いてないのも無理ありません。なぜなら、40年前にワシはこの町を出てずっと色々な場所をさまよっていたんですから…」


「ここから山を3つ超えた所には奇怪な生きものばかりが住む"逆さ沼"があります。その沼の雰囲気が最悪だったのでギャグをいって気分を明るくしようとしたら、逆にすべってしまい、ズブズブ沼に沈んだのです。

そのあとずっと逆さまになったまま、地球の裏側の出口まですべりつづけました」


「地球の裏側は天と地が入れかわっていて、出口から出たときワシは空のかなたに落っこちそうになった。

 地上はコウモリの楽園になっていて、ワシは彼らに頼んで洞穴に連れていってもらうと、そこで1人寂しく30年も暮らすしかなかった。それでも時々、頭上から宝石が降ってくるのが救いだった」


「ところがある日のこと、ふと生まれ故郷や兄貴のことを思いだすと、やもたてもなく恋しくなって、帰りたくて帰りたくてどうにもならなくなったんだ。

 思えばワシは一体いつまで逆さになって暮らしているつもりなんだ?

宝石をたくさん持っているのに、兄貴にも会えず死んでしまったらどんなに後悔するか分からん。

それに兄貴はネコ好きだから、その日暮らしをしているかもしれん。それならそうで、行って助けてあげにゃならん。

こう思ったのでワシはすぐ旅支度をととのえて、仲良くなったコウモリに頼んでこの町まで飛んできたと、こういうわけなんです。


「途中、何度も空に落ちそうになったが、力強い生命線をもっていたので無事たどり着いた。

そこで、ワシはさっそく町をあちこち歩き回って、おとといタカヒロがネコたちと一緒に集会を開いている所をとうとう見つけた。一目でワシの甥に違いないとピンときた。これぞ運命でしょう」


タカヒロの養母は、魔法使いをすっかり信用してしまって、涙を流して話を聞いてます。

魔法使いはタカヒロに言いました。

「お前は何か仕事をおぼえたかね?1人で生活できる技術を身につけてるか?」

タカヒロは耳をヒクヒクさせるだけで何も答えません。

代わって養母が答えます


「いいえ、この子はネコと一緒に遊んでいるだけで、とても社会の中で生きていける子じゃないんです。

毎日毎日、一体何を考えているのか?15年同じ屋根の下で暮らした私でもさっぱり分からないんです。

もうただネコとそれも野良ネコとだけ遊ぶんです。仕事なんて全く眼中にないんです」


養母は話に夢中になりました。

「それで私は、宇宙人とか近所の人が噂をするものですから、役所に頼んで集金人の仕事をいただいたんです。この子は決して悪い子ではないんです。

あぁ女神さま、私はもうすっかりくたびれてしまいました。そろそろ、お暇をいただきとうございます。でも、せっかく育てたこの子が一人前になった姿を見させてください。今の運命からどうぞお救いください」

「聞いたか?タカヒロ!」魔法使いは言いました。

「せっかく育ててくれた養母にこれ以上苦労をかけて、お前は平気なのか?お前はネコが好きだし良い奴だ。

年をとった養母が、お前の世話をしたり生活の糧をえるために仕事をしているなんて、おかしな話じゃないか?もう自立すべき年齢だろう?

周りをよく見てごらん。いろんな人がいる。自分の好きなことを仕事にして生きていくようにしたらどうだ?

お前が自分1人の力で生きていけるよう、ワシが助けてやる。お前ネコが好きなんだろう?それならネコに関わる仕事をすれば良い。ワシがサポートしよう」

タカヒロは何も答えませんでした。

すると、魔法使いは

(タカヒロのやつ、まだネコと遊んで暮らすつもりだなぁ)と、気づきました。


「タカヒロよ悪くとらんでくれ。もしお前が仕事をする気がないんなら、それはそれでいいんだ。

それならワシは、お前のためにネコ屋を開いてやろう。

ペルシャ猫や三毛猫、スコティッシュなど高いネコをそろえてやるぞ。そうすればすぐにお前は、町でも有名なネコ屋になるだろう」


これを聞いてタカヒロは、キレイな毛並みでとりすましたネコなんかよりワイルドな野良ネコの方が断然素敵なのになぁ~と、考えていましたが、やがて微笑みながらうなずきました。

「どうやら喜んで承知してくれたらしいから、お前も一人前の立派なネコ屋になってほしい。思ったが吉日ださっそく明日、ネコを取引する市場に連れていこう。

その後でお前にふさわしいお店を一緒に探そうじゃないか」

この気前のよい申し出にタカヒロの養母はすっかり心をうたれ、心の底から感謝しました。

そしてもう外で野良ネコと遊ぶのはやめて、おじさんによく従うよう熱心にタカヒロをさとしました。


夜がふけると、明日また来ると約束しておじさんは一旦帰りました。

タカヒロは寝ようとしても外で野良ネコが喧嘩する声に興奮してなかなか眠れません。

翌朝、魔法使いがタカヒロをネコ市場に連れて行くと、世界中のあらゆる種類のネコを売ってるお店に入り、値段の高いネコをいろいろ出させました。


「さぁ、どれでも好きなものを選べ」

タカヒロはその中から養母が喜びそうな気品のある大人しいネコを選ぶと、魔法使いは宝石を渡して支払いました。

すばらしいネコを抱いたタカヒロは別人になったように急に立派に見えるので、フワフワした足取りになって、まるで雲の上を歩いているようでした。


それから2人は、町のサウナにいって汗をかいてさっぱりしました。タカヒロはおじさんにお礼を言いました。

「お前もこんなネコ屋になりたいだろう。だったらしょっちゅう市場にやってきて、この人たちと顔見知りにならないといけないよ」


市場を出ると、今度は変わったネコたちの見世物小屋を見物しました。 体のツボをたたいてさまざまな現代病を治すドクターネコやお箸の上に飛びのって一回転したりバク転してポーズを決めるコマネチネコ、ふんどしをしめたゴツイ土佐ネコなどがたいへんな人気を博しており、タカヒロはわんぱく相撲に参加して土佐ネコと勝負をしましたが、いきなりネコだましからの強烈な張り手をくらって最後はゴロゴロ転がされました。

魔法使いはおかしそうに笑うと、帰り道でドッキリを仕掛けてさらに笑い転げました。

最後にタカヒロが顔にとまったハエをたたいたら、2人ともおかしくなって笑い転げました


魔法使いは自分のホテルにタカヒロを連れて行くと、買ったネコも含めて夕食に呼びました。

「食堂にネコはダメなんだ。そこでワシが1人で食事を作ろう」

魔法使いが粉をこねたりオーブンを温めているうちに、疲れていたタカヒロはウトウトし始めました。


魔法使いはタカヒロをベッドに運んであげました。

ベッドにつくと、タカヒロがネコとそっくりな寝相をして眠るのを見て、養母は一体どういう気持ちでこの光景をながめていたのだろう?と思うと魔法使いは目頭が熱くなりました。


7.3~

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